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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2005年5月16日

SHALLとWILLはどう使い分けるのか

文法書をいろいろと読んでいると、同種の講壇事例が持ち出され、「またかよ」と思うことがあります。そのいい例がSHALL対WILLで引き合いに出される川でおぼれかけ、大声を出している二人の男の話です。手元のFrederick T. Wood他のCurrent English Usageでは、こうなっています(イギリスの本なので引用符が( ' )になっていますが、悪しからず)。

There is the story of two men who fell off London Bridge into the Thames. One shouted out, 'I shall drown, no one will save me.' The other said, 'I will drown, no one shall save me.'

さて「自殺しようとしているのはどちらの方でしょう」という謎かけで、このような場面でもその人が一人称で意思を表明するときはWILLを使うべしという、学校で教わった伝統的ルールにこだわっていられる限り、自殺しようとしているのは後者だというオチです。そして、このあと、話し言葉ではI'llと言うぐらいだから区別の実益はないと続きます。

以下では、普通の英語の世界でのSHALLと法律文書の世界でのSHALLについて場合分けしながら見て行きます。

★ 普通の英語でのSHALL

普通の英語の世界では、WILLかSHALLかが問題となりうる場面では、ほとんどの人が、迷わずWILLを使って済ませており、後述する一定の状況でのみSHALLを使っています。このことは、can/could, will/would, may/might, shall/shouldそしてmustの使用頻度にも表れており、Longman Grammar of Spoken and Written Englishというコーパスでは、WILLがダントツで一番多く使われる一方、SHALLが最下位となっています。

ちなみにこの頻度分布では、willとwouldではwillの方が、canとcouldではcanの方が、各々使用頻度が高くなっているのに、shallとshouldでは、むしろshouldの方が多く使われているというおもしろい事実も示されています。

このように将来の話をするときも、自分の意思を表明するときもWILLが使われるわけですが、微妙な差はあるようです。Longman Student Grammar of Spoken and Written English Grammarによりますと、自分の意思の表明のときは、

I'll come and show you...

のように一人称の代名詞が普通使われるのに対して、将来の話をするときは、普通、

It won't be that difficult...

のように、代名詞以外のものが来るとしています。

それでは限定的にSHALLが使われるのはどういうケースかと言うと、第一に、かしこまった感じでものを言うときです。例えば、

I shall be pleased to accept your invitation.(喜んでご招待を受けたいと存じます)

イギリス人はSHALLもWILLも同じように使う感じであるのに対して、アメリカ人は滅多にSHALLを使いませんから、その分、改まった感じが出るわけで、場合によっては、やや大げさな感じすらします。

第二に、「〜しませんか」と相手に呼びかけるときには必ずSHALLを使います。ビジネスで一番よく耳にするのは「始めましょうか」という意味の

Shall we get started?

とか、

Shall we get down to business?

でしょう。何であれ、WILLはここでは使えません。

似ているけれど、毛色の変わったところでは、Shall I call the police?というものがあります。これは、決して提案といったものではなく、威嚇です。「〜しないと警察を呼ぶぞ」と言うときの、あれです。

第三に、「どうしたものでしょうね」と相手に助言を求めるときも、SHALLを使って、

What shall we do next?(次はどうしたらいいのでしょう)

となり、What will we do next?とは言いません。

これの延長線上にあることですが、問題提起をするときも、

What shall we do with our...?(私たちが抱える … という問題についてはどうしたものでしょうね?)

という格好になります。WILLは使えません。それどころか、What will we do with our...? といった言い方だと、エイリアンにコントロールされており、自分たちにはどうにもならないといった響きがあり、思わず笑ってしまう感じになります。

★ 法律文書でのSHALL

契約書などの法律文書などでは、一般にWILLが顔を出すことはなく、基本的にSHALL一本槍です。例えば、日本国憲法の英訳文はすべてSHALLで通してあるはずです。条約の原文なども普通はそうです。

まず法律の場合は、誰かが負う義務というのでなく、ただ「こうであるべし」と述べているときも徹底してSHALLが使われます。例えば、日本国憲法第四条の「[天皇は]国政に関する権能を有しない」というくだりも英語では...and he shall not have powers related to government.になっています。規範つまり関係者が従わなければならないルールを示すときは、SHALLを使うという姿勢を見て取れます。

契約書の場合は、本当ならSHALLはhave a duty toという意味のときだけ使うべきなのでしょうが、実際は細かく使い分けずに終わっています。例えば、私が法律事務所で翻訳をやっていた時代は、契約書の英訳はひとまずすべてSHALLを使ってしあげたものです(従って実に楽です)。その次のステップで、弁護士の中には自分のクライエントが関わる義務規定についてはSHALLをWILLに直したりする人もいましたが、たいていはそのまますべてがSHALLという形で使われていたとおぼえています。なおWILLを使ったからと言って規範的な意味合い、つまり「何々すべし」という意味あいは変わらず、単に語感として相対的に弱い感じがするという程度の話でしょう。

ただ実際問題としては、文脈からは将来のことを指しているだけであり、契約上の義務の問題ではないことがわかるのにSHALLが出てくるととまどいます。もっと面倒なのはSHALL NOTです。X shall not be held liable for...(Xは...につき責任を負わないものとする)などは、翻訳に慣れていない人が、律儀に「責任を負ってはいけない」とするケースもあるようですが、しかし、これは英語以前の問題でしょう。文脈から考えればおかしいに決まっていますから。

要するに契約書の世界、特に金融を含め、国際取引がらみのものは何でもかでもSHALLで通しているのが普通と言ってさしつかえないと思います。

なおアメリカの契約書、特に一般の人が当事者となるものについては、一つの流れとしてわかりやすくしようという動きがあり、これを反映して、例えば、不動産賃貸のモデル契約などでは、借り主についてはすべてYou must...とし、貸し主についてはWe will...としているスタイルもあります。SHALLだと人によっては義務と受け取らない危険を考えたのでしょう。ちなみに、義務ではなく、「こうしてもいい」「?できる」という裁量に委ねられるものを明示したい場合は、MAYが使われます。例えば、日本国憲法にある、天皇が国事行為を委任「できる」としている定めは、the Emperor may delegate...となっています。

以上を要するに普通の話し言葉や書き言葉では原則としてWILLで通し、例外的にSHALLを使うということであり、また、契約書などにおいては、原則としてSHALLで通すのが普通ということになります。

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Comments

当方の所(アメリカ)での、ISO(International Standard Organization:国際工業規格)の基準書では、”ShallはMustより強い意である”と、アメリカ人にも説明の後、導入していきました。

アメリカ人にも説明すると言う事は、Shallの使用(強さ加減)基準も分野によって、いろいろな規定があると言うところでしょうか。

普通の英語では、当方あたりは、”Shall I ...”の呼びかけで使いますが、アメリカ人で使っているのは聞いた事がありません。当方の、言ってる”Shall I ...”は、アメリカ人には理解されていますので、勿論知っているのでしょうが、こちらの人にとっては、めったに使わない言葉のようです。

[返信]

ISOの説明、興味深く拝見しました。ところが、法律関係では、shall が must より弱い意味で使われることがあります。英語圏の判例で、shall が実は may の意味で使われていることを認めるものが多々あり、ややこしいことになっています。

途中送信で申し訳ありません。自宅の古いラップトップ、時々おかしくなります。つづきです。
2005年からこういう役にたち、かつ読んで楽しい雑記帳をお書きになっていることを最近発見した次第です。

Shall,見積もりをとるために用意する設備仕様書では極普通に見かけます。契約書に準ずる書類ではあるし、日本語はxxすべし。xxであること。となるわけで、誤解の無い相互理解を簡潔明瞭に表現。ほとんどの部分が箇条書きゆえ、shall大活躍です。xxでも可、はもちろんmayですが。

深く考えることもせず、いわば当たり前のように、will, shall、mayとその過去形のフォームを使い分けていますが、それはUSで勉強し、かつ英語に浸かって生活しているから可能なわけで、そうした環境にない方々にとって、感覚的に自然に使い分けるというのは難しいだろうなあ、と改めて思いました。

[返信]

ありがとうございます。感覚は場数でしか得られませんね。他面、浦島花子さんのように実務文書に触れている人にとっては何でもないことでも、この種の文書を扱わないごく普通のアメリカ人にとっては、けっこう難物で、慣れない人に作文してもらうと妙に「こわい」文書になったりしますよね。

こんばんは。先生のこの雑記帳を最初から読ませていただいています。J-SOXに関わるはめになるまで、ビジネス英語に注意を払ったことがなかったので、2005年

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