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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2005年9月 3日

知らずに陥るAlready, Still, Yetのワナ

きのうは近所の焼き鳥屋さんに行きました。まわりに外国人が多い地域だけに、異人さんのボーイフレンドと日本人女性のカップル(なぜか逆のケースは皆無)とカウンターで隣合わせにもなったりしますが、どうしても変な英語だと耳に入ってきてしまいます。

きのうのお姉さんは、いまどきどこで買うのと思いたくなるようなボディコンが不思議でしたが、流暢な英語を話す人でした。ただ、惜しかったのが、お店の人が「よろしかったら、ご注文うかがいます」と言ったのをボディコン嬢が Have you chosen already?と訳したこと。単にHave you chosen?とだけ言えばいいのに、この言い方では、(以下をお読みくだされば、わかるとおり)「もう、決めたの?えーっ!」というニュアンスになってしまいます。ちょっときれいな人だっただけに、余計、惜しまれます。

考えてみると、けっこう、このyetとalreadyの使いわけに苦労している人がいるものです。あるいは上の例のごとく気づかぬまま失敗をしている方もいらっしゃいます。そこで、似ているがためにまぎらわしい、alreadyとstillとyetという3つの副詞の使い分けをまとめてみました。

★ Already, stillとyetの共通点

例えば、営業報告書はまだかと待っている上司がその部下にI suppose you've already finished the report.と言ったとしましょう。データ待ちで、まだ手を着けてもいないということであれば、部下は、I'm afraid I haven't started yet. I'm still waiting for the final figures.と言うことでしょう。

以上のalready, still, yetは、いずれも「意外にも」というニュアンスを含んでいることで共通してはいますが、"before now"という意味のalreadyはそこで語られるコトを済んだ話、しかも意外に早く済んだ話として扱うときに使います。これに対して、"even now"という意味のstillは、まだ済んでいない話を扱います。しかし、両者とも過去または現在に軸足を置いており、将来に目を向けていない点で、yetと違っています。つまりyetの場合、基本的な意味はstillと同様、意外にも"even now"なのですが、stillの方が「今なお続いている」という意味のeven nowなのに、yetの方は、「今なお実現待ち」という"even now"であり、そこで語られるコトは、これから話です。

★ Alreadyの研究

Alreadyを使うのは、レポートを既に作成したという話のように、過去に起きたことを現在の問題として取りあげながら、「実現済みだから、もうその話は済んだ」と言いたい場合です(しかも、早めに済んだというニュアンスがあります)。ですから、I've already drunk my lifetime allotment of alcohol.(酒はもう一生分飲んだよ)と言っている人は、言外に、十分飲んだから、もうこれ以上は結構と言っていることになります。

間違いやすいのは、同じくby this timeないしby that timeつまり「現時点までに、その時点に至るまでに」という意味を持つyetとの使いわけです。

このalreadyとyetの使いわけるためのポイントは、二つです。第一に、alreadyは、She has already finished the report.のように、もっぱら肯定文で使うということです。言い換えれば、She has finished the report yet.という言い方はしないということです。第二に、yetの方は、She hasn't finished the report yet. それとHas she finished the report yet?のように否定文や疑問文で使うということです。簡単に言ってしまえば、(少なくとも最初のうちは)yetは否定文と疑問文におけるalreadyの代用品と考えると楽です。

疑問文でalreadyを使わないわけではないのですが、alreadyは「済んだこと」を取りあげるのに対して、yetはまだ実現しておらず、したがって「これからのこと」を言うのに使うというニュアンスの差を反映して、例えば、Haven't you already met Ayako-san? I thought you did last week.と言っている人は、「彩子さんにご紹介するという件は済んだものとばかり思っていました。それは驚いた。てっきり、先週、引き合わされたと思っていましたよ」と言っているようなものです。これに対して、普通のケースである、Haven't you met Ayako-san yet? Well, let me introduce you to her.では、「これからのこと」が念頭にあるわけですから、「まだ彩子さんへのご紹介は実現済みではありませんでしたっけね。それでは、早速お引き合わせしましょう」というニュアンスになります。

言い換えれば、alreadyは普通、済んだことを取りあげる場合に使うツールですから、これを疑問文で使うとなると、「たしか、この件は済んだことですよね」と相手に確認を求める感じなのに、yetは「これからのこと」を語るツールですから、単に教えて欲しいんですが、という感じになるということです。

何であれ、ここでは、alreadyのニュアンスを説明するために疑問文を引き合いに出しただけで、実際には、肯定文ならalready、否定文と疑問文のときはyetという枠組みで基礎を固めることが先決です。

次にalreadyを入れる位置ですが、3カ所あります。

(a) 動詞一つならその前です。I already sold 1,000 units this month.ただし、BE動詞との組み合わせでは、そのあとです。She was already drunk by the time I got to the party.

(b) 助動詞+動詞という組み合わせになっているときは、助動詞と動詞の間に来ます。I've already sold 1,000 units since the beginning of this month. もし、We have already been selling these items over the past two years.みたいに助動詞の部分がhas been/have beenといった形のときはその間にはさみます。

(c) 格別alreadyを強調したいときはセンテンスの最後に持ってきます。例えば、予定より早くお客さんが来社したことを告げられた人などは、Don't tell me they're here already!などと言うわけで、このようにalreadyを最後に持ってくると、「えーっ、そんなに早く」という感じが強く出るものです。

このalreadyと組み合わせる動詞については、I have already finished the report.のように現在完了形を用いるのが原則です。イギリス英語では現在完了形を使うが、アメリカ英語ではI already finished the report.のように過去形を使うという解説も見ますが、同じアメリカ人でも言葉にうるさい人や教育のある人は大体において現在完了形を使っているものです。この点、FirstenとKillianという二人のアメリカ人の先生みずから、Troublesome Englishという本の中で、話し言葉では、近年、We've already seen that movie. / We've seen that movie already.をWe already saw that movie. / We saw that movie already.としたり、あるいは、We haven't seen that movie yet.をWe didn't see that movie yet.とする傾向が一般化しつつあるが、Most educated speakers of English tend to feel that using the present perfect with all of these words is "better English." (教育のある英語の話し手の大部分がこれらの表現のすべてにつき現在完了を使う方がより「英語として好ましい」とする方に傾くものだ)と明言しているぐらいです。

★ Stillの研究

Stillの意味は、even nowつまり「前からそうで、今も続いている」ということです。例えば、「彼女は今でもXYZ社で働いていると思うよ」と言いたいなら、I think she still works for XYZ. という風に使います。訳を考えると、「今なお」に加え、この記事にコメントしてくださっているchocoさんが挙げられている「?に変わりはない」など、実によくこのことばのイメージを伝えていると思います。

このstillが入っていると、多少なりとも、「へえ、まだそうなんだ」といった感じの意外だなというニュアンスが含まれた言い方になります。またこのstillは、「ずっとそうしている、そういう状態が続いている」ことを強調するため、よく現在進行形とセットで使い、I'm still waiting for management approval.(いまだに経営陣からのゴーサインを待っているんだよ)あるいはAre you still waiting for management approval? と言ったりするものです。

英和辞典だと、stillもyetも共に「まだ」という訳になっているので、まぎらわしい限りです。しかし、stillはある状態が続いているときに、その状態を指して言うものであるのに対して、yetは、その「ある状態」が今もなお実現待ちとなっている点で決定的な違いがあります。例えば、「その人が上司になってから3年経つけれど、今なおその上司は謎めいている」と言いたい場合を考えてみます。こういった場合は、わからないという状態が続いていることを言いたいわけで、「わかるという状態が実現しておらず、今後に待ちたい」と言っているわけではありませんから、I've been working for him for three years now, but he is still a mystery.という表現のしかたになります。

ここで「今なお、彼を理解できないでいるが、今後理解できるようになることを期待する」と言いたいなら、「理解したという状態が実現しておらず、今後に待ちたい」ということになり、yetを使える場面になりますから、後段について、yetを使って、I haven't yet understood him.と言うことができます。

Stillを入れる位置は2カ所です。

(a) 主語と動詞の間。I still haven't located the file I need. (必要なファイルをまだ見つけ出せないでいるんだ) ただし、BE動詞を使うときは、BE動詞のうしろになります。ですから、「日本経済は今なお長く続いた不況からの脱出の途上にある」と言いたいなら、Japan is still in recovery from a prolonged recession.であり、Japan still is...ではありません。

(b) 助動詞+動詞という組み合わせになっているときは、助動詞と動詞の間にstillを入れます。I am still looking for the file I need.

Stillを使う上でありがちな失敗は、stillの1語でいいのに余計なnowを入れて、still nowとやってしまう例です。例えば、「私は今でもこのタイプの音楽が好きです」と言いたいであろう人が、I like this kind of music still now.と言っているのを聞きますが、これは二重に間違っています。まず上で説明したとおりstillは入れる位置が決まっています。次にstillにはもともとnowという意味が入っていますから、still nowはおかしな言い方になってしまいます。正しくは、I still enjoy this kind of music.です。

★ Yetの研究

Yetを使うのは、Have you finished it yet?のように、予定どおりにことが運び、済んだかを尋ねる場合と、She hasn't finished it yet.のように、予定どおりにことが運ばず、それが済んでいない旨人に告げる場合です。このことからひとまずyetは疑問文と否定文の場合に使うもので、肯定文では使わないと言えます。

しかし、何よりも大事なポイント、使いわける上で心得ておくニュアンスは、yetを使うのは、上で述べたとおり「まだ実現していないことにつき、実現待ちになっている」ときだという点です。Have you finished yet?には、「何だ、まだ済ませていないのか。早くやってよ」という気持ちが表れていますし、She hasn't finished it yet.には、「もう済ませたかと思っていたのに、まだやっている。いつ済むんだ」という話し手の気持ちが反映されています。

Yetでおもしろいのは、I haven't finished it yet.のように、「何かをすること」を語る場合は、現在完了形を使うのに、I don't know yet.のように「何かであること」を語る場合は、現在形を使うという独特のパターンがあることでしょう。ですから、人に何かの結果が出たかを尋ねるのであれば、Do you know the result yet? になりますし、答える方も、知らなければ、I don't know the result yet.になります。

また、ちょっと注意を要するのは、何かが'has not yet happened"と言う代わりに、"has yet to happen"という言い方をすると、そこでのhappenの対象は必ずしも期待されていない、いや、おそらくないという思い込みがあることがうかがわれます。例えば、誰かが私に、ワインを飲ませてくれて、I have yet to meet someone who doesn't like this.と言ったら、「これがまずいだなんて言う人がいたら会わせてもらいたいものだ」というふうに聞こえます。

Yetを入れる位置は4カ所です。

(a) 普通はセンテンスの最後です。Have you finished your report yet? 

このようにセンテンスの最後に来ることから、同じくセンテンスの最後に置かれることもある、alreadyと混同されがちですが、alreadyは「えっ、もう?」という意味であるのに、yetは「まだ、?でないのか」という意味ですから、この点を意識しておけば失敗は防げると思います。例えば、予定より早くお客さんが来たことを知らされた場合に、「えーっ、もう受け付けに見えているってことですか」と言いたいなら、Are they down there at the reception already!であって、...at the reception yet.とはなりません。

(b) 否定文の場合、話し言葉では、普通、She hasn't finished yet.のように、センテンスの最後に入れます。疑問文の場合と同じです。

(c) しかし、書き言葉では、It should be noted that it was not yet five o'clock when they started drinking.(彼らが飲み始めたのは5時にもなっていなかったことに注意を向けるべきだ)というふうに、notのすぐあとにyetを持ってくることが行われます。

(d) また、whyやwhetherと組み合わせるときは、その前に入ります。I haven't made up my mind yet whether this is a good or a bad thing. (これがいいことなのか悪いことなのか決めかねています) / I haven't figured out yet why the government is determined to press on with the postal reforms.(なぜ政府が郵政改革を進めると気負いこんでいるのか、いまだに理解していません)

追記:

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Comments

「still I love you.」という文が恋愛小説に出てきて、気持ちの細かいニュアンスが理解出来ませんでした。ケンカしているわけでもない、遠距離恋愛中の恋人同士の会話なのですが、「僕はまだ君を愛しているよ」と訳すと何となく、ふられた男が元彼女に「まだ愛してる」って言ってるみたいなニュアンスに感じられて不可解だったんです。日本語なら、通常、終わったと思われることや意外なことに対して「まだ」を使うのに対し、このシュチエーションでは「(遠く離れているけど、)僕が君を愛してるという気持ちに変わりはない」という継続の意味なのですね。

[返信]

こんにちは。

「?に変わりはない」という訳、ことの本質をよく表していますね。本文をこれで補充させていただきます。

なお、普通、I still love you.という言い方をするわけですが、ここでは、stillが動詞loveを修飾しています。これに対して、Still I love you.みたいな格好にすると、stillがI love youというセンテンス全体を修飾するという話をどこかで読みました。してみると、ますます、chocoさんの、「?に変わりはない」という訳がぴったりする感じがします。

味気ないビジネス英語のブログに恋愛小説を読まれるような方が来てくださるのはうれしいことです。これからもどうぞよろしくお願いします。

日向清人

いつも興味深く拝読させていただいております。明瞭で美しく品のある英語を書きたいと、仕事を通じ日頃奮闘している私にとって、毎日チェックするブログです。印象に残るのは、コロン、セミコロン、コンマ違いの貴記事です。印刷して、手元に置いています。おかげで、コロンを使うときは、「即ち、という関係になっているか?」、またセミコロンでは「前後の文章が対等の関係になっているか?」と心でつぶやきながら、使うようになりました。
昨年の先生のNHKの「ビジネス英会話」も、大変為になりました。調子づいて、ある月、テキスト巻末の"Writers’ Workshop"の和文英訳に挑戦して、佳作に選ばれたときは、嬉しかったです。
ただで読ませていただくのは、申し訳ないようなブログです。人気ブログランキング、もちろんクリックいたしました。

[返信]

毎日チェックしてくださっているとのこと、うれしく思います。ゴミを拾ってうんちくを傾けている感じもあり、「明瞭で美しく品のある英語」に役立つかは心配ですが、セミコロンの記事が役立ってよかったことです。考えてみれば、私にしては、背伸びした記事かも知れません。

それと人気ランキングのためにクリックしてくださり、ありがとうございます。登録だけして放ってあったときは、最下位クラスだったのが、こうしてみなさんにご協力をお願いするようになってから、一気にベスト30に急上昇です。ありがとうございます。

今後ともクリックしていただけるような記事を書けるよう頑張ります。応援、よろしくお願いします。

日向清人

追伸:nofumoさんのブログ拝見しました。バヌアツに行かれたんですね。きょうの記事(9月5日の「タックスヘイブンは税金天国か」に名前が出てくる国なので、あっと思いました。

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