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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2005年7月28日

(R)とTMの意味の違い:商品名の右肩にある権利主張の世界

★ (R) はRegistered Trademark

商品の出所ないし信用を示すマークである商標の右肩に小さな (R) やTMが付いているのをよく目にすると思いますが、(R) は、一般に日本語では「マルアール」で知られ、英語では"R in a circle"で通っています。

わが国では、正式には「商標登録表示」と称されています。商標の右肩に (R) を付けるほか、Registered Trademarkという表示も見ますし、登録商標という表示もあります。

実は先般、「英語208」という商標を登録したのですが、そのとき弁理士からおそわったのは、このマルアールは、商標法上、何か定めがあるものではないとのことでした。ちょっと意外でした。なるほど商標法の73条をのぞくと、単に「その商標が登録商標である旨の表示を付するように努めなければならない」としているだけで、登録商標の表示にはマルアールを使えとか、かならず登録商標であることを明示せよとはしていません。

他面、登録されてもいない商標なのに、あたかも登録されているかのように、むやみにマルアールを使うと、これは虚偽の表示となり、商標法上は刑事罰まであります。

★ (R) のありがたみ

マルアールの根拠ですが、アメリカの場合、明文の規定があります。United States Code(連邦法令集)中の商標法に当たる部分のSection 1111がこう定めているのです。A registrant of a mark registered in the Patent Office, may give notice that his mark is registered by displaying with the mark the words "Registered in U. S. Patent and Trademark Office" or "Reg. U.S. Pat. & Tm. Off." or the letter R enclosed within a circle, thus (R).(特許商標庁に登録してある標章の登録名義人は、その標章と共に、Registered in U. S. Patent and Trademark OfficeもしくはReg. U.S. Pat. & Tm. Off.または円で囲まれたRの字すなわち (R)を表示し、もって、同人の標章が登録済みであることを他に知らせることができる)

(R)が右肩に付くとどういうメリットがあるかについては、米連邦特許商標庁のBasic Facts About Trademarks (http://www.uspto.gov/web/offices/tac/doc/basic/index.html)が次のように説明しています。

→ 登録名義人がその標章の所有者であるという公告がなされたと同様の法的効果があり、無断使用した者が登録商標だったとは知らなかったという言い訳が封じられます。

→ 登録名義人がその標章の所有者であり、かつ、登録されたモノ・サービスにつきその標章をアメリカ合衆国内の全域にわたって排他的に使用できる権利のあることが法律上推定されます(したがって争いとなった場合、商標権者が自分の方で立証する必要はなく、相手が立証の負担を負うことになります)

→ その商標に関する訴えを連邦裁判所で起こす資格が認められます

→ この登録に基づいて外国での登録申請をすることができます

→ この商標が登録されている旨を税関当局に届け出ることで、商標権を侵害する外国産品の輸入を阻止するよう求めることができます

ただ連邦法上の登録商標として認めてもらうためには、複数の州にまたがってその商標が使われてきたという実績があるか、これからそのように使う予定のあることが必要です。また、あとで説明する、慣習法上の商標権が既に一部地域で先に認められているケースでは、いくら連邦法上の登録商標と認められ、マルアールが付されたところで、その商標までは排せないという限界があります。

わが国の場合は、さきに説明したとおり、(R)をつけるかは法律上の要請ではないものの、ともかく登録されていれば、登録商標の権利者は、指定されている商品について登録の日から10年間、独占使用権を持つことができます。つまり他の人が同一または類似の商標を使うのを排除できるということです。

★ TM (=trade mark)は未登録の商標

TMはtrade markの省略形であり、これが右肩に付されている商品は、登録商標ではないけれど、商標なのだから尊重してくれと主張していることになります。

わが国の場合、登録はされていないけれど、商標として通っているものについては、不正競争防止法で保護しています。ちなみにこの不正競争防止法は、なかなか強烈で、通常、商標権の効力は指定商品またはサービスとの関係に限定されるのに、異業種での使用例までカバーし、あの有名ブランドの「シャネル」を使ったラブホテルを敗訴させたりしています。

アメリカの場合、一定地域で一定商品について使われている結果、そのマークがついている商品はどこそこ会社の商品と認識されるようになると、慣習法上の商標権が成立し、類似品を排除できるようになります。こうした商標権は、common law trademarks として知られています。

誰がどういう場合にTMをつけて使えるかについては、さきほど引き合いに出した米特許商標庁の手引きでは、登録の申請をしているか否かと無関係に、自分が権利者であることを一般の人々に知らせるため、TMというマークを使えると言っています。

こうした common law trademark は、別段、商標の右肩にTMなどを付けなくても成立しますが、付けていれば、積極的な権利主張としての効果を期待でき、あとで争いになったときに、「もともと自分たちの商標だという認識がなかった」という不利益な判断がされることを防げます。ですから、登録に至っていなくても、一所懸命にTMをつけるわけです。

ただ、その場合の効力の及ぶ範囲は、一定地域に限定されますから、ハワイ州のオアフ島内で通用しているAlohaブランドがあるとした場合、この慣習法上の商標権をもって、マウイ島内で通用している別の Aloha ブランドを排除することはできないとされています。

州全体にわたって商標権の効力が通用するようにするためには、州政府への登録が必要です。登録すれば、state registered trademark として、以後、州の全域にわたって、類似商品を排除できるようになるものの、最初から州内の別の地域で既に同一ブランドが成立している場合は、それに「勝てません」。ですから、オアフ島でAlohaブランドを使っていた会社が州政府に登録したことを盾ににマウイ島の会社にAlohaの使用をやめろとは言えないということです。これは連邦法上の登録商標も同じで、さすがにこの手の「先客」には勝てません。

また州政府に登録されている商標にはマルアールの表示は認められません。マルアールが使えるのは飽くまでも連邦政府に登録されている商標だけです。

なお、商標の右肩に上付き文字 (superscript)でTMと入れることから、この表示は、superscript TMとも呼ばれています。

★ サービスマーク (SM)、商号、そして営業表示との違い

上で見てきた商標 = trade markは、有形の商品に付して、どこが提供元かを明らかにするものですが、これに対して、service markは、航空会社のマークのように無形のサービスが誰によって提供されているかを示すものです。わが国の例で言えば、ヤマト運輸のクロネコなどは典型的なサービスマークです。

ただ、SMは、商品に付される商標のTMと同じで、未登録のものに付されるマークです。登録されていれば (R) が使われます。例えば、TOEIC(R) がその例です。

商標 = trade mark が商品の出どころや信用を表すものであるのに対して、商号 = trade nameは、事業の主体を表すもの、要するに会社名のことです。商号が名称を意味するということは、書けて読める必要がありますから、商標と異なり、図形や記号を商号とすることはできません。

もう一つ、商号と混同されるものとして、営業表示 = business nameというものがあります。 例えば、知人が経営している会社にグローバルダイニングというのがありますが、この会社は、「ゼスト」「モンスーンカフェ」「ラボエム」「権八」というチェーンを展開している他、高級レストランとして、「ステラート」などを経営しています。この場合、グローバルダイニングが商号で、実際の店舗での営業を示す「ゼスト」などが営業表示に当たります。

★ まとめ

まとめておきますと、有形の商品に付される(R)は登録商標であることを、TMは未登録商標であることを示すということです。また、SMは無形のサービスにつきその提供元に権利があることを示すマークであり、登録されれば、これも(R)に置き換えられます。商標と混同されがちな「商号」は、会社の名称を表すマークである点、商品に付されるマークを意味する商標とは区別されるということです。最後に、商号と混同されがちな「営業表示」は、企業が経営している個別のオペレーションないしは営業の表示を指す言葉であり、経営母体の企業の名称である商号とは違うものだということです。


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Comments

よくわかりました。ありがとうございます!

Great work!
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日向様の主だったブログ記事にウェブログ図書館( http://library.jienology.com/ )からリンクを張りました。
各記事は実践的でたいへん勉強になります。

[返信]

図書館の「蔵書」に採用されて、光栄に思います。図書館、拝見しましたが、世の中の雑多なものも
一貫した選別眼でよりわけていくと、いいコレクションができるんですね。感心しました。

これからも採用していただける記事を目指して、頑張ります。どうぞよろしくお願いします。

日向

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