2005年9月 8日
(下)学校英文法のうそ:現在進行形の使いかた
学校英文法の世界では、現在進行形がShe is drafting an agreement.(彼女は契約書の起草中だ)のように「時間の中の一点を指す」のに対して、現在形の方は、I usually go to work on the bus.(私はバスで通勤している)のように習慣を語る場合、あるいは、We manufacture cosmetics. / We are a manufacturer of cosmetics.(当社は化粧品のメーカーです)のように「一定期間続く状態」を語る場合に使うと教えるようです。(実際には英語を使えない人たちが学校での英語はこう教えなさいという指導要領を作るためにこういう結果になるのでしょう。その意味では普通に英語を使える先生方が気の毒ではあります)
しかし、仕事で使う英語の世界では、感覚が違います。なるほど初学者に対して、BE動詞+ING形の使い方を教える場合、よく、What are you doing?に対応するものとして、I am reading a book. と答えるんだよ、とやっています。なるほど現在進行形はreal presentと称される、「目下進行中の動作・作用」を語るツールであるのはたしかですが、しかし、現在進行形の本質は、単に「いま」を表すというよりは、「今続いているけれど、いずれ終わりが来るモノ・コト」「期間限定の行為のモノ・コト」を表すことに求められるべきです。
例えば、普段は月産2,000個だけれど、今は需要期なので10,000個だというケースを想定してみてください。こういった場合「季節要因による需要増に応えるため、現在は月産10,000個です」と説明したい場合は、
To respond to a seasonal surge in demand, we're currently producing 10,000 units per month.
と言うのが普通です。ここで現在形を使ってwe currently produce 10,000 units と言ったら響きが不自然です。
これに対して、How many units do you produce normally?と聞かれたら、
Oh, we produce 2,000 units a month.
と答えるわけで、ここで、We are producing...と答えてしまっては、何の話かわからなくなってしまいます。
こうした使いわけとの関係で、Michael LewisはThe English Verb (Thomson Heinle)の中で、もっぱら現在形は反復される行為ないし習慣を表すと教えるスタンスを批判して、こんな例を挙げています。普段はバスでの通勤だけれど、今週は自動車通勤という場合、今週の自動車通勤がやはり反復継続される行為である以上、「反復される行為ないし習慣のときは現在形」とする限り、I usually go to work on the bus but this week I take the car.と言うべきだということにもなろうが、これでは、後段が変な英語になってしまうと指摘しています。実際にもこんな言い方をする人はまずいません。
どう言うのかと言えば、
I usually go to work on the bus but this week I'm taking the car.
となるのであり、そのココロはと言うと、後段は「期間限定の行為」だからだということになります。
またNHKの「ハートで感じる英文法」という番組で、You are so selfish.とYou are being so selfish.とを比べて、前者のほうが響きがきついと説明していたそうですが(http://blog.livedoor.jp/robinsnest/archives/30429689.html)、これも、後者の場合、現在進行形が使われていることで、その人の自己中心的な行動が飽くまで一時的なものと捉えられているのに対して、前者はこうした「期間限定」の評価ではないことに由来しています。
何であれ、ポイントは、「今だけのことで、そのうち終わる一時的こと」あるいは「期間限定の行為」を語るには現在進行形、そうでなく、「普段はそうなっている」というモノ・コトを語るのには現在形を使うというのが普通の英語の使い手の感覚だということです。
ところで、このように「今だけのことで、そのうち終わりが来ること」「期間限定の行為」を語るに当たっては、現在進行形を使うとして、その動詞自体、TO不定詞が続くタイプではなく、ING形が続くタイプの動詞だと必然的にING形が二つ続くことになります。これをいけないと言う英語の先生がいるので困ります。
★ We are considering purchasing...というING形+ING形
ある時、社会人向けのコースで、
We are considering placing a bulk order.(大口の注文をお願いしようかと考えている)
という何の変哲もないセンテンスを例として挙げたところ、授業が終わってから、受講生の方から、自分は学生時代に英文科の先生から、ING形を二つ続けるのは「見苦しい」から避けよと教わったんだけれど、どうなのだろうかと質問されました。
考えもしなかったことなので、あわてました。そもそも行儀作法の話じゃあるまいし、理屈としておかしいというならともかく、見苦しいなどという判断基準を持ち出されても困るよなあと思ったのです。しかし、ご本人はともかく回答を得て、すっきりしたいのでしょうから、こう説明しました。「動詞の中には、続くものが名詞というのでなく、動詞である場合、その後続の動詞を常にING形で使う必要のあるものがあり、したがって、この種の動詞を進行形で使おうとする以上は、むしろ、必ずING形が二つ並ぶ形にする必要がある。ING形が二つ続くのは不格好だという理由で、後続の動詞をTO不定詞にしたりすると、かえって不自然な英語になってしまう」と。
このタイプ、つまり動詞を続ける場合必ずING形にしなければならないものとして、ぱっと思いつくもの(したがって、一般によく使われている例)には以下のものがあります。
√ They're carefully avoiding committing themselves to any date or period.(彼らは一定の期日だとか期間につき約束をしないように気を使っている) √ The company is encouraging using English as the working language.(目下、会社は英語を実務上の共通語とするよう働きかけている) √ Management is contemplating entering into a license agreement with them.(経営陣は先方とのライセンス契約締結を考えているところだ) √ We are just finishing putting together the final plan.(最終計画のとりまとめを終えようとしているところだ) √ We are proposing amending some terms, but the other side is holding out for no good reason.(一部条項の修正を提案しているところだが、先方は格別の理由もないのに、応じるのを拒み続けている) √ For some reason unknown to us, management is postponing starting the project.(理由はわからないものの、経営陣はこのところプロジェクトの開始を先送りしている) √ By not having a non-smoking policy, we are risking losing valuable employees.(社内禁煙としないことで、いつ重要な人材を失ってもおかしくない状態が続いている)
以上を通じてのポイントは二つです。いずれもそこで語られていることが「現時点では」という感じの、一時的なモノ・コトだというニュアンスがあること、そして、現実味のあることを語る動詞はING形が続くということです(換言すれば、hope, expectのように仮定という意味合いが強い動詞はTO不定詞が続くということです)。
こちらに続編があります
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失礼します。
進行形について、学校でどのように教えているかは、詳しく知りませんが、現時点で目の前で起こっている動作を表す、というのが普通の認識であり、そのように教えているのではないでしょうか?それで基本イメージに支障があるとは私には思えません。
先生が、主張される、「今だけのことで、そのうち終わりが来ること」「期間限定の行為」というのは、先生ご自身の、意見でしょうか、それともほかの人も主張していることでしょうか?
進行形をそのようなものだとするのなら、今、先生は大きな滝の前に立ち、水が流れ落ちるさまを表現するとき、どのように表現されるのでしょうか、お教えください。
進行形は、終了しなければなりません。滝は、ふつう終了するとは考えません。よって、先生は、現在形で表すのが正しい、とお考えと受け取ってよろしいのですね。
よろしければお答えください。
[返信]
文面をよくお読みくださればわかりますが、目の前で進行している状況の描写は進行形、習慣などは現在形という図式的理解をもとにしているといつまでも現在進行形の使い方がわかりませんよと説いたつもりです。ただ、伝わらなかったようなので、表現を工夫してみます。
現在進行形が「「今だけのことで、そのうち終わりが来ること」「期間限定の行為」を表すものであることは文中で引用しましたMichael Lewisのみならず、R.A. CloseもA Teacher's Grammarの中で、現在進行形はuncompletedなモノ・コトを表すのに使うとしています。また、Randolph QuirkらのA Comprehensive Grammar of the English Languageでも同じことを言っています。この点、稿を改めて補足できればと思っています。
滝の話は本文で取りあげた工場での生産ピッチと同じで、普段の流量はいくらだと言いたいなら、An average of x cubic meters of water plummets over the edge every second.とし、今年の梅雨は特に雨量が多いのでどうのとと言いたいなら、We're having a particularly raining season this year, so, as we speak, x cubic meters of water are flowing into the gorge below.とすることでしょう。なお、同じ滝の話でも、その物理的性状はtimelessですから、The waterfall drops about 98 meters.と形容し、waterfall is droppingとすることは通常はありません。
日向
- 庄賀浩二
- 2005年9月10日 22:26
こんにちは。
昨日、東京への出張で新幹線に乗っているときに案内板に”We will get to 駅名”と出ていたので、こんなときはwillなんだなぁ、be-ingではないのは、なんでだろう?と思っていたところでした。まさか、今日そのことについて日向先生が説明してくださるとは…。
いつも先生は私が疑問に思っていることをタイムリーにエントリーしてくださいます。毎日読んでいて良かったと思うのはこんな時です。悩み氷解です、ありがとうございます。
[返信]
コメントありがとうございます。ああいう表示って気になるし、勉強にもなりますよね。両替お断りという趣旨とおぼしきSorry, no exchange.などを見るたびに、これじゃ、「返品、交換お断り」での交換だよな、Sorry, we don't give change.じゃないのと考えてしまいます。
しかし、本当にこのところ、偶然とは言え、うまい具合にmeggyさんのニーズに応えているようで、うれしいことです。意外と上級者レベルの問題意識って基本に立ち返ったところにあるのではないかと推察しております。
日向清人
- meggy
- 2005年9月 8日 16:07
再びお邪魔いたします。先日は拙コメントにご丁寧にレスポンスをいただきありがとうございました。
本日の、英語の使い手の現在進行形を使う感覚に関する貴記事も、興味深く読ませていただきました。
拝読していて、"I'm leaving tomorrow."などと、近未来を表すのに進行形を使うことがあることをふと思い出しました。また、飛行機の機内アナウンスなどで、"We will be landing shortly..."という未来進行形も耳にしまこす。私の中では、双方とも語り手の意思とは関係のない、単なる予定を表す、といった感覚があるのですが、相違はよくわかっていないのが実状です。
いつか機会がありましたら、こういった未来を表す進行形をこの場で扱っていただけたら幸いです。もし、既にお書きになっていらっしゃるのであれば、探してみます。
[返信]
こんにちは。
近未来を表す現在進行形は5月23日の記事「英語の未来形:Will, Be going to, そしてing形の使い分け」で取りあげましたので、おそらく、だいたいのことはそこでおわかりになるのではないかと思います。
未来進行形なるものは、たしかに機内アナウンスでの到着案内に見られるとおり、決まっていることを伝えるのに使われ、その意味で、やはり決まっていることを言うときの、We are landing shortly...と似ています。ただ、We are landing shortly...だと「何が何でもしばらくしたら着陸することになっているのだ」に近い確定性が強くなるのに対して、We will be landing shortly...の場合、willが入っていることで、「何かあれば別だが、このままで行く限り、もうすぐ着陸とはずだ」といった「邪魔がはいらない限り、あるいは、放っておく限り、? となるのが必至だ」というニュアンスが強まるというのが私の理解です。実際の機内アナウンスで、We are landing...という言い方はまずしないことも、この理屈から考えると納得できるのではないでしょうか。
日向清人
- nofumo
- 2005年9月 8日 13:07

レスポンスありがとうございました。5月23日の貴記事「英語の未来形:Will, Be going to, そしてing形の使い分け」拝見いたしました。こういったニュアンスの違いを知った上で、英語を読んだり書いたりしたいものだ、という思いを強くいたしました。また、同記事にあった、BE動詞+不定詞には、はっとさせられました。単に硬い感じを出したいときに、よく使っておりました。読み手には高飛車な印象を与えていたかもしれません。
本当にありがとうございました。
[返信]
Bien venido、nofumoさん。
おっしゃるとおりニュアンスは重要です。そうだというのに、willとbe going toは基本的に同じだと教える人も多いわけで、困ったことです。友達どうしならともかく、招待された席で自分が選んだものを相手に伝えるにあたり、I'm going to have the salmon.と言うのは、相手のことなど考えず「自分はこれで行くという」感じがあって失礼になるからwillを使えと教わった身としては、なんだろうなと思っています。自分がホスト側だとして、できれば極上の赤ワインで通したいなと密かに思っているときに、相手にI'm going toで魚料理をと言われたら、赤が飲めなくなるので、余計、何だこいつの口のききかたはと思うことでしょう。
日向清人