HOME英語ニュース・ビジネス英語
 
 


日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2005年4月14日

NHKラジオ「ビジネス英会話」出演顛末記 (最終回)

ビジネス英会話のテキストと一緒に売られているCDは当然、放送番組をそのまま録音したものとばかり思っていましたので、それが別途収録を要すると聞かされたときはちょっと驚きましたが、実際にやってみたら、ちょっとどころの話ではありませんでした。

初回は特に悲惨でした。朝10時前に集まって、原稿を確認するといった作業で始まり、それが終わったのが午後4時。収録が終わって、帰宅したのは午前1時近くです。

収録が始まった4時の時点で頭がぼーっとしていましたから、収録のときに何をやったのかはまったくおぼえていません。私だけでなく、次回のCD(収録は月1回、計6回でした)のときに、相棒のクリスさんにどういう手順だっけと聞いても、彼女も疲れて憶えていないと言っていたぐらいです。

ところで、進行が遅くなったのは、「日経ウーマン」という雑誌の取材があったせいもあります。そうだというのに担当の記者は、ゲラをファックスで送りつけておいて、こちらがアカを入れて返してもその部分は無視。だったら最初からゲラなんか送ってきなさんなって。メールに対する返事もなし。本当に無礼きわまる連中で、時代が違えば手討ちにしてやるところです。ま、そうもいきませんから、一生つきあいを避けるほかありません。(実は以前にも不愉快な思いをさせられていたので迷ったのですが、自分が取材対象でなく、NHKだからと思って、渋々インタビューに応じたのに、結局、このありさまです。書店で「日経ウーマン」を見かけるたびに、どういう人たちなんだろうと今でも思います)


いつもは、つまり、週3回ある放送のための番組収録は、午前中に1週間分を、午後にまた1週間をという形で進められていました。ところが、CD版のための収録は、まとめて1ヶ月分を録音する上、事前に原稿の読み合わせと言うのか、プロデューサーやディレクターを交えて原稿をひととおり見ておくミーティングもあるため、一日仕事になります。

なお、アトラクションといった趣きのある、ネイティブどうしのチャットは、収録するCDの容量の関係があるので、ほとんど入れなかったと憶えています。そうなると、テキストの原稿の棒読み同然となります。入れるときは、こんな感じのやりとりで行きましょうかといった相談を3人でしておいた上、まず私が話を振ってから、あとは二人でシナリオどおりのやりとりをして終わりです。その場の即興ではありませんから、何か不自然な感じがしたものです。

ところで、このCDの制作は別会社(というかNHK傘下の財団法人)がやっているのですが、収録の段取りと言っても、初めと終わりにこれを言ってくれという紙きれを制作担当のサービスセンターの人から渡された以外は、特別なことはありませんでした。ないというか、放送に使うテキストをほぼそのまま読んで吹き込んでいるだけという感じが強く、これでいいのかという思いがしたものです。

視聴者に対するサービスという見地からすれば、放送をそのまま録音して売ってあげた方がよほど親切だと思うのですが、わざわざ別途収録して、CDを作成しているのは、これをメシの種にしている人々を気づかってのことと推測されます。

★ まとめに代えて

最初はテレビで6ヶ月ビジネス英会話を教えないかと声をかけられ、それが途中で何かの事情により、ラジオで6ヶ月と変わりましたが、いずれにしろ、臨時雇いという程度の関わりでしかなかったので、いまだに、この「ビジネス英会話」という番組の存在意義が呑み込めません。

講師になる人にしてみれば、おそらく年間では1,000万円前後の副収入が得られるでしょうから、自分からは辞める気はしないことでしょう。それはわかります。しかも体系的なシラバス(授業計画)が求められている感じはなく、楽でしょうから、なおのことです。しかし、わからないのはこういう方向性のはっきりしない番組を延々と続けるNHKの意図です。

私が担当した2004年前期は毎回15分で週3回あった放送のうち1回は復習編ですから、正味30分が計26週。合計で13時間。この範囲で何ができるかを考えた上で、慶應義塾大学でのビジネス英語コースの到達目標を前提に授業計画を作成しました。NHK側から視聴者にとっては、各種英語講座の最上級とみなされていると聞かされたので、平均以上の英語力を備えている人たちが聴いていることを前提に、とりあえず仕事で使う英語の基本パターンとして必要なものを会議、交渉といった分野別にまとめながら紹介することを目標としました。そして、目標は達成したつもりです。

しかし、その続編をと言われたら、困ります。体系的な授業計画が作りにくい、そういう中途半端な放送枠だからです。実際、仮に、2004年後期以降も講師を続けてくれと言われたら、断っていたことでしょう。と言うのは、NHK自体、年間26時間をどう使うかについて確たる方針を持っておらず、結局、講師の責任ないし負担とされるのはかなわんという気持ちがあるからです。

任されたら楽じゃないかとも思えますが、第一に、ひとまずコミュニケーションをこなせるレベルの英語ができるようになるには 最短でも380時間はかかります。従って、話を英語一般に絞っても、番組だけで初心者レベルの人を育てるには15年かかる計算です。つまり初心者向けの役割を果たせません。(こういった「所要時間」はフランス語の場合も似たりよったりで、例えば、そこそこレベルに達するのに約300時間、まともに話せるようになるには約500時間必要ですから、週2回15分ずつの語学番組だと10年、20年かかる話になります)

第二に、中級レベル以上の人が常に一定時間、いい英語に触れられるようにしようという趣旨で番組を構成するなら、体系だった枠組みが必要です。ところが、こういったものには目が向けられている感じは受けません。

こういったことを考えると、とてもじゃありませんが、責任をもってお引き受けできるような話ではないのです。

というわけで、少なくとも私にとっては、NHKの「ビジネス英会話」というのは不思議な語学番組でした。


•••••••••••••••••••••••• 追記 ••••••••••••••••••••••••••


hgb.jpg
当時のテキストをまとめ直したものが『即戦力がつくビジネス英会話』」というタイトルで、2007年6月初めに出ました。出版社はDHCで、価格は税込み2205円。

おかげさまで、売れ行きは以下のとおり上々です。

 ブックストア談・文教堂浜松町店語学書10週連続1位(7/2〜9/9)
 丸善日本橋店語学書8週連続1位(7/18〜9/11)
 丸善丸の内店本店語学8月期売り上げ1位(8/1〜8/31)

ところで、紙幅とCDの容量から来る制約があり、元のテキストの一部は割愛せざるを得ませんでしたが、その分、本体に当たる会話例や基本表現例が充実しており、特に単語解説の部分は、ビギナーレベルでも使えるようにしたいという編集者の熱意のおかげで辞書なしでも読めるぐらい詳細なものになっています。

内容としての特色は、会話例や基本表現のすべてを通じて、自分が見聞きしたものに基づいており、作り物が一切ないことです。現場での「標準語」をそのままお伝えする気持ちで書いた本です。

NHKの名前を使う以上は「名義料」を払えということなのか、最初、「NHKラジオ ビジネス英会話」というタイトルで出そうとしてくれた出版社は、NHKの要求を呑んだら採算が取れないと断念しました。いわくつきの本です(DHCさんは賢明にもNHKをタイトルから外しています)。しかし、いきさつがどうあれ、仕事上必要な英会話をひとわたりカバーできる基本書をという意気込みで、知識と経験のすべてをつぎ込んで書き上げた原稿だったので、ようやく出版にこぎつけることができ、しかも、みなさんのおかげで、一応、売れているとあって、感慨深いものがあります。



_______________________________________________________________


discogirl.gifdiscogirl.gifdiscogirl.gif


人気ブログランキングに参加しておりますので、この記事がよかったという方、一票おねがいできませんか。人気blogランキングへ