定年退職後に人生を再発見する男の物語がつづられた『アバウト・シュミット』。笑いと哀しさが同居するおとな向けの渋いコメディー映画です。
この作品は「初老の男優が主演の映画のマーケットが存在する」ということを再確認させてくれた1作でもあります。
senior citizen (老人) の域に入った男優にも観客動員力があることを最初に証明してくれたのは、当時70歳のクリント・イーストウッドが監督・主演をつとめた『スペースカウボーイ』(00年)でした。
高齢の男性4人が主演のこの映画がヒットした直後、ハリウッドは高齢層のマーケットを狙った映画にも力を入れる、という声明を発表しました。
ところが、2001年にDVDが普及したとたんにこの話は立ち消えに……。映画の興行収入よりもDVDの売り上げのほうが儲かる/DVDを買うのは若年層が圧倒的に多い、ということに映画会社が気付いてしまったからです。
その後、ほぼ2年に渡って映画業界はワカモノに媚びていました。が、新天地開拓が得意な映画スタジオ、ニューライン・シネマがこの『アバウト・シュミット』を製作したのを機に、風向きがまた変わってきたのです。
さらに、主人公を演じた名優ジャック・ニコルソンがゴールデン・グローブ賞ドラマ部門で、主演男優賞を受賞したおかげで、「高齢者をターゲットにした映画もイケる!」という話題が映画業界を再びにぎわせています。
アメリカも日本と同じで高齢者の人口がどんどん増えるばかり。彼らを対象にした商品を作らない手はない。
この資本主義の基本に気づいた映画業界が1年前から高齢者向けのDVDおよびDVDデッキのCMにも力を入れ始めました。それが功を奏してか、DVDデッキを設置する老人ホームも着実に増えています。
『アバウト・シュミット』の劇場での快挙がDVDの収益にも結びつけば、大手の映画会社も一斉に高齢者向け映画を作り始める予定でいるので、この作品のDVDのセールスは大いに注目されています。
ニューライン・シネマの関係者も、「見たい映画がない」と嘆いてる高齢者に、「『アバウト・シュミット』のDVDが売れれば高齢者向けの映画が増えるから、映画を見た6ヶ月後はDVDも買おう」と、すでにDVDの宣伝まで始めているんですから、商売上手ですよね。
『アバウト・シュミット』は高齢層を対象にした映画ではありますが、ジャック・ニコルソンの抑えた演技を見ているだけでも感動モノです。若い層にも訴えかける秀作、お見逃しなく!
- 2003年3月13日
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