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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2005年8月27日

AgoとBeforeの違いは何か?

ライティングの授業で受講生に自分が書いたものを発表してもらうと、agoとbeforeの使い分けが苦手という人が多いものです。例えば、「ご注文の品は3日前に発送いたしました」と言っているつもりで、Your order has been shipped before three days.(正しくは、当然、Your order has been shipped three days ago.です)と書いてしまったりするのです。そこで、きょうはこの使い分けを確認しておきます。

Agoを使うべきところでBeforeを使ってしまうという誤用は、何と1936年が初版という、T.J. Fitikidesの古典的名著 Common Mistakes in English (Longman)でも取りあげられていますから、「歴史と伝統のある誤用例」と言えそうです。

そのFitikidesがどう説明しているかと言うと、こうです。

Don't say: I saw your friend before two weeks.
Say: I saw your friend two weeks ago.

そして、解説はこうなっています。We use ago in counting from the time of speaking to a point in the past: half-an hour ago, three days ago...We use before in counting from a distant to a nearer point in the past; Napoleon died in 1821―he had lost the battle of Waterloo six years before.

つまり話している時点から過去の一定時点までさかのぼる場合にagoを使うのであり、今から30分前であれば、half-an hour ago、今から3日前であれば、three days agoという具合にagoを使うということです。

そして、beforeを使うのは、過去を語る際に、より古い時点から下って行く場合で、「ナポレオンが死んだのは1821年。彼がウォータールーの戦いでやぶれたのはその6年前になる」と言いたいなら、Napoleon died in 1821; he had lost the battle of Waterloo six years before.というふうにsix years agoではなく、six years beforeという言い方になるという説明です。

余談ですが、この本は2000年に版が変わっていますが、その際、1821年のうしろのセミコロンがカンマになってしまっているのに関係者は誰も気づかないようです。カンマ単独では二つのセンテンスを結ぶことはできませんから、Napoleon died in 1821, he had lost the battle of Waterloo six years before.では、誤用となってしまいます。亡きFitikidesさんがかわいそうでなりません。

★ 現時点からの逆算ならago、過去の一定時点から逆算ならbefore

Nigel D. TurtonのABC of Common Grammatical Errors (Macmillan)、Longman Dictionary of Common Errors、そして、Michael SwanのPractical English Usageと、どれを取っても、現時点からの逆算ならago、過去の一定時点から逆算ならbeforeといった格好で説明していますが、こういったときは、図解がいいんだと感じさせるのが、Michael SwanのBasic English Usage (Oxford University Press)です。

次の例文をご覧ください。

Two years ago, I visited my home town, which I had left two years before.(2年前に実家のある町を訪ねましたが、町を出たのはちょうどその2年前になります)

このイメージを伝えるため、以下のようなタイムラインを示しています。

left           visited           NOW
●_________●_________●
↑             ↑_________|
↑ _________|   two years AGO
   two years BEFORE

今から何日前、何年前ならago、過去の一定時点から何日前、何年前ならbeforeという構図が頭にはいりやすい、いい図だと思いませんか。

★ Beforeのもう一つの顔

上で見た、agoとの比較で論じられるbeforeは、常にI visited my home town two years ago.のように、(1)単純過去の動詞とくみ合わさり、また、(2)two yearsその他時間の表現もかならず入っています。

ところが、これとは、別に、ただ漠然と「以前に」または「これまで」と言いたい場合もbeforeが使われます。

例えば、

I have never seen snow.(私はこれまで雪を見たことがありません)

がこれに当たります。よく見るとおわかりのとおり、(1)現在完了の動詞とくみ合わさっており、また、(2)two yearsといった時間の表現が入っていません。この二点において、agoとセットで論じられるbeforeとは性質を異にしています。

もう一つこの種のbeforeを使う典型例を挙げておきましょう。見知らぬ者どうしがちょっと言葉を交わすきっかけを作るためにbeforeを使う例です。

Haven't we met before?(どこかで会ったことありません?)

この言い回しは、古典的と言っていいぐらいのpick-up line(軟派するときの決まり文句)として知られています。なお、自分ではこんなこっぱずかしいセリフを口にできませんが、世の中よくできたもので、こういったセリフを臆面もなく使えるのが、結構もてたりするものです。女性の警戒心を解く効果があるらしく、特にインテリ風のがこういう馬鹿臭いセリフをはくと受けるようです。

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Comments

ご回答、どうもありがとうございました。
ago と before につきましては、生徒達も納得していました。
ただ、beforeの奥深さに、そこまで覚えなければいけないのかぁ厄介モノめ、と顔色に滲み出ており....でも、何度でも説明します。これからもどうぞよろしくお願い致します。

[返信]

ご苦労のほど、お察ししますが、使う言葉が違う人々は発想も根本的に違うんだと感心し、おもしろがってもいいようのではないでしょうか。言葉を言葉だけの問題として捉えるより、それを使う人々のセンスや心理にまで思いを致すことで、言葉のありがたみ、特に自国語の特異性にまで目を向けられるのかとも感じています。

中高で英語教員をやっております。
生徒からの質問に、文法書では解決できない事がある時に、こちらのサイトを活用させて頂いております。豊富な知識量、丹念な調査、頭があがりません。少しずつでも、進歩できればと思っております。
さて、別宅の方を先に訪問させて頂いたのですが、あちらでは、過去のアーカイブや、検索機能はないのでしょうか。

[返信]

「りったん」さんのようなわが国の英語水準の底上げに直結する仕事をされている方、大歓迎です。
  お尋ねの件、別宅の方は使い勝手が悪く、アルクさんのご好意に甘えて、こちらに来たといういきさつがあります。ですので、アーカイブということでは、こちらの方が便利です。

  検索機能の方はまだ十分でないようで、担当者に申し伝えます。
 次善の策としては、検索したい語句をGoogleの検索欄に入れた上、site:eng.alc.co.jp/newsbiz/hinata/ と入れて、絞り込めば、ひとまず用は足りるのではないでしょうか。

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