2005年7月11日
Menuの「うしろに」はbehind the menuか?
今回は、前置詞behindの話です。
だいぶ前ですが、時間がなかったので旅行英語の用例集の英訳を人づてに在米20年とか言うお方に頼んだところ、用例の一つ、「ワインリストはメニューのうしろにあります」がThe wine list is behind the menu.となっており、愕然としたことがあります。(普通は、is in/at the back of the menuです)
レストランでのワインリストは、普通は、メニューとは別になっていますが、ときには、メニューの最後の方に数点並んでいるような簡単な形式のものもあり、そういったケースを想定して、「うしろにあります」という言い方だったのです。
たしかにbehindは、日本語で言う「うしろに」をまかなう部分もありますが、この英訳では、「メニューの陰にあります」「メニューの向こう側にあります」という意味になってしまい、お話になりません。
考えてみると、在米何十年と言っても人それぞれですから、英文法などきちんと勉強したことがなくとも、(相手がどう思っていようと)日常生活や仕事で不自由しない程度の英語ができる限り、日本人から見れば、英語のできる人ということになるのでしょう。しかし、中にはブロークンのまま押し通している豪傑もいるわけで、「在米何年」という経歴には格別意味がないと改めて思い知らされました。
それはともかく、こういった情けない英語とならないよう、ここでbehindの意味を確かめておきましょう。
★ behindの意味
Oxford Advanced Learner's Dictionaryでbehindを引くと、語義の1は、at or towards the back of sb/sth, and often hidden by it or themとなっていますから、特に後段を注意して読めば、behind the menuでは、縦にしてあるメニューの陰に隠れているような状態を指すことがわかります。
Longman Dictionary of Contemporary Englishだと、at or towards the back of a thing or personとあっさりしており、学習者向けの辞典であることを考えると不親切です。
最近、気に入って使っているMacmillan English Dictionaryは非常に親切で、語義の1がさらに3つに分かれています。まず基本的な意味ということで、ボールドで、at sb/sth's back or opposite sideとなっており、続いてat the back of someone or something、そして例文、次にfollowing someone or something、そして例文。最後にon the other side of something from where you areとあり、また例文が続きます。
しかし、普通、英語を話す人にとっての、behindは、「何かをはさんでその反対側」をぱっとイメージするものです。例えば、アメリカの映画やテレビシリーズものでは、犯人を捕らえた警察官が「手は頭のうしろ!ひざまづけ!」と命ずるシーンは、Hands behind your head. Get on your knees.に決まっています。ここでbehindを使っている警官は、自分の方から見て、相手の頭の向こう側に当たる位置で手を組めと言っているわけです。(試しにgoogleで、"your hands behind your head" policeという形で検索すると550件ヒットしますが、"your hands in the back of your head" policeで検索するとわずか1件です)
しかも、この間にある何かは、ある程度の高さがあるというのが普通で、この点がon the other side ofとの違いでもあります。
Seth LindstrombergのEnglish Prepositions Explained (John Benjamins Publishing Company)はこのあたりの感覚を次のように説明しています。
Behindは、とりあげようとしている客体との関係で比較的高さのある基準点ないし標識を基準にしていることを要する。この標識は、客体との位置関係において、より高いとか、高さで並んでいるといったことまでは必要ないが、平坦であってはならない。
このように位置関係の基準となる標識は、平坦なものであってはならないので、次のような言い方はできません。
Their house is behind the pond.(=彼らの家は池の「陰に」ある)
しかし、この場合、behindでなく、on the other side ofなら使えます。
Their house is on the other side of the pond.
この点がbehindとon the other side ofの違いになります。
★ 正面のあるもの、ないものとbehind
この本のおもしろいところは、鋭い観察に裏づけられていることで、あるもの(標識)を基準点として、何か(客体)がどこにあるかを言う場合、その標識が人間や上のメニューのように表や裏を有するものであるときは、behindで表されるのは、その標識の正面ないし表側と反対側の位置だとします。
したがって上のメニューについて、behind the menuという言い方をすると、メニューの表紙とは反対側、つまり裏表紙の後方というニュアンスとなり、メニューの陰に隠れている格好でもう一枚、何かのリストがあるという意味になってしまうわけです。
これに対して、正面や表のないものが標識である場合は、その標識が話し手である自分と客体の間に立っているのであれば、
She is behind the tree.
と言えるとしています。
こちらから見た場合の位置関係で言えば、こんな感じです。
[自分] [木] [彼女]
ところが、この木が自分と客体である彼女との間にあるというのでなく、こちらから見て、彼女の横または近くにあるといった位置関係ならnearかbyを使います。
例えば、こちらから見て、彼女と彼女の友人が木をはさんで、こんな感じで並んでいるとします。
[彼女の友人] [木] [彼女]
ここでは、
She is near(またはby)the tree.
となります。ただ、この友人が彼女がどこにいるかを言う場合は、自分から見た場合、木をはさんでの位置関係となりますから、She is behind the tree.になるということです。
★ in back ofとin the backの違い
上で説明した意味でのbehindの反対語はin front ofです。となると、in back of、さらにはtheを入れたin the back of との違いも確かめておく必要があります。
たかがtheが入っているだけの違いじゃないかと思われるでしょうが、かなりの差があります。この点、Lindstromberghはボートの絵を使って、うまく説明しています。[ ]の中がそのボートだとした場合、in back of (またはbehind)、in the back of、in the front of、そして、in front ofは各々次の位置関係を示すことになります。
in back of (behind) ← ボートの外の水面 [in the back of ← 船体後部 ← 船体中央部 → 船体全部 → in the front of] ボートの外の水面 → in front of
同じことを記号で表示してみます。
W [ X Y] Z
これをセンテンスで言えばこうなります。
W is in back of the boat. = W is behind the boat.
X is in the back of the boat.
Y is in the front of the boat.
Z is in front of the boat.
ここで船内の後方と前方の場合にだけtheがついているのは、各々、in the back part of the boat、in the front part of the boatというふうに、ボート内のpartにつき、どのpartかをspecify(具体的に特定する)するために定冠詞が必要となるからです。これに対して、船の後方や前方を意味するin back ofとかin front ofは、こういった特定するしないといった話ではなく、抽象的に後方、前方を表しているので不可算名詞なので何も冠詞がつかないという理屈になります。
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全部⇒前部
Y is is in the front of the boat.のis重複
に気付いたのでコメントしておきますね。
[返信]
ありがとうございます。直しておきます。