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西森マリーのUSA通信:スペースアルク
 
300人のスパルタ人にオーバーラップする
ナチスやブッシュ政権のプロパガンダ
Apocalypto
© 2007 Warner Bros. Entertainment Inc.
300<スリー ハンドレッド>
原題:300
監督・脚本:ザック・スナイダー
原作・製作総指揮:フランク・ミラー
出演:ジェラルド・バトラー、レナ・ヘディー、デイビッド・ウェナムほか
配給:ワーナー・ブラザース映画
6月9日(土)から、サロンパス ルーブル丸の内ほか全国でロードショー
http://wwws.warnerbros.co.jp/300/

古代ギリシャの国スパルタ――そこでは、戦えない子供は谷底に捨てられ、成人の儀式では飢えた猛獣と立ち向かい、生き残った者だけが一人前と認められる。大国ペルシアはスパルタの侵略をもくろみ100万の大軍を送り込むが、スパルタの王レオニダスと彼のもとに集まった300人の精鋭たちがペルシア軍に立ち向かう。史上最もし烈と言われるテルモピュライの戦いを斬新な映像で描き出すアクション大作。

『300<スリー ハンドレッド>』は、アメリカでは今年の3月に公開され、大ヒット作となりました。

成功の要因は3つ。

Apocalypto最大の要因は、『アポカリプト』をしのぐ血みどろでどぎつい映像がテレビゲームのファンにウケて、彼らを大量に劇場へ動員できたこと。

2つ目の要因は、この映画を政治的な観点から批判した映画評論家たちのコメント。「善なる西洋(ギリシャ)が邪悪な東洋(ペルシア)を裁くという、戦争を美化したこの作品は、まるでブッシュ支持者のためのアクション映画みたい」とのコメントは、政治討論番組でも取り上げられ、普段はこういうアクション映画を見に行かない人たちも、この作品に関心を持つようになりました。

そして3つ目は、イランが「この映画はイラン(ペルシア)文明とイラン人を侮辱し、西洋文明こそが最高の文明であると吹聴する、ハリウッドの人種差別的プロパガンダだ」と騒いだことが、ワイドショーのみならずニュース番組やトークショーでも話題になったことです。

映像の面白さに関しては日本でもさんざん話題になっているでしょうから、ここでは、ほかの2つの要因について説明しましょう。

日本では、この映画の主人公となっている300人のスパルタ人はあまり知られていませんが、アメリカでは、実は彼らはけっこう有名です。

なぜかというと、毎年アメリカでは、メモリアルデー(戦没者追悼記念日。5月の最終月曜日)や退役軍人の日(11月11日)、第二次世界大戦の戦勝記念日(対ナチスは5月8日、対日本は8月15日)の前後に必ずさまざまなメディアが第二次世界大戦特集を組むのですが、その中で「ヒトラーはドイツが負けることが確実になった後、“300人のスパルタ人のように最後まで戦おう!”と言って部下たちを鼓舞した」という逸話が出てくるからなんですよ。

そのため、アメリカ人の多くは「300人のスパルタ人」と聞くと紀元前480年にペルシア人と戦った300人のスパルタ人のことと同時に、彼らがヒトラーの理想だったという逸話を連想してしまう傾向にあるのです。

Apocalyptoですから、東洋の野蛮人の侵略から西洋の民主主義を守った300人のスパルタ人に、ヒトラー的なアーリア思想や人種差別主義がごく自然にオーバーラップしてしまうので、この映画(ペルシア人がデフォルメされて醜悪に描かれている)を見てイランが激怒したのも無理はない、ということなのです。

日本では恐らく、こうした政治的な話題はあまり出ていないと思いますが、「自由はただではない。血の代償を払って初めて手に入れられるもの」などのせりふをブッシュ政権のプロパガンダと重ね合わせてみると、さらに面白く味わうことができるのではないでしょうか。

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