2005年9月21日
英文でのカッコの盲点
英語でのカッコの呼び方をざっと見ておきますと、まず文法書などでは、parentheses と呼ぶのが普通であるのに対して、普通の人は発音しにくいこともあり、brackets と呼んでいます。その中でもマルカッコ等種別があるわけで、
(something enclosed)
は、round brackets、
[something enclosed]
はsquare brackets、
{something enclosed}
は、curly bracketsです。
最後に、
< something enclosed >
は、angle brackets か angled brackets のどちらかですが、www.googlefight.comで調べると前者が圧倒的多数派です。
使い方として知っていればいいのは、round brackets と square brackets ぐらいで十分です。まずround bracketsの方は、
The XXX (see Figure 1 on page 3) is commonly known as...または、He said that he was going to quit (but I think he was joking).
というふうに補足説明を入れるときのツールです。
これに対して、[ ] つまりsquare bracketsは、
Prime Minister Koisumi [sic] said that...
というふうに、つまり、自分の間違いではなく、引用した原文段階からおかしかったことを示す[ママ]という意味のカッコ書きとして、筆者が内容と関係のないコメントを入れる場合に使います。ですから、日本語の「傍点筆者」に相当するAll emphasis are mine.なども気をつけて見ると、 ( ) ではなく、[ ] を使って、
[All emphasis are mine.]
といった形で入っています。
なお「この部分はカッコに入れてください」といった形で人に指示するようなときは、in brackets を使って、
Please put this phrase in brackets.
といった言い方をします。
ところで、わざわざカッコの話をとりあげたのは、以前にもライティングの盲点:カンマと引用符の関係、そして空白スペースの処理など」(5月28日号)でちょっと取り上げましたが、英文を書く際にカッコの前後にスペースを入れない人がほとんどだからです。
英文ライティングの場合は、必ず前後にスペースを入れます。ルールとして確立しています。
そうだというのに、人様に英語を教えているような人でさえも、カッコの前後に半角スペースを入れていない見苦しい英文を平気で公表したりしています。The devil is in the details.とは良く言ったものです。
あまりに当たり前のことなので、ライティングやパンクチュエーションの本をのぞいても、「カッコの前後には半角スペースを入れること」といったルールをわざわざ取りあげているケースはまずありません。実際、英語で論文をいくつも書いてらっしゃる先生(異文化コミュニケーションの専門家です)とこの話をしたところ、考えたこともなかった、自分はちゃんとスペースを入れているだろうかと不安がられていたぐらいですから、無理もありません。暗黙のオキテと言っていいのかも知れません。
何であれ、カッコの前後にスペースが入っていない英文は、普通に英語を書く人にしてみれば、何か変だなこの部分、と違和感をおぼえさせるものです。ところが、この問題は、正面きって取りあげられることがまずありません。おかしな話です。
この結果、日本人の研究者が英語でちょっとしたものを書く際に一番よくやっている間違いの一つになっています。英語で論文などを書く方は是非、ご自分の書かれたもの見直してください。特に末尾の参考文献のところで、半角スペースなしのカッコがずらりと並んだりすると、ああ、この人、英語がわかっていないんだという印象を焼き付けることになります。入っていたり、入っていなかったりすると、もっと印象が悪くなります。「わからんものだから、テキトーにやっているんだ、こいつは」という感じを受けるからです。
ねんのために申しあげると、わたし一人が頑張って、変わったことを言っているのではありません。例えば、コロンビア大学のコンピュータ・サイエンス学部が学生のために出している、ライティング用のマニュアル、Common Bugs in Writing には、(珍しいことに)こう明記されています。[このリンクの URL は、www.cs.columbia.edu/~hgs/etc/writing-bugs.html です。hgs の前の記号が全角に変わってしまい、エラーとなるケースがありますが、その場合は、この URL をコピーペーストしてください]
Parentheses or brackets are always surrounded by a space: "The experiment (Fig. 7)shows" is wrong; "The experiment (Fig. 7) shows" is right.
もう一つスペースがらみでよく見る日本人独特の間違いに、カンマのあとに入れるべきスペースがないというのもあります。あれは、うっかりというか、みっともないたぐいの間違いです。If I were a bird,I would...ではなく、
If I were a bird, I would...
というふうに、カンマと次に来ることばの間には必ず半角スペースが入ります。
追記:驚きました。ネットを見物してまわっていたら、カンマのあとのスペースのみならず、ピリオドのあとにスペースを入れなかったり、あげくのはてには、疑問符の前にいちいち余計なスペースを入れているケースもあるんですね。もっと驚くのが、そういった英文を書いているのが現役の英語講師と称している人であることです。
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カンマのあとに1スペースを入れるというのを会社で言うと、「そんなこと学校では習わなかった!」と文句を言われたことがあります。カッコの前やピリオドの後にスペースもそうですね。でも、皆さん形より中味に気を取られるようで、何度言っても直してくださらない方もいらっしゃいます。「意味がわかれば別にいいでしょ!」と言われると、強くも言えず、困ってしまいます。
人のことをあげつらいながら、果たして自分が英語で書いた文章は…と心配になり、思わず近くにあった書類を読み返してしまいました。
〔返信〕
「意味がわかればいいでしょ」はないですよね。こういう人の英語を通じて日本人全体の英語が推し量られるのかと思うと気分の悪いことです。それよりも、変な英語を書くのは会社の信用に関わることですから、上司ないしはトップを動かしてでも直させる価値があると思います。
日向清人