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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2005年10月 2日

引っ越しするNOTの話

SHALLとSHOULDの記事の中で、

「ところで、この若者の "I don't think I shall ever get a job." という言い方、変だと思いませんか。私は思っている → 何を思っているのか → ずっと仕事に就くことが「できない」のではないか、と流れるはずで、そうとすれば、I think + I shall never get a job になるはずですよね。本来、従属節の中での否定文という格好になっているはずのものが、主節を否定文にして、I don't think [that]...となっているわけで、気になります。調べて、後日、ブログネタにしましょう」

とこんなことを書きましたが、答えがわかったので報告します。

例えば、パーティーなどの席上、自己紹介のまくら言葉として「まだご挨拶したことがないかと思いますが」あるいは「お初にお目にかかります」という趣旨で、I don't believe we have met.というのが普通です。ところが、考えてみると、本来の「作り」は、「私は思う → 何を? → これまで互いに会っていないということ」ですから、I believe we haven't met.と言ってもよさそうなものです。

これをGeoffrey LeechとJan SvartvikのA Communicative Grammar of English, 3rd ed. (Pearson Education)では、本来、believeのうしろに続く従属節(ここでthatが省略されていますが、believeの目的語はthat節です)の中身、we have not metでのnotが主節であるI believeの方に「引っ越し」するという現象があり、こういった現象は、使われている動詞がbelieve, suppose, それとthinkのときに見られるとしています。

挙げられている例は以下のとおりです。

I don't suppose anybody will notice the improvement. vs I suppose nobody will notice the improvement.(誰も改良した点に気づいてくれそうもないね)

Charlotte doesn't think it's very likely to happen again. vs Charlotte thinks it's not very likely to happen again.(シャーロットは、また起きるようなことはそうはないだろうと見ている)

この場合、おもしろいことに、notが従属節から主節へと「引っ越し」はしていても、本籍は従属節に残している関係で、付加疑問文を作るときは、従属節の中の動詞が否定されていると考え、したがって、不可疑問もそれに対応するものが使われます。

そこで、I don't suppose he's serious.(彼がそのことについて真剣だとは思えないな)というセンテンスで付加疑問文を作る場合も、I don't suppose he's serious, do I?とは言わず、飽くまでもhe's seriousというsupposeを受けている従属節の中身を基準に、I don't suppose he's serious, is he?となるのです。これは、A Comprehensive Grammar of the English Languageに載っている話です。

ついでにComphrensive Grammarが挙げている「引っ越し」の例を見ておきましょう。同書は、こういった現象は「意見」を表す動詞と、「知覚」を表す動詞の場合に見られるとしています。

前者の例は、anticipate, be supposed to, believe, calculate, expect, figure, imagine, reckon, suppose, thinkだとし、She didn't imagine that we would say anything. vs She imagined we wouldn't say anything.(彼女はわれわれが何か言うとは思ってもいなかった)という例文を挙げ、また、後者の例は、appear, seem, feel as if, look as if, sound as ifなどだとした上で、It doesn't seem that we can get our money back. vs It seems that we can't get our money back.(われわれのカネを取り戻すのはむずかししそうだ)という例文を挙げています。

この「引っ越し」という現象が微妙なのは、上で挙げた動詞と似ているから、同じように「引っ越し」が可能とはならない点です。前掲書は、例えば、以下の二つのセンテンスは意味がちがってくると言います。

I didn't assume that he knew me.
I assumed that he didn't know me.

第一文は、「彼が私のことを知っているとは思わなかった」であり、第2文は、「彼は私のことを知らないものだとばかり思っていた」という意味になりますが、ここまで来ると何やら高度の文芸翻訳の世界に迷い込んだ気になってきます。しかし、こういった細かい点にまで目を配るようでないと誤訳が起きますから、やはりおろそかに出来ません。

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»alternative jiangmin: [言語] 引越しするNOTは日本語でも - 2005年12月13日 09:24

[http://tottocobkhinata.cocolog-nifty.com/bizieizakkicho/2005/10/not_19b3.html:title]  「I think + 否定文」が「I don’t think 肯定文」になるという話。日本語でも似たようなのがあった。「?すべきでない」は、意味としては「?しないべきである」だけどそんな言い方はしない。 ...


Comments

「I think that ... not の言い方よりI don't think ...の言い方が正しい(初めの方で否定する)」という記述をどこかで読んで以来、(それを信じて)前者をできるだけ使わないようにしていました。

今日の日向先生の記事の中のI didn't assume that he knew me.とI assumed that he didn't know me.のようにニュアンスに違いがでる場合があることを知りました。

assumeと同じように、notの位置で文章のニュアンスが変ってくる動詞は他にもありうるのでしょうね。

[返信]

本文では、「引っ越し」で表しましたが、専門家はこの現象をtransferred negationとかraised negativeと言っていますので、このフレーズをネットで検索されれば、もっと詳しい話があると思います。

ちなみに本文でとりあげた文法書はassumeの仲間としてpresumeとsurmiseを挙げています。

日向清人

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