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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2005年5月29日

現在完了とはどういうものか:過去形との対比を通じて理解し、使いこなすためのポイント

現在完了となると、決まって、やれ完了だ、継続だ、経験だといったことが持ち出され、がっくりします。英語を勉強しようとしている人たちは、分類の専門家になろうとしているのではありませんから、不親切この上ないことだと思います。それより、コミュニケーションの道具として単純過去と現在完了の違いを理解したうえで、自分の状況に合わせて使い分けるほうが大事です。

そもそも、「現在完了」という言葉からして誤解を生じさせています。あとで説明するとおり、むしろ完了していることが取り上げられるのは単純過去の世界なのです。その上、I have completed the report last week.(レポートは先週、完成させました)のように、過去の一定時点を示すlast weekが入る以上、現在完了は使えない、誤用だとされるかと思うと、I have lived in London for many years.(ロンドンに何年の住んでいます)のようにforだとかsinceが入るなら現在完了だと説明されるものの、なぜそうなるのかの理由までは教えてもらえません。しかし、こうした過去形と現在完了の違いは、話し手(または書き手)が現時点と隔たりのある過去の一定時点の話を報告しようとしているのか、あるいは、話し手が現時点での関心事として過去のことを取り上げているのかの違いに由来しているだけです。むずかしい英文法の本を読む必要はありません。ここで紹介する使い分けのポイントさえおさえておけば仕事で英語を使うのに不自由はしません。その程度の話です。

★ 過去の済んだ話は過去形、現時点での関心事は現在完了形

現時点とは隔たりのある過去の一定時点に起きたことについて客観的に話をするときに使うのが過去形であり、これに対して、過去のことを現時点での問題として主観的にとりあげるのが現在完了の世界です。いわば点と線の違いです。現在完了と一緒に yesterday などの過去の時点を示すことばを一緒に使えないのは、そういった時点を表す語句が登場してしまうと、ことが点の世界の話となってしまい、線の世界の話である現在完了と相容れなくなってしまうためです。

このように過去形は、過去の「点」として以前に起きたことを話すために使いますから、現時点との関係が完全に絶たれているのが特色です。Richard Firsten と Patricial Killian が外国人に英語を教えるネイティブスピーカーのために書いた Troublesome English (Prentice Hall Regents) は、この点にこそ過去形と現在完了形との最大の違いがあると強調しており、両者のコントラストを浮き彫りにするため、以下のような例を挙げています。

(a) My grandfather travelled from Europe to Africa many times. (b) My grandfather has travelled from Europe to Africa many times.

ネイティブスピーカーに、ただの過去形が使われている(a)の発言を聞かせたあと、この人のおじいさんはまだ生きていると思いますかと問いかけたとすれば、まだ生きていると受け止める人はいないはずで、既に亡くなっていると受け止めるか、せいぜいが「どちらとも言えない」と答えるでしょうとし、さらに、この人のおじいさんは、また同じような旅に出ると思いますかとの質問に対してはほとんどの人がノーと答えるだろうとしています。これは私個人の意見ですが、こういった言い方は、いかにも終わった話、済んだ話、昔の話といったニュアンスを感じさせるからだと思います。

これに対して現在完了を使っている(b)のセンテンスについては、ほとんどの人が、この人のおじいさんはまだ亡くなっていないと感じ、また同じような旅に出るだろうかと聞かれたら、やはりほとんどの人がイエスと答えるか、せいぜいが「どちらとも言えない」と答えるだろうとしています。ここでの現在完了は、過去の出来事だけれど現時点との連続性が認められ、今後についても含みを残しているからだというのがその理由です。

結局、過去形を使うか現在完了形を使うかは、話し手の選択ないし視点の問題なのです。例えばR.A. CloseのA Teacher's Grammar (Language Teaching Publications) は、同じように窓が割れているという事実を取り上げる場合でも、過去のことを飽くまで過去のこととして取り上げ、「いったいどうしてそういうことになったのか」と尋ねたいなら、

Who broke the window?

という言い方になり、これに対して、過去に割られたという過ぎ去った事実はどうでもよく、現時点での問題は何かという角度から取り上げ、誰の責任を問うべきなんだと考えているなら、この話を聞かされたところで、

Oh, who has broken the window?

と聞くものだとしています。

この使い分けの問題を言っている本人の意識の問題として捉えると、過去の一定時点を表す語句と現在完了形を一緒に使ってはいけないというルールも、その意味合いがいっそうよくわかります。限界事例とも言うべきtodayという時間の表現を考えた場合、昼ごろに「いやあ、まだ昼だというのに、きょうはきつい日だ」と言いたいなら、

Today has been a hectic day. And it's only lunchtime!

となるでしょう。現時点から振り返っての午前中という時間が現時点を起点とする一つの線として捉えられ、現時点での関心事として語られているからです。

ところが、一日が終わったところで、例えば午後8時ぐらいに退社しようという時点で一日を振り返り、「いやあ、きょうは厳しい一日だった。ああ、もう8時だ。きょうはこれで引きあげます」と言いたいのであれば、

Today was a hectic day. Oh, it's eight. I think I'll call it a day.

となるでしょう。ここでのtodayは、既に現時点との連続性が断ち切られている過去の時点と意識されているので、現在完了ではなく、過去形が使われるのです。

同じことはthis morningを使う場合にも言えます。Carter, Hughes, McCarthy共著のExploring Grammar in Context (Cambridge University Press) での説明をもとに言えばこうなります。まず午前11時半に同僚に対して「けさ、カヨちゃん見た?」と尋ねる場合なら、

Have you seen Kayo-chan this morning?

と言うのが普通です。また、この場合、答えとしては、Yes, I've seen her.とかNo, I haven't seen her. になり、I saw her this morning.とはまず言いません。(例外的に、会社に来る途中で見かけたといった場合のように、始業の時点から現時点までの時間とは別物と意識される時点を念頭に言うなら、このI saw her this morning.も可能だとします。)

一方、夕方5時過ぎに同じ質問をするなら、そこでの this morning は「現時点との連続性のない過去の一定時点」と認識されますから、現在完了ではなく、過去形を使って、

Did you see Kayo-chan this morning?

と聞くことになります。肯定文でも理屈は変わりませんから、午後または夜になってから、I've seen her this morning.と言うのは響きとしておかしいということです。

こう見てきますと、現在完了では、話し手の問題意識が現時点から過去の一定時点まで伸びる線上にあり、幅があるのに対して、過去形では、話し手の問題意識が過去の一定局面にピンポイントで集中しており、幅がないと言えそうです。このことをPeter Masterは、Systems in English Grammar (Prentice Hall Regents) で、現在完了形は a sequence of activities(順次起きた一連の出来事)を感じさせるのに、過去形はそれがないとし、また、現在完了形は、話し手が自分の経験を語る手段であるのに対して、過去形は、principal means of telling stories(専らこういうことがあったという話をするために使う手段)だと形容しています。

★ 今でもそうだと言いたいときの現在完了形

何をいまさら、そんなことは知っていると言われてしまいそうですが、現在完了形は、過去に始まったことが今も続いていることを言うときにも使います。これをわざわざ取り上げるのは、こういう場合にこそ for や since を使う意味合いが浮き彫りになるからです。このことを実感させてくれるのが、前出のA Teacher's Grammarで取り上げている例で、

Have you been to Mexico?(メキシコに行かれたことはありますか?)

と聞かれて、Yes, I've been there once.(ええ、一度行ったことがあります)というのが答えだとした場合、答えた人はその時点ではメキシコにいないのが普通ですし、同様に、

Do you know this village?(この村のことはご存じ?)

と聞かれた人が I know it well. I've lived here.(よく知っています。住んでいたことがありますので)と答える場合も、答えた人がその時点ではそこに住んでいないことがわかります。

これに対して、単に I've lived here .というのでなく、

I've lived here since 1984--for the last twelve years.(私は1984年以来ここに住んでいます。過去12年ということになりますね)

とした場合は、経過時間の起点を示す since や経過時間の長さを示す for が入ることで、今なおここに住んでいることが明確になるとしています。私なりの理解で言えば、since や for があると、現時点を起点に過去へとさかのぼっていく線が明確に示されるので、過去に始まったことの現時点との連続性が明確になるということなのでしょう。考えてみると、過去の一定時点から現在までのつながりを表すever, before, alreadyといった現在完了形とセットで使われる副詞も同じような役割を果たしています。

なお、現在もそこに住んでいるなら、I live...と現在形を使えばよさそうなものですが、この点、A Teacher's Grammarは、こういったケースでは、話し手の問題意識が〔現時点ではなく〕専ら現時点を起点とする過去の一定期間内の出来事に向けられているから (because I am primarily concerned with occurrences within the pre-present period) 現在完了が使われるのだと説明しています。

★ ちょっと前のことだと言いたいときの現在完了

現在完了形は過去形と違って、今後に含みを残しているときに使い、また、今もそうだと言いたいときに使いますが、もう一つよく使うのが、事件や事故などのニュースあるいは直前に決まった変更を伝えるときです。例えば、前出のTroublesome Englishによると、

Brendan and Maureen got engaged.

と聞かされた人は、その婚約は済んだ話だという程度のことしかわからず、場合によっては、それが100年前の話だとわかっても違和感はないぐらいなのに、

Brendan and Maurneen have gotten engaged.

と聞かされた場合は、ごく最近のことで、親戚や友人の間では話題になっているだろうことがうかがわれるほどだとしています。これが英文法の本でよく取り上げられている、過去のことだけれど「その結果が現在でも残っている」ということなのでしょう。

こうした「ちょっと前の」出来事と言えばニュースなどの報道が典型で、実際、以下のように使われますが、おもしろいことに、こういった場合はご法度のはずの過去の一定時点を示す副詞が一緒に使われています。ただ、こういった例を紹介している Michal Swan の Practical English Usage (Oxford University Press) も、学習者は真似すべきでないとしています。

France has detonated a Hiroshima-sized nuclear bomb on Mururoa Atoll in the South Pacific at 17.02 GMT on Wednesday.(フランスは水曜日グリニッチ標準時1702分、南太平洋のムルロア環礁で広島級の原爆の実験を行った)

なお、これも同じPractical English Usageに載っている話ですが、何かのニュースを話題に話を切り出す場合、イギリス英語なら Have you heard? とするのに、アメリカ英語だと単純過去を使って、Did you hear?とするケースが多々あるということです。

★ まとめ

以上見てきましたとおり、現在「完了」とは言うものの、本当の意味で完了していることを取り上げるときは過去形を使うのであって、その意味で現在完了は過去の話をするときに使うツールと言うよりは、話し手が現時点での関心事を取り上げるのに必要な限度で過去の話を引き合いに出すときのツールと位置づけられます。現在のことがらを報告する現在形や、過去に起きたことがらを報告するだけの過去形とは趣を異にしているということです。

なるほど現在完了は、文法の本では「時制」の章で扱われ、現在形や過去形と並べて論じられていますが、むしろ現在完了は話し手の問題意識ないしアプローチという角度から考えたほうがわかりやすいと考えます。言い方を変えると、文法書は現在完了を説明するに当たって過去の出来事うんぬんと過去から話を進めますが、普通に英語を使っている人々の感覚としては、現時点での話し手としてのアプローチの問題なのです。客観的な時期の話つまり「いつのことか」という感覚よりは、上のWho has broken the window?の例に表れるとおり、話し手自身が過去の済んだ話として取り上げようとしているのか、それとも現時点での問題として取り上げようとしているのかの違いが前面に出るのだといのが私の理解です。

Peter Masterが前掲書で説く枠組みに即して言えば、現在形や過去形が客観的事実の報告のために使われるの対して、完了形は話し手本人が自分の主観を入れて、自分や人の経験を伝えるときに使われるという違いがあります。

他面、現在完了形は、原則として、yesterdayやlast weekなどのような過去の一定時点を表すことばと一緒に使ってはいけないのは確かですし、また、for 12 yearsだとかsince 1984 といったフレーズが入る限り現在完了形を使うのが自然だというのも確かです。従って、まずはこういった基礎的な部分をしっかりおさえて間違えないようになってから、上で説明した感覚的な違いを思い出しながら使えば、現在完了形を自分のツールとして自在に使えるようになるはずです。

田 


田 

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Comments

日向先生、ご丁寧に説明して下さり、ありがとうございます。
よく分かりました。
現在完了の文が現在時制で述べられている文の中にある場合は、いいのですが、今回のような場合は、違和感がありました。

先生、ご無沙汰しております。
先生にお伺いしたいことがあるのです。どうしても分かりません。

受験用の長文問題(外国の著書からの抜粋です)で、ある文は過去形(と過去完了形)で書かれているのに、同じセンテンスの中に一部分だけ現在完了で書かれており、私は、「これは間違いではないのか。」と思ったことがあります。一つの文の中で、ある一部分だけ著者の視点が現在になっているというのはおかしい。これは日本人が書いた文章ではないかと思いましたが、そうではなくネイティブの方の文だったので、私の考えは間違っているということになるのですが、今でも納得できません。

日向先生、こういうことは、ありえるのでしょうか。過去時制(と過去完了時制)で書かれた文の中に、一箇所だけ、現在完了時制が使われていることが。ここの訳は「私は特別な任務を帯びてそこにいたが、それは常に私を苦境にいざなう弱さゆえに私にふりかかってきたものであった。」となっています。(これは1918年の戦争の頃の話のようです。)

I was there on a special mission, which I had brought on myself through a weakness that has always led me into difficulties.

...From WITNESS : THE STORY OF A SEARCH by J. G. Bennett


[返信]

I was there という過去の一定時点との関係で、bring it on myself という事情はそれより前のことであり、したがって、過去完了を使います。しかし、こういったことをもたらす自分の弱さは I was there と過去のことを報告している著者にとり、現時点でもなお悩みの種になっているわけですから、現時点から振り返って、そういう悩みの種が存するようになった時期へとまっすぐ線を伸ばせる感じなので、別段不思議はないと感じます。

この感覚を原英文にもっと明確に反映させるとすれば、こうなるのかなと思います。

I was there on a special mission, which I had brought on myself through a weakness. In fact, it is this weakness that has always led me into difficulties.

当時、私はそこに特別な任務をおおせつかって、いたわけですが、そもそもそんな任務がふりかかってきたのも、自分の弱さのためでした。実際、この弱さのゆえにいつも自分を苦しめる結果をみずからまねいてしまうのです。

以前から感じていたことなのですが、現在完了は、時制ではなく、「現在完了法」として、仮定法」と同等に扱った方がいいのでしょうか?

〔私学ゼミナールさんへの返信〕

こんにちは。

動詞の活用形でその動詞が表す動作や作用がいったいいつの話かを示すのが時制だとする限り、英語の時制は現在形と過去形しかないものの、完了形が常にこうした時制と抱き合わせでしか登場しない以上、一緒に扱ったほうがいいのではないでしょうか。

日向清人

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