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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2005年11月27日

効率的な英語の勉強:エビングハウスの忘却曲線

英語を勉強するということは、知識を得ることであり、得られた知識は、記憶という仕組みを通じて脳内に保管され、必要に応じて呼び出せるものとなります。そうとすれば、記憶のメカニズムを踏まえた上で勉強をしないとせっかく知識を仕入れたところで、記憶に残らず、必要なときに呼び出すどころの話ではありません。ところが、こういった側面から英語を勉強することの意味合いを意識して勉強している人があまりに少なすぎるように思えます。そこできょうは、ちょっと基本に立ち返って、記憶のメカニズムに即した効率的な復習法を取りあげます。

大学院に進む頃、やたらとゴマブックスという一種の新書のシリーズを買いました。当時、千葉大学の心理学の先生で、多胡輝という方が書かれた「ホイホイ勉強術」「ホイホイ記憶術」そして、たしかもう一冊は、「スイスイ受験術」です。営業政策上、おかしなタイトルがついているものの、中身は、いずれも心理学者の研究報告をベースに、科学的勉強法をまとめたもので、至極まともなものでした。実際、おおいに役立ちました。(もう一つ、これもたしかゴマブックスだったのですが、竹内宏先生ともうお一方の共著による、気の利いた哲学入門書があり、大学院の入試に際して政治思想がらみの答案を書くのにひどく役立ったという思い出があります)

実は最近のことなのですが、その当時仕入れた知識が30年経った今も大体そのまま通用することを知っておどろいています。東大の薬学部で脳の研究をされている池谷裕二という方の書かれた「だれでも天才になれる 脳の仕組みと科学的勉強法」(ライオン社)という本を買ったのですが、例えば、なつかしいエビングハウスの忘却曲線 (forgetting curve) がそのまま出ているではないですか。そこで、英単語の暗記などに役立つことでもあり、そのサワリをご紹介します。

この忘却曲線は、ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスが自分を実験台にしてランダムな単語(実際には存在しない音節のグループ)を憶えてから、どのぐらいの期間忘れないでいるかを測定し、その結果をグラフ化したものです。縦軸に記憶している量(全部憶えていれば100%)、横軸に時間の経過を取って作成するこのグラフを見ると、2日目にかけて記憶量が当初憶えたものの2割ぐらいまで急降下し、そこから先は横ばいとなることが示されています。一番目を引くのは、9時間経過した時点で、せっかく憶えたものの6割以上が忘れ去られるという事実です。池谷本の言い方を借りると、「記憶の半分は4時間以内に消える」のです。そこで、池谷先生は、一夜漬け的な勉強を迫られているなら「前日の深夜に詰め込むよりも、当日の早朝に詰め込むことです」という処方をされています。



ebbinghaus.jpg

池谷本は、忘却対策としては、ともかく一ヶ月内に必ずいったん復習をせよとしています。また、記憶が脳の海馬 (hippocampus) という部位でフルイにかけられ、選別で残ったものだけが大脳皮質 (cerebral cortex)という保管庫に当たるものに送り込まれるという仕組みであることから、海馬に「これは重要だから選別のときに残す必要あり」と納得してもらい、排除されないようにするには、ともかく反復が不可欠なのです。

ただ、やたら反復すればいいものでもありません。実効性のあるアプローチはと言うと、2ヶ月間に4回の復習がもっともいいのだそうです。具体的には、学習した日の翌日に1回、そこから一週間後にもう1回復習したら、さらに二週間経ったところでもう1回やり、最後に、3回目の復習から一ヶ月経ったところでもう1回というのがベストだと言います。

この海馬というのはおもしろい仕組みで、睡眠中に、夢という形で整理整頓してから、大脳皮質に記憶すべきものを送り込むので、何かを憶えたら、その日は6時間以上の睡眠を取らないと努力が無駄になってしまうのだそうです。習得した当日に夜更かしや徹夜をすると台無しになるから、そんなことはするなというのが池谷先生の助言です。

あと勉強は一気に詰め込むよりは毎日少しずつの方がいいとか、長期的に神経細胞を活性化させ、記憶として定着されるのを確保する上で、復習による刺激の反復が重要であるといったポイントも強調されています。すなわち最小限の努力で最大の効果をあげるためには、第1に、シータ波を生み出すようなリラックスでき、楽しめる環境で復習すること(右脳を刺激する勉強法がいいとされていることに通じるわけで、興味深い話です)、それと、第2に、ちょっとぐらい空腹で、部屋の温度も低めの方がいいと説かれています。脳が動物としてのヒトを危険から守る作用を司っている以上、ある程度は、本能的にストレスを感じ、緊張させられる環境である方が脳の効率的運用にいいという理屈のようです。

以上のように、主として記憶のメカニズムの理解をつうじて効率的な学習法を会得できるので、英語の勉強をしている方にこの本をお勧めします。しかも、普通の単行本ながら、なぜかひどく安い本で、なんと714円です。

ところで、(30年前、40年前の話であるものの)自分がそうとは知らずに実践していた英語の勉強法が、この本で、理に適っていたことを知り、「やはりそうだったのか」と、ちょっと気をよくしていますので、次回は、その話をさせてください。



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Comments

かなり詳しいところまで記載されていて、
とても為になりました。
早速クリックさせていただきました!

トラバ失礼いたします。

[返信]

クリックありがとうございます。1日に数人しか投票してくださらないので、貴重な一票です。

ところで、nobuさんのブログで忘却曲線のグラフ拝見しましたが、縦軸のラベルは、忘却率というより、記憶していた数ないしは記憶量とするのが普通かなと感じました。

nobuさんのブログを拝見すると高校在学中のようですが、記事でご紹介した池谷先生が書かれている『最新脳科学が教える高校生の勉強法』(東進ブックス)、きっと役に立つと思います。ためになる本です。

日向清人

日向先生も多胡輝先生の新書の愛読者でいらっしゃったのですね! 私もそうでした。私の場合は多感な少女時代(笑)でしたが、「ホイホイ勉強術」、「ホイホイ記憶術」などを読んで、すごく影響を受けました。日向先生がおっしゃるように、私にも実際とても役に立ちました。確か「深層心理術」という本もあって、私は部活の人間関係を円滑にするために読んで参考にしていました。

池谷先生の本のご紹介もありがとうございました。反復は本当に重要ですよね。いつ反復すべきかのお話、たいへん参考になりました。

[返信]

ホイホイ仲間が「現存」していたとは意外です。うれしいことです。多胡先生は、たしか「頭の体操」とかいうシリーズで有名でしたが、ホイホイもの、本当に実用的でしたよね。憶えてらっしゃいますか、頭を強制的にクールダウンさせるためにはボーっとしていては駄目だという話。つまり(右利きなら)右手を運動させるとか、歩き回るなどして左脳が働くのをおさえこまなければいけないと。これ、今でも実践しており、役立っています。

日向清人

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