2005年9月24日
I'm not a teacherと I'm no teacherはどう違うのか:NOTとNOの使いわけと勘違いを考える
中級レベルの人が英語を話している際、自分でも言い間違ったかなという狼狽がちらっと見える人と平然としている人がいます。当然、上級レベルにまで行けるのは前者です。こういった瞬間をかいま見ることのできる失敗の一つにNOTまわりのものがありますので、きょうは、そのあたりを見ていきます。
★ NOTはTO不定詞の前に
NOTまわりの失敗で多いのが、TO不定詞のTOと動詞の間にNOTを入れてしまうというものです。例えば、雑談で、「医者にはあまり太陽光を長く浴びないように言われているんですよ」といった話をする場合、どうかすると、次のように言ってしまうということです
My doctor tells me to not spend too long in the sun.
TO不定詞のTOと動詞の間には何も入れるなというルールがあるので、これは間違いとされます。正しくは以下のとおりです。
My doctor tells me not to spend too long in the sun.
★ NOT何々とNO何々の違い
最初にNOTとNOの使い方を確認しておきますと、NOTは、第1に、I don't speak Korean.(わたしは朝鮮語を話せません)のように動詞句の部分を否定形にするために使い、第2に、Not a single employee called in sick this week.(今週は従業員中誰一人として病欠しなかった)というふうに名詞句(名詞を中核とする単語のグループ)を修飾して否定的な意味合いを付与するために使います。
言い方を変えて言えば、NOは、動詞句とは一緒に使えず(I no speak Korean.は不可)、また、名詞句を修飾することもできない(No single employee...は不可)、ということです。
ここでNOの誤用をもたらす原因を考えると、まず、NOはsingle employeeといった名詞句は修飾できないとされるのに、not anyを意味する形容詞のように使うことは可能であり、これがまぎらわしくしているのだと思います。つまり、NOをtheと同じような限定詞(determinerと言いますが、形容詞と同様、名詞の役どころを絞り込むツールです)として使って、No employee called in sick this week.(従業員で今週、病欠した者は誰もいない)という言い方をするのは問題がないのです。
そこで「NOをことばの前に入れて使うことがあるからいいじゃないか」という程度の曖昧な理解で済ませておくと、足をすくわれることにもなります。上で見た通り、名詞との組み合わせでは、NOはどのような名詞かを説明する格好では使えず、名詞の前に入れられるのは、the employeeとかnot any employeeあるいはsome employeesと同じ感じで名詞の一部として取り込まれている付属品(限定詞)であるときに限られます。
この他に、NOが他のことばの前に入るケースとしては、形容詞を修飾しているときと、イディオムの一部になっているときです。
まず何々と何ら変わりがないという意味で、no different from何々という言い方があります。例えば、「この点で、弊社は御社と何ら変わりがありません」と言いたい場合は次のようになります。
In this respect, we are no different from you.
一種の決まり文句なので、必ずno different fromという格好であり、not different fromではありません。
She is no longer in our employment.(彼女はもう、うちの社員ではありません)
も同じで、She is not longer...ではありません。
もう一つ同種のイディオムとしては、「全然駄目だ」という意味のno goodがあります。
Your answer is no good.(そんな返事じゃ駄目だ)
というふうに単体でも使いますが、普通はatと組み合わせて、no good at somethingという格好で使いますから、「わたしはコンピューターを使うのが全然駄目です」と言いたいなら、こうなります。
I'm no good at using computers.
イディオムであり、言い方が決まっていますから、notを入れて、I'm not good at using...とすると何か響きがおかしくなります。これを聞いた相手は、それを言うなら、I'm no good atでしょうぐらいのことは思うことでしょう。
なお、ここでの動名詞usingの目的語であるcomputerですが、すべてのコンピュータに通ずる抽象的な話ですから、こういった場合は、冠詞ナシの複数形を使うのが一般であり、I'm no good at using a computer.は「おやっ」と感じますし、I'm no good at using the computer.だともっと変な感じがします。
一方、形容詞の比較級の前に否定することばを入れるときも、入れるのはnoであり、notではありません。例えば、「調べたところ、この方式は従来からのものと比べ何ら効率性において勝っているものではない」と言いたい場合は、次のように言います。
Our studies indicate that this method is no more efficient than the conventional one.
ここでもno+形容詞の比較級であり、notは使えません。
★ She is no engineer.とShe is not an engineer.の違い
以上で説明したとおり、けっこう、NOTとNOは混同されており、誰々is not a...と言うべき場面で、誰々is no...と言っている人がいるものです。
例えば、自己紹介をする場面での言い間違いとして、こういうものがあります。技術部門に所属してるいるけれど、自分は事務の担当であって、技術者ではないという趣旨のことを言おうとするに当たり、こう言ってしまうのです。
I work in the designing department but I'm no engineer. I work on the administrative side.
これは、次のようにnot an engineerという言い方を使って、以下のように言うべきです。
I work in the designing department but I'm not an engineer. I work on the administrative side.
No engineerとnot an engineerとで何が違うかと言うと、前者では、「エンジニアであるのは確かだけれど、たいしたエンジニアではない」という意味になるのに対して、後者は「エンジニアではなく、何か別の職を持っている」という意味合いになります。大違いです
★ NOとNOTを選べる場合
NOをnot anyという意味で名詞と一緒に使うのは上で見たとおり問題がないわけですから、以下の二つの言い方はどちらも文法上は問題なく正しいと言えます。違うのはニュアンスだけです。
(a) I don't have any money.
(b) I have no money.
これでどう違うのかと言えば、(b)の方がフォーマルな響きがあり、また、より強めた言い方という感じがあります。こうしたことから、「いい解決策がなさそうですね」といったことを言いたい場合、電話口でなら、
There doesn't seem to be any good solution.
と言うでしょうが、同じことを書面で相手に伝えるような場合は、
There seems to be no good solution.
と書く方に傾くということになります。
実際、Patricia ByrdとBeverly Bensonの共著、Improving the Grammar of Written English: The Handbookによると、大学の教科書に出てくる否定文を調べると、not anyを使うパターンより、NO + 名詞というパターンを使う方が割合としては多いそうです。
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和文技術資料の英訳でnoとnot anyのどちらが適切かを調べるべくネットを検索しました。
2つ見つかりました。ひとつは下記サイトの説明で
http://www.alc.co.jp/eng/grammar/faq/15_01.html#grammar1508
それによると、下記2文が挙げられ:
A
(1) There are no kindergartens in this area.
(2) There aren't any kindergartens in this area.
not any の方が客観的な事実を表す感じがあるという説明です。
B
もうひとつはやはりwww.alc.co.jpのサイトにある日向先生のご説明です。
(a) I don't have any money.
(b) I have no money.
(b)(no money)の方がフォーマルな響きがあり、また、より強めた言い方という感じがある、とのご説明。
C
更に手持ちの開拓社の詳解英文法辞典によると詳細な説明の中に
(イ)I have no money.
(ロ)I haven't any money.
では(ロ)(not any)の方が、familiar styleであり、emphaticで、口語的であるという説明です。
BとCから、技術資料のようなフォーマルなのはno の方であるということだと思いますが
Aの説明ではnoの方が主観的なうようでもあります。また、emphatic な方がformalであるというのも
いまひとつ感覚的にしっくりしません。また、BとCとではどちらがemphaticかという点で異なります。
改めて、よりformal、より客観的、またよりemphaticなのはそれぞれどちらかをおしえていただけますか?
注意)尚、Bではnoとnotの例文の並ぶ順序がA、Cのそれと逆ですのでご注意ください。
[返信]
結論として、本文で書いたとおり、no の方が否定の意味合いを強調するという程度のことで、そんなに神経質になる必要はないと思います。現に、L. G. Alexander の Longman English Grammar では、The two kinds of negatives have the same meaning, though "no" is generally more emphatic than "not any." としており、Michael Swan の Practical English Usage でも同じことを言っています。したがって、開拓社の辞典が "not any" の方が emphatic だとしているのは、正反対で、不思議な感じがします。一方、"No" の方がformalだとしているByrd, Benson の Improving the Grammar of Written English: The Handbook は、He doesn't have any money. と He has no money. という例文を出した上、The second one is commonly used in academic writing because it seems more formal and it seems more emphatic. と説明しています。なお、emphatic であるものが、formal でないということはなく、例えば、At no time was this patent questioned. のような否定語があるがために倒置されている、こういった emphatic な構文はむしろ、フォーマルな書面でしか見ないと言えるぐらいです。なお、たしかに、"not" は客観性が強まるという見解はよく見聞きします。そうおっしゃる方々は、自分の「感じ」以外の、何か確かな根拠がおありなのでしょうが、自分が持っている文法書のどれにも、こういったことは書いてありません。また自分自身の英語の感覚に照らして考えても、I dont' have any expertise but I can still tell good from bad. と I have no expertise but I can still tell good from bad. という2文があった場合、前者が客観的な言い方で、後者が主観的だとの印象は受けません(少なくとも私の感覚では)。単に後者の方が「自分は専門家でない」という点を強調している程度にしか感じられません。
- 野澤岳夫
- 2006年9月25日 22:46
先生、質問です。
それでは "I have no car." と "I have no cars." と "I do not have any cars." と "I do not have any car." の違いは何でしょうか?
ご教示いただけると幸いです。
[返信]
こういう似たようなフレーズをたくさん挙げて、どれがどうのという話のときは、こうあるべしと論ずるのではなく、どう使われているのかを見たほうが話がはやいとするのが私のスタイルです。
そこで、Googleを使って、お尋ねの言い方をフレーズとして検索してみました。この際、英語としての信用度を確保するためにsite:eduでしぼっておきました。結果は以下のとおりです。
I have no car. 406件
I have no cars. 5件
I do not have any cars. 1 件(don't haveだと10件)
I do not have any car. 1件(don't haveだと 2件)
- 新井康夫
- 2005年9月24日 09:59

日向先生、こんにちは。
今日たまたまニューヨークタイムズでSECがBank of Americaを提訴したという記事(http://dealbook.blogs.nytimes.com/2010/01/12/we-waited-for-this/)を読んでいたら(どうやら投稿のようですが)、"Of course it is still unclear what role he played in drafting this disclosure and making the decision to not release the information."という文がありました。この"to not release"の部分、ただしくは"not to release" だと思いますが、この種の間違いは、ネイティブでもやってしまうような間違いだということでしょうか?
[返信]
split infinitive と negation をキーワードにネットで検索するとこの問題がきわめてポピュラーな文法論議のタネになっていることがわかりますが、私は別に問題はないと思っています。特に音的に,making , decision, not とビート刻むに当たり、not がdecisionのすぐあとに来るのはしゃべりづらいので、やはり to NOT release というふうに、ビートを刻む方が楽です。