美しい娼婦が仕掛けたわなを描く『クロエ』
監督:アトム・エゴヤン
脚本:エリン・クレシダ・ウィルソン
製作:ジョー・メジャック、ジェフリー・クリフォード、アイヴァン・ライトマン
原案:アンドレス・ハインツ
出演:ジュリアン・ムーア、アマンダ・セイフライド、リーアム・ニーソン ほか
配給:ブロードメディア・スタジオ=ポニーキャニオン
2011年5月28日より、TOHOシネマズ シャンテほか全国順次ロードショー
http://www.chloe-movie.jp/
『クロエ』は、アメリカでは2010年3月にリリースされました。アート系のシアターでの上映だったため、興行面では大ヒットというわけではありませんでしたが、主婦向けの番組や保守派のラジオのトーク・ショウでかなりの話題になっていました。
アメリカには地上波だけでも20以上、ケーブルテレビを含めると、50以上の主婦向けのチャンネルがあります。これらの番組で視聴率を稼げるトピックのトップ3は、浮気と離婚とダイエット。
特に浮気は、必ず視聴者を盛り上げることができるので、プロデューサーもディレクターも、「面白いネタがないときは、とりあえず浮気の話題で行こう!」という姿勢をとっているようです。どの番組でも夫の浮気相手と妻が対決する、という企画が取り上げられて、テレビカメラやスタジオに来ている観客の前で、妻と浮気相手が取っ組み合いのけんかをすることも珍しくありません。

また、夫が浮気をしているかどうかを確かめるために、妻が私立探偵を雇うこともよくあります。この種の私立探偵には、単に尾行して写真を撮る人と、男性を誘惑して誘いに応じるかどうか試すことを専門にしている美人私立探偵の2種類があり、両者とも繁盛しているようです。
アメリカでは、配偶者が浮気した場合には離婚時に多額の慰謝料を要求できるので、美女を雇ってわざと夫と浮気させて、その現場を写真に撮って離婚に臨む妻も多いので、美女と元警官がチームを組んで浮気調査を専門にしているということも少なくありません。こういう社会背景があるため、アメリカでは『クロエ』は主婦向けの番組で大歓迎されたのです。
一方、『クロエ』には女性同士のベッド・シーンがあるため、保守派のラジオトーク・ショウでは、激しいバッシングが繰り広げられていました。以前にも何度か書いたことですが、アメリカは全体的に見ると決してリベラルな国ではなく、国民の半数をキリスト教こそが生きる道だと本気で信じている非常に保守的な人々が占めています。彼らは同性愛は神の敵だと信じていることが多いので、この作品が同性同士のベッド・シーンを描いていることが神への冒涜だ、と怒っていたのです。
同性愛にも浮気にも(アメリカより)比較的寛容な日本では、この映画が大きな共感をもって迎えられることはないかもしれません。ただ、次第にすれ違う夫婦の関係、老いへの焦り、若い女性への嫉妬と混乱などがリアルに描き出されていますので、興味深く見ていただけると思います。特に4度もアカデミー賞にノミネートされ、「目だけで感情表現ができる」と言われるジュリアン・ムーアの演技は一見の価値があります。皆さん、ぜひご覧になってください!
- 2011年5月26日
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- [サスペンス]
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