監督:ジム・シェリダン
出演:カーティス・“50セント”・ジャクソン、テレンス・ハワードほか
配給:UIP映画
公開:6月17日から渋谷シネマライズにて公開
http://www.getrich-movie.jp/
ヒップホップ・アーティスト、50セントの人生を描いた『ゲット・リッチ・オア・ダイ・トライン』は、去年の11月のリリース直前まで、大ヒットが確約されていた映画。
とにかく、この映画の知名度は並々ならぬものでした。
知名度が高かった一番の要因は、この映画のタイトルが50セントの大ヒットデビューアルバムと同名だったので、覚えやすかったこと。
もう一つの要因は、去年の1月に、アメリカで最もクールな名優として人望もあるサミュエル・L・ジャクソン氏がこの映画で50セントと共演することを拒否したことでした(それについては『コーチ・カーター』の回で触れています)。
出演拒否自体も大きなニュースになりましたが、出演を断った真の理由に関して人々の憶測が飛び交い、それが新たなニュースになって、『ゲット・リッチ・オア・ダイ・トライン』のネタが長持ちしたのです。ニュースで取り上げられなくなった後も、ブログなどでラップの暴力的なイメージが話題になる度にジャクソン氏が断った話が引き合いに出されていました。
ですから、公開が迫った去年の10月の時点では、50セントのファンも、映画ファンも、「“あの”映画がやっと公開される!」と、大きな期待を寄せて、あるいは怖いモノ見たさの好奇心を抱いていたのです。
また、50セントにほれこみ、彼をスターにしたヒップホップ・アーティスト、エミネムの自伝的映画『8 Mile』が、このちょうど3年前に公開され、公開最初の週末で制作費(4100万ドル)を回収する約5124万ドルの興行収入を上げていたので、映画業界の人々は『ゲット・リッチ・オア・ダイ・トライン』も大ヒットになるだろうと踏んでいたんですよね。
ところが!!!
公開の10日ほど前に、映画のPRをしていた50セントが、ハリケーン・カトリーナ救済コンサートでジョージ・ブッシュを批判した、同じくヒップホップ・アーティストのカニエ・ウェスト*を非難し、これがジャクソン氏の出演拒否事件をしのぐ一大ニュースになってしまったのです。
50セントは、単に話題作りのために意外性のあることを言っただけなのかもしれません。でも、2003年に有色人種に対する差別是正措置の撤廃を要求し、04年の大統領選では黒人に投票させないように画策し、カトリーナへの対応を渋ったブッシュ政権に対する黒人の怒りは半端じゃない。**
だから、予想された観客層である黒人がこの発言に本気で怒って、映画館に足を運ぶ気が失せてしまったので、興行収入は3000万ドルちょっと、という悲惨な結果になってしまったのです。
アメリカの芸能界では「名前のつづりさえ正しく書いてくれれば、どんなにひどい悪口やゴシップもPRのうち」とよく言われるのですが、黒人の間ではブッシュ政権を擁護することは命取りになる、ということですね。
こうした政治的な背景がない日本では、この映画は単に『8 Mile』の黒人版として楽しんでいただけると思いますので、公開されたらぜひご覧ください!
- 2006年6月 8日
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