HOME英語映画で英語
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


西森マリーのUSA通信:スペースアルク
 
現実味を増す“ロシア・スパイ”を描いた『ソルト』
ソルト
ソルト
原題:SALT
監督・脚本:フィリップ・ノイス
製作:ロレンツォ・ディボナヴェンチュラ、サニル・パーカシュ
製作総指揮:リック・キドニー ほか
出演:アンジェリーナ・ジョリー、リーヴ・シュレイバー、キウェテル・イジョフォー ほか
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
7月31日(土)より、丸の内ピカデリー1ほか全国夏休みロードショー
http://www.salt-movie.jp/

イヴリン・ソルトはエリートCIA分析官。相手のどんなうそも見破ることができる。ところがある日、CIA本部でロシアの密告者を尋問していた彼女は、窮地に陥る。密告者が、大統領暗殺の命を受けたロシアのスパイがニューヨークに潜伏中であり、その名前は「イヴリン・ソルト」だと告白したのだ。何かの罠(わな)だと必死に訴えるものの、追いつめられたソルトは、決死の逃亡を企てる。果たして彼女は本当にスパイなのか、その正体は……?

『ソルト』は、アメリカでは7月中旬に公開されました。公開の数週間前に本物のロシアのスパイが逮捕されたことで、この映画は抜群の知名度を得ることになりました。

実は、去年この映画の制作時点では、ほとんどの映画評論家とファンたちが「冷戦はもう終わったのに、今更ロシアのスパイの話なんて!」と、とても好意的とは言えない反応を示していました。

本作の監督を務めたのはオーストラリア出身のフィリップ・ノイス監督。くしくも、トム・クランシー原作のスパイもの大ヒットシリーズ「ジャック・ライアン・シリーズ」で、一流監督の仲間入りを果たしました(『パトリオット・ゲーム 』(1992)、『今そこにある危機』(94))。また、南アフリカ共和国のアパルトヘイト政策を描いた『輝く夜明けに向かって』(2006)、ベトナム戦争開戦前夜の『愛の落日』(02)、アボリジニの子どもの強制隔離政策をテーマにした『裸足の1500マイル』(02)など、社会的なテーマの作品が多く“玄人受けする実力派”として知られています。

でも、ハリウッドは“You're only as good as the last job you've done.”(前の作品がコケたら、それでおしまい)と言われる厳しい世界! ノイス監督は1994年の『今そこにある危機』以来、大ヒットには恵まれておらず、しかも97年の『セイント』が歴史的大コケをしているので、監督のファンは、今回の作品も評論家受けさえよければ、話題にならなくてもいい、とまで思っているような状態でした。

また、この作品の予告編が映画館で流れ始めた5月の段階では、映画業界の人たちもファンたちも「アンジェリーナ・ジョリーのスパイもの、アクションものにはちょっと食傷気味」という感じで、期待度はいま一つでした。

ソルト

ところが、です。映画公開の数週間前になって、アメリカでロシアのスパイが10人もFBIに逮捕されるという事件が起き、“ロシアのスパイ”がいきなりホットな話題になりました。
 
特に、アナ・チャップマンという名前で暗躍していた女性スパイのヌード写真などがインターネット上に流出し、彼女がイギリスでハリー王子に近づこうとしていたことなどが発覚した後は、複数のニュース専門チャンネルが連日連夜ロシアン・スパイのニュースを流し、アメリカ中がこの話題にくぎ付け、という状態にまでなりました。

そして皮肉なことに、この女性スパイが『ソルト』主演のアンジェリーナ・ジョリーの現在の夫であるブラッド・ピットの元妻で、女優のジェニファー・アニストンに似ていたため、ニュース番組でも芸能番組でも、朝、昼、夜のトークショウでも、この話題を扱う際に『ソルト』のクリップを流したのです。

さまざまな番組にコメンテーターとして登場したスパイの専門家、あるいは元スパイたちも、『ソルト』のクリップに出てくる脳のスキャンを利用したうそ発見器や、靴のつま先に隠した飛び出しナイフの効用を語りました。さらに、ネット上では「ロシアのスパイがこの時期に逮捕されたのは、『ソルト』のPRのために映画会社が仕組んだことでは?」という陰謀説までまことしやかに飛び交って、『ソルト』は7月初旬から中旬にかけて、テレビやラジオ、インターネットで最も露出の多い作品になり、映画ファンではない人たちにとっても「見てみたい映画」になることができたのです。

本物のスパイ事件よりも面白い(かもしれない)『ソルト』、皆さんもぜひご覧になってくださいね!

この記事のトラックバックURL: