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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2005年9月30日

Dueという名の小さな力持ち

ビジネス英語でよく出てくる単語にdueというものがあります。ビジネスとあまり縁がなくとも、形容詞であるdueをowing toのような副詞同様に使い、動詞のあとに持ってきたり、文頭に持ってきたりしてはイカンという話を通じて、なじみがあることでしょう。つまり、「そのプロジェクトは資金不足のために中止となった」という場合に、The project was abandoned due to lack of funding.とか、Due to lack of funding, the project was abandoned.と言ったり、書いたりしますが、これが文法上よろしくないという話です。(ちなみに、ビジネス英語の世界では、普通、こんなことは気にしません)

もともとの意味としては、debtと同様、ラテン語のdebereから来ているようで、そこから、dueの意味は、「本来、そこに帰属すべきもの」に求められるようです。ですから、古来、正義とは何ぞやという話になると出てくる、give each one's due(本来その人に帰属すべきものがそこに納まるようにする)といった言い方がされ、あるいは、Give the Devil his due.(相手が悪魔だからと言って何でも否定していいものではなく、公平に扱うべし)といった言い回しがあるのでしょう。

ところでビジネスで現れるdueの使われ方を見ていると、二つ大きな用法があるようです。一つは「然るべき」という感じで、もう一つは「期限の到来」を表します。

★ 然るべきという意味合いのdue

然るべきという意味合いのdueが使われているケースとしてぱっと頭に浮かぶのは、ビジネス英語とは直接関係がないもののの、due process of lawというフレーズです。日本語でもこのままカタカナで使われていますが、適正手続の保障ということであり、然るべき手続を経てない限り人の生命・自由・財産は不可侵だとする人権保障の理念を表しています。

一方、注意義務の程度を表すときに、このdue careが良く出てきます。注意義務違反があって初めて過失ありとされますから、その意味で、過失責任の有無を判定する重要な基準です。

一口に注意義務と言っても、踏み切り番や電車の運転士のように、「その立場の人に対しては社会常識に照らしてこのぐらいの注意は要求してもいいんじゃない」というものと、落とし物を預かっている人のように、そこまで要求するのは酷で、「その人なりにきちんと処理したという程度でいいんじゃない」というものがあるわけで、法律の専門家は前者を「善良な管理者の注意」あるいは「相当の注意」と呼び、後者を「自己の財産におけると同一の注意」と呼んでいます。このうちの前者を言う場合に、due careということばが使われています。他にordinary careあるいはreasonable careとも言います。ちなみに後者に相当する英語はあまり見ないものの、slight careかslight degree of diligenceと称されます。

このdue careが企業関係で直接問題になる場面ではたいてい、due diligenceということばに言い換えて使われています。本来の意味は、「これだけのステップを踏めば相当の注意を尽くしたと言えるだろう」という注意義務の程度を指すことばですが、そこから転じて、「相当の注意義務を尽くしたと認めてもらうための手続」といった感じで使われています。

ですから、金融関係者や法務の関係者は、「今、何々のデューデリで大変だよ」といったことを言います。デューデリというすごい日本語には抵抗を感じますが、デューデリジェンス= due diligenceを縮めたものです。

何をやるかと言えば、合意による企業買収であれば、買収の対象企業の申告している「自分たちの財務内容はこうです、訴訟となっているものにはこういうものがあります、訴訟になりそうなものはこれです」といった事項につき可能な限りそれが本当かどうかをチェックするわけで、ここで手を抜くと、買収側の企業経営陣は、株主に対して負っている受託責任(みずから同意して仕事を引き受けている以上は、株主の信頼を裏切らず、常に株主の利益を考えて行動しなければならないという義務のことで、英語ではfiduciary dutyと言います)に背いたということで、損害賠償を含め、自分たちが責任追及の矢面に立たされてしまいます。

あと、強い調子で反対する場合のクッションとして、「僭越でございますが」という感じで入れる、With all due respect, I...でのdueも、この「然るべき」という意味で、「自分としては然るべき敬意を払っているつもりで、礼に欠けることがあってはいけないと意識しているが、やはり、こう思う」と言っていることになります。ただ、実際には、actuallyと同じで、反対意見の枕ことばとして気楽に使われており、深く考えた上で使われているわけではありません。

★ 期限の到来を示すdue

次に期限を表すdueは、簡単なところでは、秘書がボスに対して、「この件、いつまでですか?」と仕事の期限を訪ねる際のWhen is this due?に見られます。(この言い方はアメリカ英語独特だと聞かされたことがあるのですが、どうなのでしょう。イギリス英語の使い手は何て言うんでしょうか、こういう場合)

こういった「何々することになっている」という形でdueを使うパターンは、何々is due to do somethingという形または何々is due for somethingという形のいずれかです。つまり動詞で続けるなら、例えば、フライトの出発時刻の30分前までにはチェックインしたほうがいいよ」と言いたいなら、You'd better check-in at least 30 minutes before your flight is due to depart. ですし、名詞で続けて、「新型システムのリリースは10月半ばの予定だ」と言いたいなら、The new system is due for rollout in mid-October.になります。

また、端的に期限を表すことばとしては、支払期日または履行期日を表すdue dateという言い方もあります。

このような期限を表すdueと密接な関係があるものとして支払がらみのdueがあります。

★ 支払がらみのdue

支払がらみのdueは端的にはdue and payableという形で使われます。例えば、よくある例は、こんな感じです。

Unless expressly indicated otherwise, all payments due and payable by a Buyer shall be made within thirty (30) days of the due date.(特段の明文規定のない限り、売主の支払額にして、期限が到来しており、かつ、支払義務が生じているものについては、支払期日から30日内にこれを支払うものとする)

英文和訳の場合、due and payableは単に「支払うべきもの、支払を要するもの」という意味を訳出すれば十分ですが、しつこく2単語とも訳せという話なら、「期限が到来しており、かつ、支払義務が生じている」ということでしょう。(世の中、翻訳を頼む人の中には、単語数を数えて、文句をつける人がいるという話を聞かされましたから、ときには、こういったバカバカしい直訳をこなす技術も必要となることがあるのではないでしょうか)

ところで、こういった場合のdueを使いこなす上で知っておくと便利なのは、支払先を言うときはdue toを使い、支払元を言うときは、due fromを使うというコワザです。

誰に対して支払うべきものかを明らかにしたいときは、

All payments due to Seller hereunder shall be paid by check or wire transfer of immediately available JPN denominated funds.(すべて本契約上、本件売主に対して支払うべき金額は、直ちに現金として引き出しうる円建資金を小切手により、または電信送金により支払うものとする)

と言い、また、誰が支払義務者であるか、つまり支払元が誰であるかをはっきり示す形で言いたいときは、

All payments due from Buyer shall be made within twenty (20) days of the statement date.(すべて本件買主が支払義務を負う支払額については、請求書の日付から20日内にこれを支払うものとする)

という言い方を使えます。

こういったdue to/from式の用法は、辞典をひきひき仕事をしているうちは気づかないものです。辞典でdueを引くと、「当然支払われるべき」程度のことしか載っていないので、実際にはtoやfromを組み合わせることで「誰に対して」支払われるべきか、あるいは、「誰から」支払われるべきかを明らかにしていることにまで目が行かない感じがあります。こういった辞書からはわからない用法を日常的に使いこなせるレベルに達したところで、英語族の仲間入りをしたと認めてもらえるのではないでしょうか。

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