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西森マリーのUSA通信:スペースアルク
 
『カールじいさんの空飛ぶ家』とアジア人キャストの扱い
『カールじいさんの空飛ぶ家』
(C)WALT DISNEY PICTURES/PIXAR ANIMATION STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.
『カールじいさんの空飛ぶ家』
原題:UP
監督:ピート・ドクター
共同監督:ボブ・ピーターソン
製作総指揮:ジョン・ラセター ほか
脚本:ボブ・ピーターソン、ピート・ドクター
声の出演:エドワード・アズナー、ジョーダン・ナガイ、ボブ・ピーターソン ほか
配給:ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン
2009年12月5日(土)全国一斉ロードショー!
http://www.disney.co.jp/movies/carl-gsan/

78歳の頑固な老人カールは、亡き妻エリーとの思い出の詰まった家に、一人で暮らしていた。開発の波が押し寄せ、ついに家を手放さなくならなくなったその日、彼は旅に出る。果たせなかった妻との約束をかなえるため、無数の風船を付け、家ごと空に舞い上がり、偶然乗り合わせた少年ラッセルとともに、冒険の旅に出た。

『カールじいさんの空飛ぶ家』は、アメリカでは子どもたちが夏休みモードに入っていた5月29日にリリースされ、評論家の98%から絶賛されて親たちからの評判もよく、大ヒットになりました。評論家や普通の大人にもウケた最大の理由は、主役がエイリアンでも動物でも優れた能力を持つヒーローでもないただの人間、しかもおじいさんと子どもだったこと。

コメディアンのような気の利いたセリフを言う動物や、エイリアンや生意気なキッズが主役の子ども映画に食傷気味だった評論家や親たちが、人間味あふれるこの映画を高く評価し、褒めたおかげで、子どもたちも大手を振って劇場に足を運べた、というわけです。

『カールじいさんの空飛ぶ家』

ただ、アジア系アメリカ人の間では、ラッセル少年の扱い方をめぐって、ちょっとしたディベートが繰り広げられました。ラッセルは顔つきはアジア人っぽいし、声も日系の少年が演じているので、彼がアジア系であることは間違いありません。
 
主役をアジア人にする必然性がないのに、超大作の子ども向けアニメで、アジア人が主役になるなんて、アジア系アメリカ人にとっては一大ニュースだったのです!(『ムーラン』や『ポカホンタス』は、それぞれもともとが中国、ネイティブ・アメリカンの話なので、アジア人が主役じゃないと成り立たない物語です)

それにもかかわらず制作会社のピクサーは「『カールじいさんの空飛ぶ家』の少年はアジア人ですよ」と宣伝しなかったばかりか、少年の名字を特定していないので、観客は彼がアジア人だと断定できないのです。12月11日にアメリカで公開されるディズニーの『プリンセスと魔法のキス』(日本では2010年3月6日公開予定)が、制作を発表した段階から「ディズニー初の黒人が主役のアニメ!」と大々的に宣伝していたことを思うと、「ピクサーはラッセルのキャスティングの意義を軽視している」と受け取られてもしょうがないかもしれません。

そのため、この映画の公開前後にアジア系アメリカ人の多くがピクサーのラッセルの扱いに対してアジア系の人が集うサイトや映画のサイトで文句を言っていたのです。
でも、一通り文句が出尽くした後に、「『HEROS/ヒーローズ』のマシ・オカ、『グレイズ・アナトミー』のサンドラ・オーも含め、アジア人がメーン・キャストになることが珍しくなくなったのでニュース価値が減った、つまりアジア人がメーン・ストリームの仲間入りをした証拠」という意見もたくさん出てきました。

「黒人やヒスパニックは“肌が黒い人”や“スペイン語が母語の人”という枠でくくれるが、アジア人は一つの枠ではくくれない。ラッセルの名字がもしLeeだったら中国・韓国以外のアジア人が疎外感を抱き、Toyotaだったら非日系のアジア人が置き去りにされたような気になるだろうから、名字を特定しなかったのはアジア人への配慮からでは?」という意見なども出て、賛否両論入り乱れながらアジア系の人々の間でラッセルのことが大きな話題になっていました。

日本ではこうした観点からこの映画が話題になることはなかったようですが、ラッセル君が何人であろうとこの作品は心温まる秀作なので、みなさんもぜひご覧になってくださいね!

※ドクター監督は、インタビューで「ラッセルはアジア系アメリカ人であるピクサーのアニメーターをモデルにした」と言っています。ドクター監督など制作陣の来日記者会見を取り上げた 「Listen! 世界の“生”英語」はこちらから>>

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