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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2005年10月 9日

ANDとORをきちんと訳すための大ワザ、小ワザ

前回の「その他のX」と「その他X」を使いわけると、法律文書の翻訳などが「それらしく」なるのと同じで、A1, A2 and A3, and Xのように、大きく分けるとA, Xの二つのグループから成っているものにつき、その中をさらに小分けしてandを使うような場合、大きいグループをつなげているandを「ならびに」と訳し、グループ内の小分けしてある要素をつなぐandを「および」と訳すとサマになります。

同じことは、orについても言え、二つの大きいグループのいずれかという意味で使われているorには「または」を当て、グループ内の小分けしてある要素間の選択肢を示すorについて「もしくは」を当てると、訳文も格好よくなる上、このルールを知っているプロには読みやすくなります。

業界用語では、前者のandの使いわけを「大ならび、小ならび」と言い、後者のorの使いわけを「大また、小また」と呼んでいるようですが、呼び方はともかく、翻訳作業のツールとして便利であることは確かです。ややこしい契約書などを訳すような際に自分の頭の中を整理するときにも役立ちます。

★ 「大ならび、小ならび」の世界

一番身近な「大ならび、小ならび」と言えば、やはり日本国憲法でしょう。例えば、天皇の国事行為を定めている第7条の第5号は、「国務大臣および法律の定めるその他の官吏の任免ならびに全権委任状および大使および公使の信任状を認証すること」と定めていますが、「ならびに」が大きいグループの境目であることを知っていると、ぱっと一目で、天皇による認証の対象が「任免」と「認証」であることがわかります。なかなか便利なツールです。

この第5号の英文は以下のとおりです。

Attestation of the appointment and dismissal of Ministers of State and other officials as provided for by law, and of full powers and credentials of Ambassadors and Ministers.

これを訳すに当たって、すべてを「および」でつなげてしまっては収拾がつかなくなることでしょう。

そこで、この便利なandの訳し方の基本をちょっとまとめておきますと、こんな具合です。

まず同種のものを並列的に列挙するときは、最後に「および」(「ならびに」はこういった場合は使いません。グループ分けしたときに初めて出番を迎えます)を入れます。

例)ジン、ウォッカおよびマール

という感じです。

グループ分けできるときは、グループのつなぎ目に「ならびに」を入れ、各グループ内では「および」を使いますから、上の例を続けると、こうなります。

例)ジン、ウォッカおよびマールならびにワイン

例)ジン、ウォッカおよびマールならびに赤ワインおよび白ワイン

ここまではグループが二つですが、三つ以上になったら、一番下位にあるグループ内の小分けにのみ「および」を使い、あとは、すべて「ならびに」で済ませます。そこで

例)ジン、ウォッカおよびマールならびにワインならびにチーズ

ご覧のとおり、スピリッツのグループ、ワインのグループ、そしてビールのグループと並べているわけで、グループ内の小分けした部分を結ぶためだけに「および」が使われるということです。(ちなみにここでは、「ジン、ウォッカおよびマールならびにワイン」という酒グループとチーズとが対比されていますが、この二大グループの連結部分を指して「大ならび」と言い、下位のジンなどとワインを連結している「ならびに」を指して「小ならび」と言っているわけです)

ただ、契約書などの英文和訳のときに便利なツールとは言っても、立法作業をしているわけではありませんから、あまり厳密にこだわる必要もなく、要は大きいグループがどれであるかを「ならびに」で示すことができれば十分だと思います。

★ 「大また、小また」の世界

これも日本国憲法を見たほうが話がはやいので、第38条の第2項を和英両文で見てください。

Confession made under compulsion, torture or threat, or after prolonged arrest or detention shall not be admitted in evidence.

強制、拷問もしくは脅迫による自白または不当に長く抑留もしくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。

係り結びがややこしい感じもありますが、「または」が大きなグループにまたがる選択的接続詞であることを知っていると、ひと目で、証拠能力の否定される自白には、"confession made under compulsion, torture or threat"および"confession made after prolonged arrest or detention" の二種類あることがぱっとわかります。やはり便利なツールです。

このような選択的接続詞の使い方は以下のとおりです。

まずいくつかの選択肢を並べるときは、最後の要素の前に「または」を入れます。ここでも「および」の扱いと同じで、大きなグループ分けが行われるまでは、「もしくは」は出てきません。

例)ボルドー、ブルゴーニュまたはコートドローニュ

グループ分けをしたときは、グループ間は「または」で結び、グループ内の、つまり、下位の選択肢は「もしくは」で結びます。

例)ボルドー、ブルゴーニュもしくはコートドローニュまたは焼酎

例)ボルドー、ブルゴーニュもしくはコートドローニュまたは芋焼酎もしくは泡盛

グループが三つ以上になるときは、一番大きなグループどうしをつなぐ選択的接続詞の所でだけ「または」を使い、あとはすべて「もしくは」で通します。こんな感じになります。

例)ボルドーもしくはブルゴーニュもしくは焼酎またはチーズ

★ まとめ

要するに、A1, A2 and A3でのandは「および」、A1 and A2, and Xの場合は、A1, A2の所は「および」にする一方、Aグループ、Xグループの分け目は「ならびに」ということです。また、選択肢のときは、A1, A2 or A3でのorは「または」、A1 or A2, or Xの場合は、A1, A2の所は「もしくは」で、Aグループ、Xグループのいずれかという部分は「または」で示すということです。

何だか細かい話ですが、使い慣れてくると翻訳のスピードもあがってくるという便利なツールです。一度じっくり研究しておくと、長たらしい英文の境目がおのずと見えてくるようになります。是非お試しください。


bannys


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