スピルバーグ監督の『マイノリティ・リポート』は、近未来のアメリカが舞台のアクション・サスペンス。
超能力者たちが犯罪を予言し、ジョン・アンダートン(トム・クルーズ)率いる pre-crime unit が犯罪を起こそうとしている人間を犯行前に逮捕していきます……が、アンダートン自身が犯罪を起こすという予言が現れ、彼は追われる身になってしまいます。
pre-crimeとは、「未来に起きる犯罪」というニュアンス。
アメリカでは『マイノリティ・リポート』 が公開されるちょっと前に極右勢力のアッシュクロフト司法長官がテロ対策として pre-crime の概念を打ち出し、pre-criminals(=未来の犯罪者たち)が犯罪を犯す前に彼らを捕まえる、というガイドラインを提出しました。
このpre-crimeという概念は、presumption of innocence すなわち「裁判で有罪にならない限り何人も無罪と推定される」という合衆国の刑事手続き上の基本原則を無視したものですから、有識者たちがブッシュ政権を非難しました。
そのため、『マイノリティ・リポート』は「ブッシュ政権の行き過ぎを予言した作品」、として知識人たちからも絶賛され、「ホワイトハウスは共和党員を全員招いてこの映画を試写すべきだ」という声まで聞かれました。
アッシュクロフトの pre-crime unit は、ブッシュを批判する内容のポスターを貼っていた女子大生を逮捕したり、何千人ものアラブ人を正当な根拠もないまま拘束しているため、ACLU(=American Civil Liberties Union、米国自由人権協会)が激怒し、「これこそまさに、real life Minority Report(『マイノリティ・リポート』を地で行くもの)だ」とブッシュ政権に抗議しています。
9月にこの映画のPRのためにイタリアを訪れたスピルバーグは、「イラクに対する先制攻撃は pre-crime という概念と似てますが、賛成ですか?」と尋ねられ、「フセインが大量破壊兵器を所持している証拠があるのなら」と答えました。
すると翌日、アメリカのメディアは一斉に「スピルバーグはイラク攻撃賛成派!」と報道。
これに驚いたスピルバーグが「私はイラク攻撃を支持したわけではない。ブッシュがどんな情報を持っているか私は知らないが、その情報によっては異なる見解に至るだろう。いずれにせよ私は戦争を擁護するつもりはなかった」と声明文を発表したのです。
娯楽という枠を超え、シリアスな場面でも話題を読んでいる『マイノリティ・リポート』。もちろんカメラワークもすばらしく、映像もたっぷり楽しめますので、ぜひご覧になってみてくださいね。
- 2002年12月12日
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