監督:スパイク・ジョーンズ
製作:トム・ハンクス、ゲイリー・ゴーツマン、モーリス・センダック ほか
脚本:スパイク・ジョーンズ
原作:モーリス・センダック
出演:マックス・レコーズ、キャサリン・キーナー ほか
配給:ワーナー・ブラザース映画
2010年1月15日(金)丸の内ルーブル他全国ロードショー[吹き替え版同時公開]
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『かいじゅうたちのいるところ』は、アメリカでは2009年の10月半ばにリリースされ、有名な児童書の映画化、ということで大きな話題になりました。評論家の評判は決して悪くはなく、幼稚園や小学校、病院の小児科のロビーなどに置いてあるフリーペーパーでもかなり大きな紙面を割いてPRしたのですが、興行面ではあまり振るいませんでした。
伸び悩んだ理由は、ターゲット・オーディエンスである3歳から10歳の子どもたちと、彼らの親たちの原作への思い入れが強過ぎたため、と言われています。同名の原作は、1960年代にアメリカで出版され、(日本でも70年代に出版されました)読み継がれているロングセラー絵本。親世代も、自分が子どものころに読んでもらった絵本なんですね。
読んだことがある方が多いと思いますが、子どものために声を出して相当ゆっくり読んでも3分で読めてしまう短い作品で、主役のマックスもかいじゅうたちもほんの2言ほどしかセリフがありません。ですから、この本を読んだことがある子どもや親たちは、それぞれ自分の心の中で自分なりのマックス、自分なりのかいじゅうを作り上げていたんですよね。そのため、映画のマックス、映画のかいじゅうたちが自分たちが持っていたイメージとは違っていたことに違和感を覚えて、映画の世界にのめり込むことができなかったのです。
有名な本の映画化は必ず原作とのニュアンスやイメージの違いが指摘されて、映画を観賞する、というより映画を見ながらあら探しをされてしまうことが多いのですが、特に児童書の場合は、観客が子どものころに何度も読んだ本のイメージを崩さずに長編の映像を作り上げるのは至難の業と言えます。
ハリウッドでは、児童書の映画化を成功させるためには主役に強烈なキャラクターを配役して映画の世界にオーディエンスを強引に引っ張り込むか、読者の想像力を圧倒するCGで魅了するかどちらか2つの方法しかない、とよく言われています。以前このコラムでもご紹介した『ホートン/ふしぎな世界のダレダーレ』や『グリンチ』(両方とも主役はジム・キャリー)は前者、児童書と言い切れませんが『ロード・オブ・ザ・リング』や『ナルニア国物語』のシリーズは後者の手法で、成功を収めた例です。
しかし、『かいじゅうたちのいるところ』は、ハリウッドのこの黄金律にあえて(かどうかは分かりません)従わず、無名の子役を使い、かいじゅうたちもCGではなくてぬいぐるみだったので、観客の本への思い入れを断ち切って映画の世界にのめり込ませることができなかったのです。
とはいえ、原作を知らない、あるいは原作にそれほど思い入れがない子どもたちは、『セサミ・ストリート』や『バーニー』(紫色の恐竜の着ぐるみのキャラクターが主役の幼児向け番組)を見る調子で、この映画を大いに楽しんでいました。ですから、みなさんも、素朴な作りの子ども向け映画を楽しむ感覚でこの映画をご覧になってみたらいかがでしょうか。または、ハリウッドの黄金律に従わず、映画化に挑んだ製作者の意図を読み取るのもまた、面白いかもしれませんね。
- 2010年01月14日
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