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西森マリーのUSA通信:スペースアルク
 
作品の背景にあるさまざまな要素が話題作りに貢献
JUNO/ジュノ
(C) 2007 Twentieth Century Fox
JUNO/ジュノ
原題:JUNO
監督:ジェイソン・ライトマン
出演:エレン・ペイジ、マイケル・セラ、ジェニファー・ガーナー  ほか
配給:20世紀フォックス映画
6月14日(土)より、シャンテシネ、渋谷アミューズCQNほか全国ロードショー
http://www.juno-movie.jp/

物語の舞台は、アメリカの中西部のとある平凡な街。主人公のジュノ(エレン・ペイジ)は16歳の高校生で、流行のメイクやファッションには興味がなく、パンクロックとB級映画が好きという、ちょっと変わった少女。そんな彼女がある日、とくに好きではないけれど、ちょっと気になっていた男友達ポーリーと興味本位でした一度きりのセックスで妊娠してしまう。一度は中絶を考えるも、親友の助けもあり出産を決意。しかしこのことが、ジュノと家族を、また、ある夫婦のきずなをも変えるきっかけになってしまう——。

アメリカで去年の暮れにリリースされた『JUNO/ジュノ』は、9割以上の評論家から絶賛され、アカデミー賞にノミネートされたことも手伝って興業的にも大成功を収めました。

ヒットの一番の要因は、話の筋書きそのものがおもしろい、ということ。でも、そのほかにも映画の質とは直接関係ないさまざまなエレメントが、この作品の話題作りに貢献してくれました。

まずは、脚本家のディアブロ・コディの、以前にストリッパーとして生計を立てていた、という異色なキャラクター。それのおかげで、タブロイド紙や雑誌のゴシップ欄、主婦向けのワイド・ショーや深夜のトーク・ショーが、ディアブロのネタを取り上げてくれたんですよね。特に、アカデミー脚本賞にノミネートされた後、彼女に対する注目度が高まったことは言うまでもありません。

次に、養子縁組専門サイトの多くが「心温まる映画」として、この映画をフィーチャーしてくれたこと。映画の中で「『ペニーセイバー』(アメリカ各地で発行されているフリーペーパー)に、養子が欲しいカップルの広告が載ってる」というせりふが出てくるのですが、アメリカでは、実際にフリーペーパーに養子募集の広告が載るほど養子縁組が日常化しています。養子縁組のサイトも星の数ほどあり、養子縁組ネットワークの口コミも大きな宣伝力になる、ということなのです。

そして最後に、原理主義キリスト教徒や、右派カトリック系の人たちがこの作品に並々ならぬ興味を示してくれたこと。

136_02.jpgアメリカでは、原理主義キリスト教徒と右派カトリックが大統領選の行方を左右するほどの力を持っています。彼らが“教会”という司令塔を通じてPRを行ったおかげで、『パッション』や『ナルニア国物語』が大ヒットとなったことは、すでにこのコラムでご紹介していますよね。その原理主義キリスト教徒と右派カトリックが、この世の中で最も忌み嫌っているのが「中絶」。そこで、この作品の「望まぬ妊娠をしたティーンの主人公が、出産を選ぶ」というプロットが、彼らの間で大きな話題になったのです。

彼らは、根本的には“結婚前にセックスをすることは神の意思に背く邪悪な行為”だと信じています。なので、ティーンの妊娠をユーモラスに描いたこの作品をバッシングする人と、中絶を拒否した主人公を褒める人が、さまざまなキリスト教系のサイトでチャット・バトルを繰り広げていました。

日本では、養子縁組や宗教がらみの中絶反対思想という観点からこの作品が話題になることはないと思いますが、アメリカのこうしたバックグラウンドを踏まえてこの映画を見ると、脚本のおもしろさをさらに深く鑑賞できるでしょう。

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