2005年11月21日
営業利益の正体:EBITやEBITDAも仲間
企業業績を報じる記事によくoperating profitというものが出てきます。通常、「営業利益」と訳されています。売上高 (net sales) から、売上原価 (cost of sales または cost of goods sold)を差し引き、さらに人件費や広告宣伝費を内容とする 販売および一般管理費ないし販管費 (selling, general and administrative expenses)その他営業費用を引いて算出される数字です。
例えば、物販のウォルマートのアニュアルレポーtを見ると、売上高とその他収入を合計した収益 (revenues)から、営業費用 (operating expenses)と販管費 (selling, general and administrative expenses)を差し引いたものが、営業利益 (operating income)として表示されています。ハイテク企業のインテルも同じようなもので、収益から、原価ならびに営業費用(研究開発費や償却費などが入っています)を引いたものが営業利益です。要するにその企業の通常の事業活動からもたらされる利益です。
なお減価償却費は、このように普通は営業費用の中に入っていますが、フォード自動車のように、いったん自動車部門の営業利益を表示してから、別途金融部門の収支の中で表示するというやり方をしている企業もあります。しかし、一般的には上記の営業利益から支払利息などの金融収支を表示し、さらに法人税の項を経て、最終利益ないし純利益 (net income, net profit(s), net earnings)を表示するというのが損益計算書での基本的流れです。
ちょっと前置きが長くなってしまいましたが、ビジネス英語を勉強し始めた頃迷わされたのが、この営業利益の別称の多さで、きわめつきは、EBIT (=earnings before interest and taxes) またはEBITDAという言い方です。会計の専門家は厳密には営業利益イコールEBIT/EBITDAではないとしているようですが、証券取引の世界では営業利益イコールEBITです。例えば、David L. ScottのWall Street Words (Houghton Mifflin)で operating incomeの項を引くと、最後に、Also called earnings before interest and taxes; operating profitと明記してあるぐらいです。
そこで今回は、operating profitとnet operating profitの違い、さらにoperating profitと大差がないEBIT/EBITDAがやたら取りざたされる背景を取りあげます。
まず営業利益を指して、operating income, operating profits、そしてoperating earnings と、三つの名前が使われるので戸惑います。頻度で言えば、圧倒的にoperating income、それより少ないのかoperating profit、一段と少ないのが operating earningsと言えます。さらに、operating profitなら、粗利 (gross operating profit/income) から販管費などを引いた「純額」であることを示すために net を付けて、net operating profit あるいは net operating income と言ったりもするので、戸惑うのです。加えて損失の場合は、operating lossになりますから、単純に言えば、同じことを言うのに8種類の言い方があることになります。
なおoperating revenueという言い方も見ますが、費用を差し引く前の「収益」ないし「収入」という意味で使われる言葉ですから、区別に意を用いる必要があります。つまり、普通は、operating revenues less operating expenses = operating incomeという構図がありますから、operating revenue イコール operating incomeと考えない方が無難です。例えば、上記の Wall Street Wordsでは、operating revenueを引くと、Revenue from any regular source.(通常の収益)となっており、operating incomeの項では、
The excess of revenues over expenses derived from normal business operations.(通常の事業活動でもたらされる収益が費用を上回っている部分)と説明していますから、revenueとincomeが別物であることがわかります。
ただ、損益計算書の第一行に「営業収入」を持ってくるやり方をする事業体は別として、普通は、operating revenues に当たる粗利 (gross profit) はいちいち表示されないので、あまり気にする必要もないような感じではあります。
★ EBIT/EBITDAの正体
ところで、上で見たとおり operating profitは、earningsからさかのぼって、支払利息や法人税額を払う前の数字であり、このことに着目して、EBITと言ったり、EBITDAと言ったりします(それぞれ、口に出して言うときは、単語のように扱い、EE-bit、EE-bit-da と発音します)。EBITはearnings before interest and tax(利息租税控除前利益)のことで、EBITDAは、earnings before interest, tax, depreciation and amortization(利息、租税、償却費控除前利益)のことです。
企業体質によっては、積極的に借金しながら事業を拡大する会社があり、そういった会社は他と比べて当然支払利息の額が突出します。また、納税額も、会社の節税対策あるいは、業種によって異なる課税上の優遇措置に応じて異なりうるので、やはり人為的なデコボコがあります。そこで、純利益の額に支払利息や納税額を足し戻した数字を使えば、他社との比較に際しての共通の尺度として便利です。そういった発想からEBITが出てくるわけです。
こういった支払利息や納税額に加えて、減価償却や(無形資産を対象とする減価償却を指す)償却をも加味しようというのがEBITDAです。装置産業に属する企業であれば、そうでない企業と比べて減価償却費が突出します。加えて、大型の企業買収をすると、買収価格と企業の計算上の資産価値との差額は goodwill (のれん、営業権)であり、所定のルールにしたがって償却しなければならないというルールが適用されます。そこで、こういった「突出部」をならしてしまおうということで、EBITに、さらに(一般に、営業費用の一部として処理されている)減価償却や無形資産の償却額を足し戻したのがEBITDAです。
[注記 減価償却というのは、資産を取得した場合に、その資産がその耐用年数 (useful life) にわたって収益に寄与するものである以上、取得のために現金を支出した年度の費用としてひとまとめに処理するのはおかしいということで、取得費用を耐用年数にわたって、各年の収益に割り振る仕組みです。このことから、会計学の教科書では、資産というのは費用の束であるとか、資産という衣をまとった費用であるといった説明をしたりするぐらいです。一方、こういう企業会計の理屈もさることながら、企業の方で、耐用年数を勝手に決めて高額の資産を買っては、短期間のうちに費用として落とすのをそのまま認めてしまっては、課税所得が圧縮されてしまい、税収が減るので、減価償却は税法で縛られている世界でもあります]
★ EBITDAの問題点
投資家は、EBITDAは、計算上の金額でしかなく、現金の支出を伴わない減価償却費などが足し戻された数字であり、キャッシュフローを反映している数字だから、会社の利益の実態をつかむのに良いといったことを言います。しかし、EBITDAについては、二つの問題点のあることが知られています。
一つは、設備投資費 ( capital expenditures と言いますが、capexという省略形もよく使われます)などいくつも除外されている科目があることです。EBITDAが200億ドルもあるからすごい会社だと言われているような場合でも、毎年のように100億ドル規模の設備投資をする通信企業などの場合は、やたらこのEBITDAだけを信用するのは賢明ではありません。もっぱらEBITDAを頼りに、この会社はEBITDAがこのぐらいだから、元利返済に事欠くこともあるまいと思って融資をすると危ないのです。返済原資として当てにしていた金額のほとんどが設備投資に回されてしまうかも知れないからです。
もう一つの問題点は、EBITDAは、キャッシュフローそのものとは言えない点です。これは企業のEBITDAをその企業のキャッシュフロー計算書 (cash flow statement)に示されている事業活動上のキャッシュフロー (cash flow from operations) と比べれば簡単にわかります。事業活動からのキャッシュフローがEBITDAの半分というケースなど、ざらにあります。
ちなみに専門家の人たちは、キャッシュフローを見きわめるに当たっては、フリーキャッシュフロー (FCF = free cash flow) ということをよく持ち出しますが、その中身は、事業活動上のキャッシュフローから設備投資費を引いた残りの金額で、要するに、企業が自由に使える現金です。借入金の調達コストを反映していないという限界こそあるものの、回収した売掛金、支払った買掛金(=仕入代金)、そして設備投資の額がきちんと反映されている数字なので、EBITDAよりは頼りになるとされています。
なお、キャッシュフローというと何か立派な感じがしますが、企業会計を家計簿ベースで捉えただけというのが私の理解です。家計簿や小遣い帳は現金の出入りだけを記録し、ツケでの買い物などは記録しませんが、企業の事業活動についても同じように見て行き、将来もらえることにはなっているが、まだ銀行口座に振り込まれているわけではない売掛金のようなものを除外して計算するということです。このように、現金の出入りだけを見ていけば、決算では利益が出ているのにゲンナマ不足で黒字倒産ということを避けられるというものです。
[注記 黒字倒産というのはこういうことです。例えば、売上が2000万円で、売上原価が1000万円、人件費が500万円という会社ならいちおう500万円の黒字です。つまり決算では利益を計上できます。しかし売上と言っても、売掛金でありすぐには現金が入ってこない場合、その支払がある前に、仕入代金の1000万円の支払期限が到来すれば倒産です。現に、こういった黒字倒産は、売掛金が大きく増え、かつ、売掛金 の回収期間が買掛金の支払期間に比べて長いときに起こりやすいことが知られています]
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こんにちは。減価償却費の扱いについて質問させてください。今日のブログの最初の部分には、純利益を出すために営業利益から差し引く項目として減価償却費が出てくるのに対して、12月15日の「損益計算書を流し読みするための英語」の7番の追加説明の部分では、IT企業だと、営業利益を出すために、売上高(営業収益)から差し引く項目として減価償却費が出てくるのですが、これは、営業利益を出すのに減価償却費を差し引くかどうかはそれぞれの企業の自由裁量になると解釈していいのでしょうか?
[返信]
書き方が悪かったなと反省しております。基本的には減価償却費は営業利益をはじき出す前段階で登場します。以下のURLの右下に、Quarterly Financial Data という項目があり、エクセルで内訳まで表示してあるので、こういったスタイルを確認できます。
http://www.bellsouth.com/investor/
一方、以下の体裁をとっているフォード自動車のように、いったん自動車部門の営業利益をはじき出してから、次に金融部門の収支を表示し、その中で減価償却費をだして来る例もあります。したがって、このケースでは、営業利益のあとに減価償却費が登場します。
減価償却費が営業利益が表示されるラインの前に出てくるか、そのあとなのかは、どういう表示のしかたを取っているかによりけりだということになりますが、しかし、一般的には、売上マイナス原価、販管費、減価償却費の合計である営業費用イコール営業利益で、普通はこのあとにInterestなどの金融収支が出てきます。ですから、お尋ねの部分、ちょっと表現を改める方向で読み直してみます。
AUTOMOTIVE Sales (Note 2)
Costs and expenses (Note 2)
Cost of sales
Selling, administrative and other expenses
Total costs and expenses
Operating income/(loss)
Interest expense
Interest Income and other non-operating income/(expense), net
Equity in net income/(loss) of affiliated companies
Income/(loss) before income taxes ? Automotive
FINANCIAL SERVICES Revenues (Note 2)
Costs and expenses (Note 2)
Interest expense
Depreciation
Operating and other expenses
Provision for credit and insurance losses
Total costs and expenses
Income/(loss) before income taxes - Financial Services