2005年6月20日
実務英文のトップスターはSVO型と複文
学校文法ないし受験英語の世界では、5文型を詰め込まれ、さらに単文、複文、重文がどうのというややこしい話で追い討ちをかけられます。しかし、ご安心ください。ビジネスライティングの世界では、主語+動詞+目的語というSVO型を中心に書いていればよく、また、複文を中心にまとめていればひとまず用は足ります。
仕事に英語が必要だから文法を復習しなければという場合、一から始めて文型のあれこれ、あるいはセンテンスの種別をおぼえる必要はありません。最もよく使うパターンに力を入れ、それを自分でも使いこなせるようにするのが先決です。そこで、今回は、文型とセンテンスの種別をざっと見ていきます。
★ ビジネスライティングではSVOが中心
文型という言葉が使われてはいますが、その正体は動詞を使う上でのパターンです。The company collapsed.(その会社はつぶれた)というSV型の第一文型とThe CEO looked tired.(最高経営責任者は疲れているように見えた)というSVC型の第二文型は、いずれも目的語をとらない自動詞の話です。これに対して、We hired a consultant.(われわれはコンサルタントを雇った)というSVO型の第三文型、そのバリエーションの1である、We sent him some additional information.(われわれは彼らに追加の資料を送った)というSVOO型の第四文型、それにバリエーションの2である、The board appointed her COO.(取締役会は彼女を最高執行責任者に任命した)というSVOC型の第5文型はいずれも目的語を取る他動詞の話です。
ところで、私自身、長いこと補語と訳されるcomplementがどういうものかよくわかっていませんでしたが、何かの文法書を読んでいた折に「要するに言い換え」という説明があり、納得しました。上のThe CEO looked tired.でのtiredという形容詞は主格補語と称されますが、要するに主語を振り返って、「疲れている人」と言い換えているだけで、結局、CEO = tiredと言っているだけです。The board appointed her COO.でのCOOという目的格補語も、目的語であるsheがどういう者であるかをCOOという言葉で説明し、言い換えているだけです。つまり her = COOということです。
何であれ、ここでの最大のポイントは、自動詞の話である第一文型と第二文型がいずれもWhat it is.(それが何であるか)という、いわば静止画像的な語りの世界であるのに対して、第三文型以下がいずれもWhat it does.(それが何をするのか)という、動画的な語りの世界だということです。というのも、ビジネスライティングでは、当然のことながら、躍動感のある第三文型以下を好むからです。
そもそも各文型の一般的な使用頻度ということで言えば、be動詞などの連結動詞を使う第一文型と第二文型が優勢ではあります。Graeme KennedyのStructure and Meaning in English (Pearson Education)で引用されているAltenbergの研究によると、第一文型と第二文型がおよそ6割を占めているそうです。これに対して、第三文型つまりSVO型は約3割です。
しかし、本誌6月16日号の「ビジネスライティングで嫌われるThere isとThere are」でも書いたとおり、「BE動詞だと、This is a pen.に見られる通り、This = penと同じで、いわば静止状態を表すにとどまり、そこには『何かが、どうする』といった動きがありません。しかし、これでは、インパクトに欠けるので、ビジネスライティングにおいては、なるべく動きを伴うアクティブな動詞を使えと強調され」ます。よくビジネスライティングの教科書で、Write with verbs, not with nouns.(名詞ではなく、動詞を使って書け)とされているのも同じ趣旨です。
また、West Nutshell SeriesのLegal Writingでも、「SVO型を用いよ」という項目を設けて、「ほぼ全体を通じて受動態で、つまり、主語+動詞+目的語というパターンによるべきだ。英語を話す人々にとっては、このパターンが一番理解しやすいからだ。行為の主体が主語の位置に置かれ、行為の客体が目的語の位置に置かれているとセンテンス自体が能動的なものとなり、最も力強い形となる」と説かれています。実際に、自分がこれまで集めてきたライティング用の文例をざっと見てもおよそ6割がSVO型のセンテンスです。
従って、結論として、ビジネスライティングという場面では、SVまたはSVC型のセンテンスよりはSVO型のセンテンスを中心にまとめていった方が、相手もそのパターンになじみがあり、ある意味ではSVO型であることを期待しているので、通りがいいということです。
★ ビジネスライティングでは複文が重要
単文というのは、The project never got up and running.(そのプロジェクトはついに立ち上がらずじまいだった)のように、主語と述語動詞のセットを備えた単一のセンテンスです。複文というのは、The project never got up and running because the company failed to secure adequate funding.(そのプロジェクトは、会社が十分な資金を確保できなかったので、ついに立ち上がらずじまいだった)のように、主語と述語動詞のセットが二つあるものの、片方のセットがbecauseのような従属接続詞で始まっているがために、もう一方の主節なしではやっていけないものを言います。重文は、The company failed to secure adequate funding and the project never got up and running.のように、二つある主語&述語動詞セットを単にand, but, or, nor, for, yet, soといった接続詞でつなげただけのものを言います。
最後の文例を見ておわかりのとおり、単に主語と述語動詞のセットをandなどの接続詞でつないだけという構成法は、平板な感じで終わってしまいます。一方、単文だけを並べると、子供の作文に見られる、「朝、ご飯を食べた。お昼は何々した。夕方、何々した」という単純なセンテンスの羅列と同じになってしまいます。これに対して複文は論理関係がぱっとわかるいわばコンパクトな二階建てのイメージがあります。しかも、大事なことは最後に持ってくるべしという英文メッセージ構成法の定石に合わせて、The project never got up and running because the company failed to secure adequate funding.をBecause the company failed to secure adequate funding, the project never got up and running.というふうに組み替えることができます。こういった理由で、ビジネスライティングでは好んで使われるのです。
この点、前掲のLegal Writingでは、以下の二つのセンテンスを並べて、重文におけるandは何の意味も加えず、プラスの記号でしかないのに対して、複文の方は、本人が和解で決着をつける支払能力を有しないという結論が浮き彫りにされると説明しています。
重文の例 → The damages have exceeded the original estimates by 55%, and Mr. Baggins is unable to settle the case.(損害賠償額が当初予想額を55%上回っている。そしてバギンズ氏は和解金を支払って紛争に決着をつけることができないでいる)
複文の例 → Because the damages have exceeded the original estimates by 55%, Mr. Baggins is unable to settle the case.(損害賠償額が当初予想額を55%上回っているので、バギンズ氏は和解金を支払って紛争に決着をつけることができないでいる)
英語学習の初期段階ではそれぞれどのような役どころがあるのかを説明しないまま、単文、複文、重文といったものを教わりますが、このように、複文の「ありがたみ」がわかっていると、一度は重文でだらだらと並べてしまっていても、最後に読み返す段階で、複文に組み替えるようになるものです。実際、そこまで行けば中級レベルから上級レベルに進級できたと言えるでしょう。
★ まとめ
文型はいろいろあるけれど、簡単明瞭なメッセージ作りの主役はSVO形式であり、またメッセージの背景にあるロジックを簡潔に示すためには複文が一番向いてます。
Bargiella-ChiappiniとNickersonの共著であるWriting Business (Pearson Education)によると、経営者や管理職クラスを対象にしたアンケート調査では、回答者の8割以上がライティングが自社の活動にとりプラス要因であるという認識を持ちながら、週に15ないし20時間以上をライティングに割いています。一般社員から中堅にかけてのレベルでも、Eメールでの資料送付の案内から始まって社内での通知や申請などライティングは日常的な作業です。そうとすれば、なおのこと、SVO形式と複文を組み合わせて、簡潔かつ骨太のメッセージを作成するスキルを磨く必要があると言えるのです。
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