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西森マリーのUSA通信:スペースアルク
 
『ボラット』の次はゲイのオーストリア人ファッション・レポーター!
ブルーノ
(C) 2009 MRC II Distribution Company LP
ブルーノ
原題:BRUNO
監督:ラリー・チャールズ
製作総指揮:アンソニー・ハインズ
脚本:サシャ・バロン・コーエン、アンソニー・ハインズ ほか
原案:サシャ・バロン・コーエン、ピーター・ベイナム ほか
出演:サシャ・バロン・コーエン、グスタフ・ハマーステン ほか
配給:クロックワークス
2010年3月20日(土)より新宿バルト9他にて全国公開
http://bruno-movie.jp/

偽ドキュメンタリー『ボラット/栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』で主演と脚本を務めた人気コメディアンのサシャ・バロン・コーエンが、今度はゲイのオーストリア人ファッション・レポーターのブルーノに扮(ふん)する社会派コメディー。「ハリウッドでセレブになること」を夢見るブルーノは、養子をもらったり、テロリストに誘拐されたりと、自分なりの“セレブになる方法”を実践し、トラブルを引き起こす。騒ぎの中で、過激な笑いをまき散らしながら、人々が抱える偏見や差別意識を描き出す。

『ブルーノ』は、アメリカでは2009年の7月に公開され、興業面では前作ほど振るわなかったものの、ショウビズ・ニュースやトーク・ショウでは、「あの『ボラット/栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』を生んだサーシャ・バロン・コーエンの最新作」ということで大きな話題になりました。

さらに、今回サーシャが演じているのがオーストリア人のゲイ、という過激で笑えるキャラクターだっため、同性愛者が集まるサイトでは、賛否両論の論争を引き起こしました。「ゲイのステレオタイプを助長する。ゲイに対する侮辱だ!」と激怒した人と、「気が利いたカリカチュア(風刺、パロディー)で面白いじゃん!」という支持派が、感情的な意見を戦わせていました。

このディベートの中で特に大きな話題になったのが、エルトン・ジョンでした。この作品には、U2のボノやスティングなどと共にエルトン・ジョンが登場しています。エルトン・ジョンは、恐らく世界一有名な同性愛者で、同性愛者の権利の代弁者としても活躍しています。そのエルトンが『ブルーノ』に堂々と出演していたため、ブルーノのキャラクターがゲイをこばかにするものだと怒っていた同性愛者たちが、エルトン・バッシングを始めたのです。

ブルーノこの話題が映画公開の2週間目に芸能ニュースで取り上げられたので、話題作りという意味ではやはりエルトンの起用は大当たりだった、ということでしょう。しかし『ブルーノ』は、大きな話題になったにもかかわらず、リリース後ほぼ1カ月半で打ち切りになり、約6000万ドルの収益しかあげることができませんでした。『ボラット』が4カ月のロングランになり、約1億3000万ドル稼ぎ出したことを思うと、興行面では失敗した、と言われても仕方がないでしょう。

原因は、「やり方が二番煎(せん)じだったから」とか、「カザフスタン人ならこばかにできたけど、ゲイを笑うなんてPC(politically correct=公正な、道徳的に正しい)じゃないから」などが挙げられています。でも、最大の理由は『ボラト』が主に保守的なアメリカの田舎者を揶揄(やゆ)した作品であったのに対し、『ブルーノ』はメインストリームのアメリカン・カルチャーをこばかにしていた、ということではないでしょうか。

つまり、サーシャのファン・ベースであるリベラルな人々は、保守的なアメリカの田舎者をばかにして大笑いすることは大好きでも、ファッション・ショーやセレブのチャリティーなどをこばかにされると素直には笑えない、ということなのです。

ちなみに、私はこの作品をおばか映画として楽しみましたが、私のゲイの友人は「ばかにされた」と感じた人が多かったようです。ゲイ差別もセクハラや人種差別と同じで、当事者と傍観者は感じ方が全然違います。この映画がゲイ差別かどうかは個人の意見に任せるしかありませんが、サーシャお得意の「偽ドキュメンタリー映画」という意味では非常によくできた作品なので、映画ファンの方は、ぜひご覧になってください!

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