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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2005年8月23日

英文契約書の読み方(完):末尾文言と署名欄

きょうは契約書の最後のブロック、契約書本文をしめくくる文言のところと、署名欄を見て、契約書の話をひとまず終えたいと思います。この部分は、初回にも紹介しましたが、典型的にはこんな格好になっています。

IN WITNESS WHEREOF, the parties hereto have caused this Agreement to be executed by their duly authorized representatives as of the date first above written.(以上の証として本契約当事者は頭書の日付をもって正当な権限を付与された代表者に本契約書の調印を行わせた)

きょうは契約書の最後のブロック、署名文言のところと、署名欄を見て、契約書の話をひとまず終えたいと思います。この部分は、初回にも紹介しましたが、典型的にはこんな格好になっています。

IN WITNESS WHEREOF, the parties hereto have caused this Agreement to be executed by their duly authorized representatives as of the date first above written.(以上の証として本契約当事者は正当な権限を付与された代表者に頭書[トウショ]の日付をもって本契約書に調印させた。)

IN WITNESS WHEREOFというフレーズで使われているwitnessは、古い英語でのproof(証拠)のことで、whereofも、やはり古い英語で、of the thing that has been referred toであり、ひとまず書き換えると、in proof of the thing that has been referred toになります。そして、ここでのthe thing that has been referred to(言及の対象となっていることがら)が何かと言えば、この末尾文言が登場するまでの契約書の記載事項のことですから、上の訳文のような意味になるということです。

★ 末尾文言のバリエーション

イギリスの契約書などは、IN WITNESS WHEREOFでのIN WITNESSの部分に代えて、As witness whereof the parties hereto have set their hands[set their handsは調印ということ]というふうにAS WITNESSを使ったりしています。

このほか、さっぱりしたバージョンとしては、こういうのがあります。

Each party acknowledges that he or she has read and understood the terms of this Agreement and accordingly sign below.(各当事者は、本契約の諸条件を読みかつ理解した上で以下のとおりここに署名します)

一方から契約内容をレターの形式で送り、相手が同意を証する署名を付して完成する簡便な形式もありますが、普通の英語で書くスタイルではこんな感じになります。

Your signature below will create a binding contract between us.

Sincerely yours

このあとに売主の会社名、[署名欄]、署名する人の氏名/役職名、そして会社の所在地が4行に渡って続きます。

Agreed and accepted:

このあとに買主の会社名、[署名欄]、署名する人の氏名/役職名、そして会社の所在地が4行に渡って続きます。

★ 条約のスタイル

以前に書きましたとおり、国際条約はもともとは国内私法のやり方を流用していますから、末尾文言も普通の契約書とそうは変わりません。

まずマーストリヒト条約はこうなっています。

Done at Maastricht on the seventh day of February in the year one thousand nine hundred and ninety-two.

日米安全保障条約はこうです。

IN WITNESS WHEREOF the undersigned Plenipotentiaries have signed this Treaty.

DONE in duplicate at Washington in the Japanese and English languages, both equally authentic, this 19th day of January, 1960.  ← このin duplicateという言い方は、和文契約書によくある「この契約の成立の証として本書二通を作成し、甲乙各自一通を保有する」を英訳するときに使えます。例えば、IN WITNESS WEHREOF, this Agreement has been executed in duplicate, with the parties hereto holding one copy each.というふうに訳せます。

ちょっと古いところでは、1854年の日米和親条約(神奈川条約)は、In testimony whereofと同様、In witness whereofのバリエーションである、In faith whereofを使っている点が目を引きます。

In faith whereof, we, the respective plenipotentiaries of the United States and the Empire of Japan, aforesaid, signed and sealed these presents. ← 最後のpresentsは古い英語で書面のことを指し、今でも委任状の頭の所にある定型句、Know all men by these presents(本書面をもって以下の事項を知らせるものとする)にこれが残っています。

Done at Kanagawa, this thirty-first day of March, in the year of our Lord Jesus Christ one thousand eight hundred and fifty-four, and of Kayei the second year, third month, and third day.

★ 署名欄

署名欄の基本形は、以下のとおり、会社名を入れてから行を変えて、次の行に署名欄を入れ、その前にBy:を入れます。その下がタイプ印字の氏名と役職名になります。御丁寧に氏名や役職名の前にName:、Title:と入れているケースもありますが、たしかにBy:と入れているのですから、バランスから言えば、あったほうがいいのかなとも思いますが、このあたりは趣味の問題です。コロンが入っているか否かは任意です。

One Corporation
By: [ここに署名します]
Taro One
President and CEO

Two Corporation
By: [ここに署名します]
Jiro Two
President and CEO

これに加え、正式のものはAttestとかWitnessed byといったことを書いた署名欄をもうけ、そこの立ち会い人がサインするようになっています。訳すなら「立会人の署名」で十分です。

★ 契約英語の本

お勧めできる本として以下のものを挙げておきます。

佐藤孝幸著『英文契約書の読み方』(かんき出版) ← 普通、「権原」と訳されているtitleにつき、何か日本語として座りが悪いから「所有権」のほうがとおりがいいとおっしゃるぐらいで、弁護士に珍しい普通の言語感覚に好感を持てます。本自体もわかりやすく書かれています。

長谷川俊明著『法律英語のカギ』(東京布井出版)← 法律英語に関わろうとする人がまず読むべき本だと思います。あと、英語で会社のしくみを語れるようになるためには同じ出版社から出ている『法律英語の事典』の前半部分が重要です。ただ、シリーズの3冊め以降はただ連載をまとめただけという感じでありがたみがありません。

中村秀雄著『英文契約書作成のキーポイント』(商事法務研究会) ← 丸紅の法務の方が書かれているだけあって、契約書の綴じ方、署名欄のあり方、イニシャルの入れ方など、他の本には書いてないような知識が得られます。

山本孝夫著『英文契約書の書き方』(日経文庫) ← 既に長谷川本程度の知識のある方に向いている実用書です。

英語では、イギリスものになりますが、Chartrand, Millar, WiltshireのEnglish for Contract and Company Law (Sweet & Maxwell)が学習者向けの作りになっていて、勉強になります。アメリカものでは、新刊でこれと言うものにまだ出会っていませんが、古いものでは、初回にご紹介したSign Hereが傑作です。サンプルの契約書につき、Delete--proves nothing. Delete--excess verbiage. Translates: if either party dies, his heirs are still stuck with this contract.といった形で解説をしており、「なーんだ、その程度のことか」と契約書に対する妙な「おそれ」を解消するのに役立つはずです。

法律全般にわたる入門書としては、Jay M. FeinmanのLaw 101--Everything you need to know about the American legal systemが秀逸です。出版社はなぜかOxfordです。あと、Debra Lee他によるAmerican Legal English--Using Language in Legal Contexts (University of Michigan Press)も、教材としては使いにくかったのですが、個人で法律英語に対する感覚を磨こうとするなら役立つような気がします。

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自分自身、法律の専門家ではありませんが、耳学問をフル活用して、専門家と一般の方との間に立って通訳している気持ちで書きました。わかりやすく説明できたか心配です。まずまずだったと感じられた方、人気ブログランキングに一票を投じていただけるとうれしい限りです。どうぞよろしくお願いします。人気blogランキングへ


Trackbacks

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»komao: 法律文書の翻訳 - 2005年8月23日 13:38

最近、契約書の翻訳の仕事をしました。日向清人先生のブログで契約書の読み方がタイム


Comments

法律文書づけの司法書士です。日本にも外国文の文書が飛び交うようになり,議事録,各国の役所や公証人文書の翻訳をしなければなりません。英国と米国の表現の違いに戸惑っています。

[返信]

おっしゃるとおり、イギリス風はまた独自でとまどいますね。古い方の有斐閣の英米法辞典がなかなか便利です。

目下、法律翻訳勉強中です。「法律英語」のカテゴリーをすべて印刷して参考書代わりに使わせていただこうと思います。
推薦図書も参考になりました。ありがとうございます!

[返信]

お役に立っているようで、うれしく思います。秋ぐらいには用例をまとめた上、ブログの記事をも織り込んだものを「法律英語」として出版できそうです。楽しみにしていてください。

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