HOME英語ニュース・ビジネス英語
 
 


日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2005年9月10日

「料理を習うために」はfor learning how to cookか、to learn how to cookか。

目的を示すためには一般にto+動詞でもいいし、for+動名詞(動詞のing形)でもいいとされています。そうとすれば、「料理を習いにフランスに行きたい」と言いたい場合、以下の いずれでもよさそうな感じがします。ところが、(a)は間違いとされます。

(1) I want to go to France for learning how to cook. ← これは誤用例です。
(2) I want to go to France to learn how to cook.

★ ヒトの行為目的ならto+動詞、モノの使用目的ならfor+動名詞

この例は、Nigel D. TurtonのABC of Common Grammatical Errors (Macmillan)が取りあげている例ですが、問題は、なぜ間違いなのかという理由です。同書は、ヒトの行為の目的を示す場合は、to不定詞句を使うべしとする一方で、以下の二つの例を挙げて、(3)は駄目で(4)の形を使うべしと説いています。

理由ですが、モノの用途ないし使用目的を言うときは、This knife is for cutting bread.(このナイフはパンを切るためのものだ)に見られるとおりfor+動名詞だけれど、ヒトの行為の目的を言うときは、I'm going to the post office to buy some stamps.(切手を買うために郵便局に行ってきます)に見られるよう、to不定詞句を使うからだと説明しています。

(3) For testing the new microphone, I tried to record my voice. ← こちらが誤用例です。
(4) To test the new microphone, I tried to record my voice.

意味はどちらも「新しいマイクをテストするため、自分の声を録音できるか試してみた」です。

Seth LindstrombergのEnglish Prepositions Explained (John Benjamins Publishing)も同じような枠組みを示しています。いわく、forは「あるモノが何の役に立っているか」を言うときに使い、toは「ヒトの行為が何のため」かを言うときに使え、と。

具体的には以下の例のように、forを持ち出せる条件は二つです。第1に主語がモノであり、第2に前置詞の目的語がそれの機能を説明していることとされます。

(5) Chairs are for sitting in.(イスは座るために用いられる)

これに対して、toを持ち出せるための条件も、やはり二つで、第1に主語がヒトであり、第2に前置詞の目的語がその人の行為の目的を示していることとされます。

(6) I sat down to rest.(私は休むために腰かけた)

このLindstrombergの本がおもしろいのは、以下の例です。

(7) Here is a chair to stand on.(踏み台にするのにこのイスをどうぞ)

なるほど、ぱっと見たところ、toを使うための条件は「ヒト+その人の行為の目的」ですから、動詞standに対応する主語がchairというモノであるこのケースはおかしいのではないかとも言えそうです。ところが、この本では、(7)のHere is a chair to stand on.は、Here is a chair for you to stand on.を短く言っているだけなのだから、結局はヒトの行為について言っているのであり、問題はないとしています。なかなかうまい説明です。

ところで、「ヒトの行為目的ならto+動詞、モノの使用目的ならfor+動名詞」という枠組みは、Michael SwanのPractical English Usage (Oxford University Press)でも基本的に同じですが、ただ、somethingなどの不定代名詞がはさまっていれば、主語がヒトでもfor+動名詞を使ってモノの使用目的を語れるとし、次の例を挙げています。

(8) I need something for killing flies.(何か蠅たたきのようなのものが欲しい)

その一方で、「何か?できるような道具はないかな」という具合に、人が何かのために一定の道具を使おうとしている場面では、以下のように、to+動詞を使う方向に傾くものだとしています。

(9) I must find something to kill that fly.(あの蠅をたたくのに何か見つけなくちゃ)

★ 前置詞toと前置詞forの基本的意味

Lindstrombergの本が勉強になるのは、普通はあまり踏み込まない個々の前置詞の本質的意味を探ろうと努めているからです。例えば、forの根底には、ear-markingつまり「一定の用途を念頭に置きながら、取り分けておくこと」という意味があるので、forの目的語とされるものは、何らかの形で何かを受け取っている、あるいは何かがたどり着く先というニュアンスを見てとれるといった趣旨の説明を展開してくれるのです。対するtoの方はどうかと言えば、単にAとBとの結びつきを示すにとどまるとしています。

この感覚を説明するために挙げられている例は以下の二つのセンテンスです。

(10) Robin is good to Dale.
(11) Robin is good for Dale.

この二つを比べた場合、(9)でのto Daleは、Robinが誰に対して親切なのか、つまり親切な態度が向けられている先がどこかを示すにとどまるのに、(10)でのfor Daleは、そういった親切のおかげで、Daleにとり何らかのプラスアルファのあることが示されていると言います。となると、訳を考える上でもその差を示さなければなりませんから、こんな感じになるのではないでしょうか。

(10) Robin is good to Dale.(ロビンはデイルに対して親切に接している)
(11) Robin is good for Dale.(ロビンはデイルに対してよくしてやっている)

この延長線上で上の(8)と(9)をもう一度ながめてみると、(8)のI need something for killing flies.は、「自分が欲しいのは、killing fliesを果たす上でプラスとなるもの」というニュアンスを見て取れるのに対して、(9)の I must find something to kill that fly.は、ともかくkill that flyが可能なものでありさえすれば何でもいいから、そういったものを見つけなくちゃというニュアンスが感じられます。

もう一つ、forとtoのニュアンスの違いを知る上で格好の例があるのでご紹介します。Randolph Quirkらの、A Comprehensive Grammar of the English Language (Longman)に出ている例です。

(12) He left to London.
(13) He left for London.

(14) Is this the train to London?
(15) Is this the train for London?

ここでの (12)と(14)でのtoは、目的地に着くことが前提になっている点、forと違うと言うのです。なるほど、こういった視点で考えると、toは上でも申しあげたとおり、AからBへという線上の移動というイメージがあり、そこから、終点にたどりつくのは当然ということなのでしょう。これに対して、forはear-markingが本質だという視点から考えると、上の(13)は、いろいろな目的地があり得る中、ロンドンがearmarkされたと言え、また、(15)も様々な目的地に向けて種々ありうる電車の中で特にロンドン行きがearmarkされたと言えます。このことから、両者を通じて、earmarkされたよと言っているにとどまり、目的地に到着するか否かはこのforの守備範囲の外であることもわかろうというものです。

何であれ、目的を説明する副詞句が動詞に続くケースを改めてこの枠組みで捉え直すと、なるほど、使い分けがきっちりなされています。こういった形で無数の文例をながめてパターンを見いだす研究者の努力には本当に頭が下がります。こういった人たちのおかげで、われわれは単にそのルールを当てはめて処理していけばいいのですから。助かります。



dojin.gif

この記事、いかがでしたか?人気ブログランキングに参加しておりますので、このリンクをクリックすることで一票入れてくださると、うれしい限りです。どうぞよろしくお願いします。人気blogランキングへ



Trackbacks

Trackback URL: 

Comments

早速ご回答いただき、ありがとうございました。

[返信]
 
どういたしまして。

この使い方の違いは、以前からずっと疑問に思っていましたがなかなかピンとくる説明が無くて困っていました。先日このサイトに辿り着き、先生の説明で目の前がスーッと晴れました。ありがとうございました!

主語がモノかヒトかの部分について、一点質問させていただきたいのですが、下記のようにモノが主語の受動態の場合は、forとto どちらを使えばよいのでしょうか。

・ Extraction was performed for preparing X solution.
・ Extraction was performed to prepare X solution.

performの後ろにby him/she が省略されていると考えますと、to prepareが良いように思うのですが、この解釈は間違いでしょうか?

ご教授の程、よろしくお願い致します。

[返信]

ネットで検索して比較すると extraction was performed to prepareは5件あっても、for preparing はゼロですから、英語感覚では 人の行為に関わる受動態という意識があると言えそうです。

今日のお話は、ゾクゾクするほどおもしろかった。表現が異なると当然その意味も異なるはずですが、では、どのような違いがあるのかと自問しても答えられず、まアいっかとそのままに。でもこの不全感、いやなものですね。
先生のご講義をきっかけにして、違いをしつこく追う努力をしてみようと思いました。ありがとうございました。

[返信]

コメントありがとうございます。英語を教えているような人でも、そんな細かな違いなんかいいじゃないかと平気で言う人がいるだけにわが意を得た思いがします。おもしろかったとおっしゃってくださったので、最後のところ、もうちょっと補足しようかなと思っています。

どうぞ引き続きよろしくお願いします。

日向清人

コメントフォーム
Remember personal info?