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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2005年12月 3日

アメリカの裁判所の名前:NY州のsupreme courtは最高裁に非ず

たまに裁判所が登場する翻訳物を目にする際、裁判所のしくみがまるでわかっておらず、内容からして、明らかに第一審の話なのに、「上級裁判所」という訳になっており、気になってしかたがないというケースがあります。アメリカの州によっては、あとで説明するように、第一審の普通なら「地方裁判所」 (district court)という名称が使われる裁判所について、superior courtと言ったりするので、そこから生じた勘違いだろうと推察されます。そこで、きょうは、ざっとアメリカの裁判所の名前を見て行こうと思います。

★ 三審制

アメリカの司法制度は三審制 (three-tiered judicial system) をとっており、下級審から最上級審までの流れを簡単に言えば、U.S. District Court(連邦地方裁判所)→ U.S. Court of Appeals(連邦高等裁判所)→ U.S. Supreme Court(連邦最高裁判所)となります。

州の裁判所を見ると、中には上訴を一回に限定しており、二審制 (two-tiered system) をとっているワシントンD.C.のような所もありますが、普通は、やはり三審制です。ただ、呼称が統一されていないので、惑わされます。第一審である事実審裁判所 (trial court)の呼び方が、一番わかりやすい district court (地方裁判所)だけならいいのですが、これ以外に、superior court があるかと思えば、連邦裁判所レベルでは上訴裁判所の別称として使われる circuit court(巡回裁判所)がそのまま一審裁判所の名前として使われていたりします。ですから、サウスカロライナ州の司法制度を説明している資料 www.scbar.org/pdf/public/courts.pdf などでは、Appeals from the Circuit Court are heard by the Court of Appeals.(巡回裁判所の判決に対する上訴は上訴裁判所のおいて審理される)といった記載が見られます。

次のステップである、下級審判決に対する控訴を審理する上訴裁判所 (appellate court)は、名称としては、court of appealsですから、まあ、問題はありません。

そして、連邦憲法の解釈に関わるケースを除いては州レベルでの最終審を担当する裁判所は、普通は、supreme court です。ただ、次項で説明するとおり、ニューヨーク州のようなユニークな例があります。

★ 複雑なニューヨーク州の裁判所

昔、法律の翻訳に携わっていたときに一番驚いたのは、ニューヨーク州の場合、supreme court と言うと、下級審の一つでしかないということです。では、控訴審判決に対する上訴を扱う本物の州最高裁判所は何なのかと言うと、New York Court of Appeals in Albanyなのです。他州でも同じようなケースがあるかも知れませんが、このニューヨークの例はみずから経験しただけに記憶に焼き付いています。

複雑なことにニューヨーク州の司法制度は、市の裁判所 (city court) と州の裁判所 (state court) とが併存する構造を持っていることです。民事だけに限ると、棲み分けは、訴訟額が25,000ドル未満がcity courtの一つである Civil Courtの扱いで、それを超えるとstate courtの系列に属する Supreme Courtの扱いとなります。そして、後者、つまり The Supreme Court of New Yorkは、よその州なら一番「偉い」最高裁判所なのに、ここでは、ただの第一審裁判所でしかないのです。

次のステップとして、下級審判決に対する控訴を審理するのがどこかと言うと、これは他の州と同じで、appellate court(上訴裁判所)の仕事になっていますが、これを扱う裁判所の名前は、Appellate Divisions of the Supreme Courtと言います。しかも、一カ所だけにあるというのでなく、ニューヨーク地区とブロンクス地区を管轄する方がマンハッタンに置かれ、残る三つの地区を管轄する方はブルックリンハイツに置かれています。訳すとしたら、「地方裁判所控訴審部マンハッタン支所/ブルックリンハイツ支所」という感じでしょうか。

そして、こういった控訴審の判決に対する上訴があった場合にそれを引き受ける最終審がNew York Court of Appeals in Albanyです。前出のsupreme courtと異なり、この裁判所こそがよその州での最高裁判所に当たるものですが、これを訳せと言われたら考えてしまいます。私の流儀は実態に即してやるというものなので、「ニューヨーク州最高裁判所 (New York Court of Appeals in Albany)」という具合に、足して二で割るような訳にすることでしょう。



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