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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2005年12月22日

決済の仕組みを表す英語

普段は意識にのぼらないものの、われわれ一般市民が一番決済制度の恩恵にあずかる場面と言えば、銀行からの送金のときではないでしょうか。送金の仕組みがいちいちどうなっているか考える人は少ないと思いますが、知っておいて損のない、なかなかおもしろい仕組みになっています。

例えば、Aさんが自分の口座があるX銀行から、BさんのY銀行にある口座に当てて振り込む場合、表面的には、そういった振込のつど、Aさんの口座から資金が引き落とされて、Bさんの口座に直接、入金されている感じがします。ところが実際は、X銀行とY銀行とは互いの客同士の送金の総額と受取の総額を午後の一定時刻に見比べて、差し引きでは、こっちより、そっちの方が送金額が多いから、その分だけ、日銀にあるそっちの口座からこっちの口座に振り替えてもらいますよ、と「勝ち負け」で決めていたりします。

日本の銀行はすべて中央銀行である日銀に口座を持っており、そこでの口座間の資金の移動で自分たちの受払の決着をつけているわけで、その前段階の処理を全銀システムという名前の決済システムが担っているのです。

金融関係の翻訳や通訳をやられている方に役立つ雑学程度のはなしですが、今回は、こういった決済の様子を浮き彫りにするような用例を集めてみました。あまり一カ所にまとまって書いてあるようなことではないので、何かの折に役立つこともあると思います。

1. 決済という枠組みにおいては、支払とは取引に起因する価値の移転のための指図の伝達を言い、決済は、支払指図において定められた価値の最終的かつ無条件の移転を言う。Used in the context of settlement, payment denotes the transmission of an instruction to transfer value resulting from a transaction; settlement denotes the final and unconditional transfer of the value specified in a payment instruction.
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[メモ] もっと普通の言い方をすれば、決済とは、取引から生ずる債権債務(売り手の代金請求権と買い手の支払債務)を対価の支払で消滅させることです。1日当たりの決済金額はH9年の大蔵資料によると、おおよその数字で、日銀ネットが170兆円、外為円決済が40兆円、全銀が10兆円弱、手形交換が6兆円弱です。このうち、日銀ネットと外為円決済が金融機関どうし、つまりプロどうしの大口決済に使われ、全銀がわれわれ一般市民の小口送金のためのシステムです。何であれ、たった一日で日本の国家予算(約80兆円)の数倍の金額が動き回っているのです。

2. 決済リスクとは、外国為替取引を行った銀行が売った通貨を払渡したのに、買った通貨を受け取れないことから生ずる損失のリスクを言う。Settlement risk is the risk of loss when a bank in a foreign exchange transaction pays the currency it sold but does not receive the currency it bought.
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[メモ] 一般に取引規模が大きいほどリスクも増すので、ネッティング(債権債務を相殺して、差し引き額だけを受け払いの対象とする)などを通じて未決済残高がなるべく少なくなるよう努めるものであり、また、最終決済までの時間が長いほどリスクも増すので、プロセスの迅速化が強調されています。

例えば、為替取引(取引日の2営業日後に決済)において、わが国の銀行が外国の銀行と「円を売って、ドルを買う」為替取引をした場合、相手に対する円資金の払い渡しは、時差により日本の市場で一足先に実行されるのに、ニューヨークでのドル資金の受け取りは、普通なら東京時間の深夜である12時間後になってしまいます。このような時間差があることから、その間に万一、取引相手の外国銀行が何らかの理由で支払不能になってしまうと、わが国の銀行の方は対価を受け取れず、損失を被ることになってしまいます。

古い話ですが、ドイツにあったヘルシュタットという銀行が業務停止に追い込まれた際、いわばやりかけの為替取引が宙ぶらりんになってしまい、自分の方はヘルシュタット銀行に資金を払い込んだのに、対価である外貨を受け取れないという騒ぎになり、「ヘルシュタット・リスク」という名で、今なお決済リスクが論じられる際によく出てきます。

同じような話で、1991年のBCCI事件も金融業界では有名です。BCCI という銀行と「ドル買い円売り」の為替取引をした日本の銀行が、約束から2日目を意味する資金決済日が到来したので、早速、BCCIの円資金口座に、東京での銀行業務が行われている時間内に、円を振り込みました。普通なら問題はなく、東京時間の深夜に当たる約12時間後には、BCCIからドルが円を送金した銀行の口座宛てに振り込まれ決済が終了するはずでしたが、その12時間の間にBCCI がインチキ銀行だということで、当局から資産凍結処分を受けてしまいます。この結果、日本円をBCCIに送った銀行は資金を受け取れなくなり、大きな損害を被ることになったのです。東京での業務の時間が時差の関係でアメリカに先行していたがための悲劇です。

3. フェッドワイヤーを通じて支払が実行される場合、地区連銀は自分のところにある仕向銀行の勘定から当該支払額を引き落とす一方、被仕向銀行の勘定にその額を入金するが、これにより仕向銀行からの送金と被仕向銀行による受領が中央銀行資金の振替を通じて直ちに実行されることになる。When a payment is executed over Fedwire, a regional Federal Reserve Bank debits on its books the account of the sending bank and credits the account of the receiving bank, so that there is an immediate transfer from the sending bank and delivery to the receiving bank of central bank money.
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[メモ] フェッドワイヤーは、アメリカの中央銀行である連邦準備制度が運営している資金決済システムで、小切手の取り立てやCHIPS加盟銀行間の清算尻(互いの債権債務を相殺して残る受払額)の決済などに使われています。この制度は、連銀にある銀行の当座預金を使った即時グロス決済によっています。即時グロス決済というのは、real time gross settlementを縮めた、RTGSという略称でも通っていますが、取引を個別に、すぐさま中央銀行に置いてある預金を通じて決済する方式のことです。

4. CHIPSは民間部門の決済システムとしては世界最大で、1日当たりの取り扱い高は約1兆ドル。CHIPSを通じて処理された支払は営業日の終わりに決済され、システムから各メンバーにつき、差し引きで貸しなのか借りなのかを示した計算書が作成される。CHIPS (Clearing House Interbank Payments System) is the largest private sector payments network in the world, with about $1 trillion traveling through the system each day. Payments processed over CHIPS are finally settled collectively at the end of the business day, when the CHIPS computer produces a settlement report showing the net debit or credit position of each participant.
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[メモ] CHIPSは、ニューヨーク手形交換所協会が運営している、国際金融取引に伴う資金決済を行うシステムです。手形交換所の会員と国際金融業務を行っている銀行間で、ニューヨーク連銀にある預金口座を介して決済が行われていますが、方式は債権債務を相殺した残額を受払いするネットセトルメント方式と呼ばれるものです。

日本の場合、外国為替に伴って必要となる円決済は東京銀行協会が運営する外為円決済制度で処理されていますが、これのアメリカ版つまり外国為替取引に伴うドル決済を担っているのがCHIPSと言えます。

我が国のメガ1銀行が100億円でメガ2銀行から1億ドル買うというケースを想定した場合、こんなふうに使われます。100億円という円の支払いは外為円決済制度に基づいてメガ1銀行からメガ2銀行に行われます。その一方、ドルの売り手であるメガ2銀行からメガ1銀行への1億ドルの払い渡しは、(通常、巨額のドル資金の決済はニューヨークで処理されるので)ニューヨークでCHIPSを通じて行われることになります。

5. 米国居住者が外国の銀行から小切手を受け取った場合で、受取人の口座がシティバンクと行った大手米銀にあるといったときは、その小切手は、SWIFTを通じて発行銀行に対する取り立てが行われる。If a U.S. resident receives a check from a foreign bank and the payee's account is at a major bank like Citibank, that check is cleared against the issuing bank through SWIFT.
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[メモ] SWIFTは世界各国の金融機関どうしが支払指図や入金通知をやりとりできる仕組みで、非営利団体が運営しています。SWIFTそのものは決済制度ではなく、飽くまで決済に必要なメッセージを伝達する手段を提供しているにすぎません。

例えば、わが国のメガ1銀行が100億円でメガ2銀行から1億ドル買うという場合であれば、ドルの売り手であるメガ2銀行から買い手のメガ1銀行への1億ドルの払い渡しは、(通常、巨額のドル資金の決済はニューヨークで処理されるので)ニューヨークでCHIPSを通じて行われることになりますが、メガ2銀行本店からそのニューヨーク支店または提携先銀行(コルレス先銀行と称される)への支払指図がSWIFTを通じて行われるということです。

この場合、1億ドルを受け取った買い手のメガ1銀行のニューヨーク支店またはコルレス先銀行の方も、やはりSWIFTを通じてメガ1銀行に1億ドルの入金通知を行います。

このようにSWIFTは、入金があったよ、支払をせよといったメッセージを金融機関どうしで、効率よく(つまり、いちいち疑って調査したりせずに)交わせるよう、通信の共通規格を定めた仕組みです。




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