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西森マリーのUSA通信:スペースアルク
 
アメリカの「ヒーロー」像:
勇気ある生還者(サバイバー)を描く『127時間』 
127時間
原題:127 HOURS
監督:ダニー・ボイル
脚本:ダニー・ボイル、サイモン・ボーフォイ
製作:バーナード・ベリュー、ジョン・J・ケリー、フランソワ・イべルネル ほか
原作:アーロン・ラルストン
製作総指揮:オリビエ・クールソン、ロン・ハルパーン ほか
出演:ジェームズ・フランコ、アンバー・タンブリン、ケイト・マーラ ほか
配給:FOX=ギャガ
6月18日(土)TOHOシネマズシャンテ、シネクイントほか全国ロードショー
http://127movie.gaga.ne.jp/
(c)2010 TWENTIETH CENTURY FOX

アウトドアを愛する27歳の青年アーロンは、今日もいつものようにロッククライミングをするためブルー・ジョン・キャニオンへとやってきた。体力と気力に恵まれ、何でも自分で解決してきたアーロンにとって、人生最悪の時間の始まりになるとも知らず。ふとした事故で大きな落石に腕を挟まれ、谷底で身動きが取れなくなってしまったのだ。しかも、誰にも行き先を告げずにやってきた彼に、助けが来る当てはない。絶望的な状況の中、諦めず生きて帰るためにあらゆることを試みる。しかし、無情にも岩はびくともせず、時間ばかりが過ぎていき、限界が迫っていた。そして、彼が下した選択とは。

『127時間』は、アメリカでは2010年の11月初旬にリリースされ、アート系のシアターでの上映だったにもかかわらず、大きな話題になりました。話題作りの最大の貢献者は、何と言ってもこの映画の真の主役であるアーロン・ラルストン氏。彼は、アメリカではほとんどスーパー・ヒーローに近い有名人です。

2003年5月、岩に右腕を挟まれて身動きが取れなくなったラルストン氏が、驚異の生還を果たしたニュースは、アメリカでは主婦向けの朝、昼のワイドショウのみならず、6時台の硬派のニュースでも大々的に取り上げられました。その後、ラルストン氏はあらゆる時間帯の番組やさまざまな雑誌に取り上げられ、その行動力と勇気が「真のアメリカン・ヒーロー」と絶賛されました。

アメリカ人は、事故や事件の生存者をヒーロー視する傾向が強く、9.11の生存者も皆ヒーローと呼ばれています。ラルストン氏の場合は、たった一人、食べることも飲むこともできない絶体絶命の状況で、自ら究極の選択を下した生還者(サバイバー)だったので、ヒーローと呼ばれるにふさわしい人材だったと言えるでしょう。

また、ちょうどこの時期は、イラク戦争が始まって約1カ月が経ったところで、アメリカ国民がまだ9.11の後遺症にさいなまれていた時期だったので、戦争やテロと無関係の、勇気あるヒューマン・ドラマを提供してくれたラルストン氏はメディアにとってもアメリカ国民にとってもポジティブで前向きなロールモデルとして大歓迎されたのです。


127時間ラルストン氏が自らの体験をつづった本“Between a Rock and a Hard Place”は2004年に出版されてベストセラーになり、その後、彼は自己啓発のセミナーや大企業の社員啓蒙講演などに引っ張りだこのゲスト・スピーカーとなり、事故やイラク・アフガニスタン戦争の被害者のためのスポークスパーソンとしても活躍しています。

こうして真のアメリカン・ヒーローの地位を揺るぎないものにしたラルストン氏が、この映画のPRに積極的に参加したため、この作品は大きな話題になったのです。

主演のジェームズ・フランコも、もちろんこの作品の話題作りに大いに貢献しました。この映画が公開されて数カ月が過ぎ、興行成績の面で中だるみになった時期に、ジェームズ・フランコがオスカーの司会を務めることになり、メディアが彼にスポットライトを当てたのです。その結果この映画にも再び注目が集まり、1月23日の段階では69館にまで減っていた上映館数が、次週には916館に増え、客足も一気に20倍に増加しました。

日本ではラルストン氏は無名に近いようですが、ロッククライミングや登山の人気も定着してきましたね。何よりも実話のみが持つ説得力と、主人公の葛藤や心の動きをぜひ感じでいただければと思います。絶望と希望の物語、皆さんぜひご覧になってください! 

『English Journal』2011年7月号のインタビューにジェームズ・フランコが登場!『127時間』について語っています。

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