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西森マリーのUSA通信:スペースアルク
 
バーバーショップ
バーバーショップ
バーバーショップ
原題:Barbershop
価格:1,386円(税込)
販売元:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

アメリカでは人種ネタのジョークは基本的にはタブーですが、黒人/ユダヤ人/ヒスパニック系/アジア系のコメディアンがそれぞれ自分たちのステレオタイプをネタに自嘲的ジョークをいうのは範囲内と見なされています。

ただし、それもある程度までのこと。

ヒスパニック系 (敬虔なカトリックが多い)、アジア系のコメディアンが、それぞれローマ法王、イヌやネコを食べる習慣をネタにすることはまずありません。

この暗黙の了解を破ると、それぞれのエスニック・グループから罵倒され、ボイコット運動にまで発展してしまうからです。

昨年9月に公開された映画 "Barbershop" は、シカゴに住む黒人の日常生活をユーモアと皮肉を込めて描いた秀作。ラップ界のスター、アイス・キューブが主演ということもあって、当初からそれなりのヒットが見込まれていました。

こうした黒人映画は大部分の観客が同じ黒人によって占められます。しかし、この映画では先述のような「自主規制」を無視したおかげで、ニュース等でも大きく採りあげられました。こうした話題性が、従来の客層である黒人以外の人々にも映画館に足を向けさせ、予想以上の大ヒット! という結果になったのです。

自主規制をしなかったシーンというのは、登場人物のひとりエディーがローザ・パークスを小バカにする場面で、黒人運動指導者のジェシー・ジャクソン牧師やNAACP (=National Association for the Advancement of Colored People、全米黒人地位向上協会) から非難されました。

ローザ・パークス女史は、1955年、黒人がバスの後部座席にしか座れず、白人の座席が満席になったら白人に席を譲らなければならなかったという時代に、白人に席を譲ることを拒否して投獄された人物です。

彼女のこの勇敢な行動がきっかけになり黒人によるバス・ボイコット運動が起こり、公民権運動に拍車がかかりました。

つまり、パークス女史は公民権運動のシンボルともいうべき存在なのです。

その彼女に関してエディーは、「他にも同じ抗議行動をとって刑務所に入れられた黒人がたくさんいたのに彼女だけが英雄扱いされるのは、彼女が NAACP の秘書をしてたからというだけのこと」といいます。

これって、「キング牧師は暗殺されたから英雄になれた」というのと同じぐらい失礼な暴言なので、黒人が怒るのは当然のことですよね。

アメリカでは2月は Black History Month、黒人の歴史を振り返るための月です。

黒人地区にあるレンタル・ビデオ店が2月にこの作品をフィーチャーしようとしたらボイコット運動が起きた、といった動きがニュースでも報道されています。ビデオ/DVD化された後もニュースになるなんて、この作品の話題性はスゴイものがあるってことですよね。

エディーのセリフは、黒人にとっては傷つくもの。けれども、他の人種にこの映画の存在を知らしめた、という意味では評価すべきでしょう。

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