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西森マリーのUSA通信:スペースアルク
 
めぐりあう時間たち
めぐりあう時間たち
めぐりあう時間たち
原題:The Hours
価格:2,425円(税込)
販売元:角川エンタテインメント

『めぐりあう時間たち』は、20世紀初頭の女性作家ヴァージニア・ウルフを核に、3人の女性のある一日を描いた物語。

自ら同性愛的傾向を認めていたヴァージニア・ウルフをはじめ、1950年代の主婦は近所の主婦友だちに対して友情以上のものを感じ、現代を生きるクラリッサ (メリル・ストリープ) にいたっては女性のパートナーと生活を共にするなど、「同性愛」はこの映画を語るうえで欠かせない要素となっています。
現代を生きるクラリッサ (メリス・ストリープ)。体外受精でもうけた娘と、彼女のよき理解者

かつて、『フィラデルフィア』でトム・ハンクスがゲイの男性を演じたとき、アメリカのインテリ層から彼の勇気を褒め称える声がわきあがりました。それに対して、極右原理主義的キリスト教徒が圧倒的に多いフライ・オーバー・ステイツの人々は、彼を「ゲイを正当化するメッセージを伝える悪魔の使者」と呼んで非難したのです。

『めぐりあう時間たち』も同様。レズビアン/バイセクシュアルを演じる主演女優たちは、インテリ層の目から見るとポジティブな役割モデルですが、フライ・オーバー・ステイツの人々にとっては「同性愛を美化する邪悪な人間たち」として非難の対象となるのです。

「非難」というより、「聖戦をしかけている」と表現したほうが相応しいかもしれません。なにしろ彼らは、『フィラデルフィア』の時の10倍ぐらいの激しさで徹底的に攻撃しまくっているのですから!

『フィラデルフィア』の公開された1993年は、ゲイの権利拡張を目指していたクリントン政権時代でした。

ブッシュ政権になってからのアメリカは、リベラル・インテリ派と、ルーラル (田舎の) 極右キリスト教派の二極分化が進むばかり。特に9・11のテロ後は、それまではどっちつかずだった人々が急に保守化し、その結果、極右キリスト教派が急激に力を増しているのです。

「テロが起きたのはイスラム教徒だけのせいではなく、ゲイやレズビアンなどの罪深い人間たちのせい」と同性愛者をテロリスト扱いしているのは、テレビ伝道師のジェリー・ファルウェル。バプテスト協会の牧師である彼は、ブッシュの熱狂的な支持者としても知られています。こんな極論が、フライ・オーバー・ステイツでは拍手喝采で受け入れられているんですから、怖いとしかいいようがありません。

このように アンチ同性愛運動が勢いを増すなかで公開された『めぐりあう時間たち』が様々な賞を受賞したことは、ブッシュの支持層と都会の人々 (ほとんどの映画賞の選考者は都会の住人です) の間にある溝が深まっていることの象徴といえますね。

特に現代を舞台にした女性のシークエンスでは、物語の中心になるレズビアンを大女優メリル・ストリープが演じています。さらに、彼女のパートナーの役には、アリスン・ジャニィをキャスティング。人気のTVドラマ『ザ・ホワイトハウス』で有能な報道官を演じてエミー賞を3年連続で受賞した「時の人」にして、インテリ女性の象徴のような存在です。

フライ・オーバー・ステイツからの非難は、こうした人気女優が今後、レズビアンの役を演じにくくするための布石を打っているようにも見えます。

彼らが、『めぐりあう時間たち』の上映に抗議する際に掲げていたプラカードには、"God created Adam and Eve.Not Madam and Eve." と書かれていました。これは、ゲイ批判の定番プラカード "God created Adam & Eve. Not Adam & Steve" のもじりです。思わず座布団をあげたくなるようなシャレっ気もあるのに……と少し残念な気もしますね。

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