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西森マリーのUSA通信:スペースアルク
 
黒人プリンセスが話題をさらった『プリンセスと魔法のキス』
プリンセスと魔法のキス
(C)Disney Enterprises, Inc. All rights reserved.
プリンセスと魔法のキス
原題:THE PRINCESS AND THE FROG
監督:ジョン・マスカー、ロン・クレメンツ
製作総指揮:ジョン・ラセター、アギー・コー
脚本:ロブ・エドワーズ
声の出演:アニカ・ノニ・ローズ、ブルーノ・カンポス、ピーター・バートレット ほか
配給:ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン
2010年3月6日(土)より全国ロードショー
http://www.disney.co.jp/

舞台は1920年代のニューオーリンズ。貧しい家庭に育ち、夢に向かって懸命に働く少女ティアナは、プリンセスに扮(ふん)して仮面舞踏会に出掛ける。そんな彼女の前に1匹のカエルが現れ、自分は魔法使いの呪いで姿を変えられてしまった王子だと言う。呪いを解くためにキスを請われたティアナは……。「プリンセスのキスで、カエルが王子様に戻る」という誰もが知っている名作童話『かえるの王子様』を原作に、新しい世界が繰り広げられるロマンティック・ファンタジー。

『プリンセスと魔法のキス』は、アメリカでは去年のクリスマス映画として公開され、大きな話題になりました。何しろこの映画は、リリースの10カ月も前の2009年の冬休み(アメリカの学校は2月中旬にクリスマス休暇とは別に1週間の冬休みがあります)シーズンから、“ディズニーが初めて黒人が主役のアニメを作った!”という触れ込みで大々的に宣伝されていました。

当時は、ちょうどアメリカのメディアが一斉に初の黒人大統領の誕生を祝い、ファーストレディーとなったオバマ夫人もさまざまな雑誌に取り上げられた時期でした。日本でも報道されていると思いますが、オバマ夫人は女性誌やファッション業界に一大旋風を巻き起こし、「黒人女性の地位を一人で一気に高めた人物」として絶賛されました。オバマ夫人が登場する前のアメリカの美の基準は、例えば“鼻の頭とあごを結んだ線の中に唇が収まるのが横顔美人”など、ほとんどの黒人には達成不可能な白人の美意識を前提としたものでした。

でも、オバマ夫人は白人の美意識にこびることなく、鼻も唇も整形せず黒人特有の顔の作りのままで、黒人好みの大柄で派手な色遣いのドレスを着て、さまざまなファッション誌から“美しい”と絶賛されたのです。そのため、多くの黒人女性たちは、オバマ夫人のおかげでやっと黒人の生まれながらの美しさが認められたと、美の水準を多様化してくれた彼女に文字通り涙を流しながら感謝していました。

プリンセスと魔法のキスそういう時期にこの映画の第1弾のPRが行われたので、この作品はティーンの女の子用の雑誌やファッション誌などでも“美の基準の多様化”、“アメリカのマルチカルチャー化”という特集の一部として扱ってもらえたのです。去年の12月に実際にこの映画が公開された後は、プリンセスの肌が黒いだけではなくて彼女が黒人英語をしゃべっている点や、黒人独特の唇がかわいらしく取り上げられていること、さらに、準主役も黒人が固めていることなどが文化人たちから高く評価されました。
黒人のお母さんたちも、「この映画は黒人がついにアメリカのメインストリームで認められたことを象徴するような歴史的な意義のある作品! これでやっと黒人の女の子もハロウィーンにディズニーのプリンセスになれる!」と興奮していました。

日本では、この映画が歴史的作品という角度から取り上げられることはないかもしれませんが、安心感のある良質な「ディズニーの子ども向けアニメ」として楽しんでいただけるでしょう。

付け加えさせていただきますが、私は決してオバマ夫人のことを美化しているわけではありません。オバマ夫人の功績をたたえる記事を書くと、「著者はリベラルなジャーナリスト独特の偏見に満ちていて、コンドリーザ・ライス氏の存在を無視している」という苦情のメールを頂きます。

確かに、黒人女性として自力で最も高い地位にまで上り詰めたのはコンドリーザ・ライス氏ですが、ライス氏は15歳で大学に入学した天才少女。世界的なチェロ奏者のヨーヨー・マ氏と共演し、エリザベス女王の前でリサイタルを開くほどピアノがうまく、趣味はフィギュアスケート。インテリ層の白人のようなしゃべり方をして、常にシックな高級ブランドのスーツと靴で身を固めているので、普通の黒人にはまったく感情移入できない存在なのです。

それに対し、オバマ夫人は大統領夫人になった後も“隣のおばちゃん”的な親しみやすさがあり、高級なドレスを着ても立ち居振る舞いもしゃべり方も庶民的なので黒人女性が自分を投影できるキャラクターなのです。ですから、黒人女性の間ではオバマ夫人の方がライス氏よりも圧倒的な人気を誇っています。アメリカの雑誌もこうした事実を反映してオバマ夫人を絶賛し、私はそれを伝えている、ということです。決して公正を欠いた記事を書こうとしているわけではないので、ご理解いただけると幸いです。

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»映画の感想、それにまつわる雑記: 『プリンセスと魔法のキス』 - 2010年6月16日 11:59

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