監督・脚本:ポール・トーマス・アンダーソン
出演:ダニエル・デイ=ルイス、ポール・ダノ、キアラン・ハインズ ほか
配給:ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン
4月26日(土)シャンテシネほか 全国順次ロードショー
http://www.movies.co.jp/therewillbeblood/
『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』は、アメリカでは去年の年末に、ほんの数館で上映されました。その後、徐々に公開館数を増やし、アカデミー賞授賞式の数週間前から受賞後にかけては公開館数が約1500館にまで増加。地味な映画ながら、特にネット上で大きな話題になりました。
その理由は、映画自体の質がいい、ということもありますが、その筋書きが反ブッシュ派の人たちにウケたからなんです。ブッシュ政権誕生以来、文字通り雨後のタケノコのごとく大量に出現したさまざまな反ブッシュ・サイトが、この映画を「ブッシュ嫌いの人にとって必見作品!」と絶賛し、それが口コミで広がったのです。
この映画の筋書きには、確かにブッシュ政権に通じる部分がたくさんあります。まず、「石油による金もうけのためなら人殺しもいとわない」という主人公のポリシー。これは、まさにブッシュ政権の政策そのものです! 主人公のダニエルの「石油が採掘できればコミュニティーが繁栄する」とか「私は何よりも家族を大事にする人間で、家族=子供、子供=教育、だから私は教育に力を入れたい」といった、オイル・ビジネスやオイル・マンの自分を売り込む口上もブッシュ氏にそっくり! 私利私欲追求のためにうそを並べ立てて、コミュニティーの人々をだますダニエルと、イラクがWMD(大量破壊兵器)を持っていると言って戦争を売りつけたブッシュ氏は、まさに、同じ“snake oil salesman”の域に達した“oil man”というわけです。
石油のパイプラインを敷く土地の借用権を得るために、地主のリクエストに応じて原理主義キリスト教徒に改宗する(実際には改宗したふりをしただけ)といういきさつも、ブッシュ氏が支持基盤を固めるために原理主義キリスト教徒にこびた経緯にそっくり!
日本ではたぶんピンと来ないと思うのですが、アメリカの南部にはこの映画に登場するイーライ・サンデーのような狂信的な牧師が実際にたくさんいて、毎日曜日に教会で faith healing(※)をやっているんですよね。だから、アメリカでこの映画を見ていると、ブッシュ氏を支持する南部のアメリカとこの映画の相似点がくっきりと浮かび上がってくるのです。
また、この作品は、タイトルでも得をしました。公開の数週間後、大統領候補者たちがそれぞれ自分の党のライバルを攻撃し合って泥仕合を続けていた時に、メディアがよく“There Will Be Blood”というタイトルをつけて、内輪もめをリポートしていたのです。それを受けたコメディ・ニュース番組や夜のトーク・ショー(MCは全員コメディアン)が、この映画のクリップを使って選挙戦をやゆするスキット(寸劇)を演じてくれたので、1月中旬の段階で、この作品は抜群の知名度を誇るまでになっていたのです。
日本では、政治がらみでこの映画が話題になることはないと思いますが、とても質のいい作品なのでぜひご覧になってください!
- 2008年04月14日
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