2005年9月26日
NOの研究:二つの顔を持つ、不思議な単語NO
9月24日号の記事「I'm not a teacherと I'm no teacherはどう違うのか:NOTとNOの使いわけと勘違いを考える」で、noとnotの違いをある程度見たものの、対比にばかり目が行ってしまい、あるときは形容詞として使われ、また、別のときには副詞として使われるNO固有の世界を描ききれなかったような気がします。
そこで、NOの使い方を言わば横断的に見ておくことにしました。実際、文法書でNOの用法を確かめようという場合、あちこちに散らばっており、ひとまとめになっていないのが普通ですから、これはこれで便利な文法メモになるかと思います。
★ 形容詞として使うNO
(1)NO+名詞
ここでのNOは、冠詞のようなもので、形容詞ないし限定詞のように働きます。意味としては、"not any"または"not a"と同じです。
We have no time to lose.(失っていい時間がない=一刻の猶予もない)
It's no good pretending that we're doing well.(順調であるかのような振りをするのは意味がない)
なお、ここでのgoodは名詞で、a good thingと読み替えることができます。そこで、この文は、It's not a good thing...と言ってるのと同じです。
こういった場合、気をつけなければいけないのは、英語では一つの節の中での否定的要素は一つというルールがあるので、例えば、税関などで、「申告するものは何もありません」と言う場合は、I don't have anything to declare.か、意味は同じだが否定の意味合いが強い、I have nothing to declare.のいずれかとしなければいけない点です。I don't have nothing to declare.のような、二重否定は典型的誤用で、映画などでは、「この人物はまともな教育を受けていません」ということを知らせるために使われるぐらいです。登場人物中、こういった二重否定を使っているのは、ギャングの使い走りクラスなのです。
大事なところなので、Michael SwanのBasic English Usage (Oxford University Press)を通じて、こうしたnot any代わりのNOがどのように使われものであるかを確認しておきますと、第1に、
No cigarette is completely harmless.(どんなタバコであっても完全に無害というものはない)
に見られるとおおり、Not any+名詞でセンテンスを始めることができない関係で、Not any+名詞の代用品として使われます。
「Not any+名詞でセンテンスを始めることができない」というのは、AlexanderのLongman English Grammarに言わせると、こういうことです。We must always use "no" (never "not any") if we wish to begin a sentence with a negative. つまり、センテンスを否定的な意味を持つ単語で始めようというときは、必ずNOを使わねばならない(絶対not anyを使ってはいけない)のです。
第2に、I can't get there. There's no bus.(そこには行けないよ。バスがないんだから)というふうに、There isn't a bus.という否定文を一層強めた形にしたいときにNO+名詞を使います。
したがって、最初に挙げたWe have no time to lose.もWe don't have any time to lose.を強めた言い方だということになります。
同書は、強めるためにNOを使うという感覚は、Not anybody came.に代えて、Nobody came.と言ったり、I didn't see anybody.に代えて、I saw nobody.と言うことにも表れているとしています。
補足:こうした形容詞的なNOは一定の動名詞句の前ではNOTの代わりに使われます。この点、Marcella FrankのModern English: A Practical Reference Guide (Regents/Prentice Hall)は、次の二つの例を挙げています。
There is no denying that she is very efficient.(彼女が実に効率よく働くということは否定しようもない=誰の目にも明らかだ)
No smoking is allowed in this classroom.(このクラスの中では禁煙とします)
(2)NOプラス形容詞&名詞のセット
NO+形容詞:NOは続く形容詞が名詞とセットに成っている場合にだけ使えます。例えば、
She is no fool.(彼女は馬鹿ではない=頭がいい)
ここでのfoolは名詞であることに注意しなければなりません。このあたりが曖昧だと、She is no stupid.と、形容詞stupidを修飾する形でNOを使ってしまうことになります。
NOを形容詞と一緒に使えるのは、
We have no stupid persons on our team.(われわれのチームには馬鹿者はいない)
でのstupid personsのように、形容詞と名詞がセットになっているものを一体として修飾するときだけです。She is no stupid.的なことを言いたい場合はNOTを使って、She is not stupid.という言い方によることになります。
他にit will be no bad thing (=it will be a good thing)だとか、is of no great importance といった言い方がありますが、いずれも、badあるいはgreat単体だったらNOを使えません。bad thingあるいはgreat importanceのように名詞と一緒だからこそNOを使えるのです。
こうしたNOと形容詞単体を組み合わせることができないという原則に対する例外はdifferentであり、この場合は、This method is no different from conventional ones.(この方式は従来のものと何ら変わりがない)と言えます。
★ 副詞として使うNO
ここでのポイントは、副詞としてのNOが修飾する形容詞ないし他の副詞はいずれも比較級であることを要するという点です。
(1)NO+形容詞の比較級
例えば、
Have you no better evidence than this?(これよりマシな証拠はないの?)
というふうに形容詞goodの比較級と組み合わせてNOを使えます。
He is no better than I.(彼が私より優れていることはない=こっちと比べて大差はない、大したことはない)
も同じです。
意味としては、いずれもnot any better "at all"ということです。He is no better than I.を例にとれば、「全然」大したことはない、という感じになります。
ここで気をつけなけれ必要があるのは、同じ形容詞でも普通の形容詞とNOの組み合わせは駄目だということで、That is no right.とは言えません(言うとしたらThat is not right.です)。
(2)NO+副詞の比較級
比較級の副詞、例えば、worseといったものとであれば、NOを組み合わせて使えます。例えば、「うちの生産性は業界平均と比べて劣ってはいない」と言いたい場合、
Our productivity is no worse than the industry's average.
となります。
これも形容詞の比較級のときと同じで、意味合いとしては、not any worse "at all"ということです。上の例に即して言えば、うちの生産性が業界平均おり劣っているなんてことは「全然ない」という感じになります。
同じ理屈でno moreという言い方もよく出てきます。在庫にこれ以上ない、つまり在庫が切れたならThere's no more in stock.ですし、「あいつに経営者の資格なんかあるものか、あいつにあるぐらいなら俺にだったあるよ」と言いたい場合は、He's no more fit to be a business manager than I am!です。
ここでの用法は、NO+形容詞の比較級のときと同じで、組み合わせることのできる副詞はworse, moreといった比較級に限定されます。普通の副詞とは組み合わせることができませんから、My secretary is no well today.とは言えません。これを言うならMy secretary is not well today.です。
なお、no moreは、how muchに対応する数量あるいは程度を言うために使うもので、「もはや」といった感じで時間の話をするときは、no longer を使えと前掲のSwan本は説いています。したがって、「私はもはや現在の経営陣を支持できない」と言いたい場合は、I no longer support the current management team.であって、I no more support...ではないということになります。
もう一つ、no moreがらみで知っておくとおもしろいのは、no more thanというフレーズは、not more thanという形でも使われるということです。この点、上で紹介したMarcella Frankは、以下の二つの例を挙げています。
No (or not) more than twenty people came to the lecture.(講演に来たのは20人以内だった)
This room will hold no (or not) more than twenty people.(この部屋だと20人までしか入れない)
ただ、ここで挙がっているのがいずれも数量がらみの話であることは気に止めておいていいのかなと思います。というのは、たしかに数量がらみでは、no more thanでもnot more thanでも変わりはないでしょうが、 他の場面、例えば、「彼女はまだほんの子供でしかない」といったケースを考えると、少なくとも私は、She's no more than a child.はいいとして、She's not more than a child.には違和感をおぼえます。

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