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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2006年1月17日

ネット企業エキサイトの英語力 -- it'sとitsを混同するという初歩的ミス

www.excite.co.jp … 日頃ネットを使われている読者のみなさんは、たいていご存じかと思います。わが国有数のポータル企業で、親会社はあの国際企業「伊藤忠」。ターゲットを「都会に住むシティ派で感性の豊かな20?34歳の男女」に置いていることでも知られています。

このエキサイトさん、本社は大手外資系企業が入っており、したがって外国人がおおぜい出入りするようなビルに入っていますが、そのビルの一階に、インターネットカフェを設けています。そして、そこの大きなガラス窓に大きく白文字で書いてコンセプトと言うのか、ブロードバンドサービスの宣伝文句が書いてあります。(恵比寿駅から、よく利用しているTsutayaへと歩いて行く途中にあるので、気になってしかたがありません)

exciteenkei

そのコピー、以下のようになっています。

Armed with it's originality and swiftness, the mission of Excite is
to create value and convey it ahead of the trend.
An impression of refinement and the excitement you feel
when opening a jewelry box for the first time...
Sharing thrilling experiences which are not obtainable through a search-only
internet service with trend-conscious, mode-sensitive "sophisticated city-dwellers"
this is what Excite is proud of and enjoys most.

何がおかしいかおわかりですか? Armed with うんぬんという分詞句のかかる先が (Exciteではなく) missionになっていて文法上まずいとか、後段の構文が稚拙で係り結びがわかりにくい、さらには、英語がモタモタしているといったことも気になりますが、最大の問題は、出だしの
  Armed with it's originality
での it's の部分です。おそらくは「独創性を武器に」と言いたいのでしょうが、本来、
 Armed with its originality
と書くべきものでした。つまり、正しくは、its すべき部分が、アポストロフィー入りの、it's になってしまっているのです。しかし、 it's は、it is を省略した書き方ですから、これでは、
 Armed with it is originality
ということになってしまい、意味をなしません。

excite


この手の間違いは、アポストロフィというものにつき、 Denny's などでの ( ' )のようにもっぱら所有格を表す記号なのだと勘違いすることから来ています。アポストロフィはたしかに、Denny's のように所有格を表すときにも使いますが、それ以外に、'90sのように、「何かがここで省略されています」ということを伝える記号でもあります。ですから、it is を省略するときは、 it's と書き、同様に、it has についてもこれを省略するときは、 it's と書く訳です。

Armed with its originality と言いたかったんだけれど、書き間違えたんで、そのぐらいいいじゃないかと思う人もいるでしょう。しかし、its を it's と間違えること自体、あまりに初歩的なミスで救いがありません。この程度のことを間違えるぐらいなら背伸びせず、日本語で書くことです。実際、まともな英語教育を受けている人間ならまずしない間違いであり、しかるべきチェックがはいっていれば、外部には普通出ないたぐいの失敗です。

言い換えれば、こういった確認を怠っている点、ビジネスのプロとしての基本動作がなっていません。私が社長だったら、業務遂行上要求される相当の注意を怠ったということに加え、会社の体面を汚し、信用失墜をまねいた「罪」を問い、書き手本人はもとより上司などの関係者を処分することでしょう。少なくとも減給一ヶ月には値するヘマです。

ふとエキサイトの社長がブログを公開しているのを思い出し、アクセスしてみると、1月13日号の記事で「かっこいいオヤジとはいかに?」というのがあるので、思わず読んでしまいました。「(上略)我々の世代は、中身、内面的な考え方、ポリシーや行動が重要である。これがないのにいくら雑誌に載っているような“かっこ”をして高級車に乗っていても、それははっきり言って、かっこ悪いのではないだろうか? 」と述べたうえ、中身がないのにうわべだけとりつくろうのは、それこそ格好が悪いという趣旨のことを書いてらっしゃいます。それだけに、中身が伴わないままシティ派を気どって英語のコピーで "かっこ" をつけたがために失敗していること、しかも、社内の人間がいつまでも気づかず、来る日も来る日も天下に恥をさらす結果となっていることを知らないというのも、いかにもまずいことです。

追記:この間違い、エキサイトさんのサイトにある「お問い合わせ」を通じてお知らせしましたが、どうでもいいことらしく、1/18現在、何の反応もありません。

追記:1/21日に、以下の返事がきました。

この度はお問い合わせ頂きまして、誠にありがとうございます。
こちらはBB.exciteカスタマーサポートセンターでございます。

お問い合わせ頂きました内容につきまして、回答させて頂きます。

ご申告頂いた内容につきましては、
弊社の担当部署に報告を行なわせて頂きました。

貴重なご意見を頂き、誠にありがとうございました。

※お急ぎの場合にはお電話でのお問合せもご利用ください。
------------------------------------------------------------------
【 BB.exciteカスタマーサポートセンター 】




dogezas

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Comments

興味深いお話ですね。
以前同様のテーマを、広告代理店に勤務していた経験の
ある友人と話していたのですが、代理店側でも言語上の
オカシイ部分をチェックすることはあえて避けるそうです。

しかし、担当者側は代理店でどうにかしてくれると
思っているようで、そういう食い違いが余計にこういう
事態を加速させているのかもしれませんね。いずれにせよ
外国語=飾りという以上の認識を持つ必要がありますね。

[返信]

コメントありがとうございます。なるほど代理店の責任という側面もありうるんですね。それにしても、もはや「外国語イコール飾り」以上だというお考え、同感です。

経験から言って、its を it's と書き間違えるのは英語のネイティブ・スピーカーに多いように思います。ちゃんとした教育を受けた人でも、無頓着な人が結構いるものですよ。

[返信]

コメントありがとうございます。古典的誤用である it's対itsの問題は、Dr. Grammar's Writes from Wrongのようなネイティブスピーカー向けの本にも必ずはいっている一方、1936年初版という、外国人学習者向けに書かれたFitikedesのCommon Mistakes in Englishや、やはり非英語圏の学習者向けのLongman Dictionary of Common Errorsにもはいっています。要するにネイティブであるか否かを問わず、英語を使う人間が犯しがちな初歩的なミスと位置づけられているというのが私の理解です。

ご指摘の混同・間違いはときどき目にします(新聞の折込みビラなどで)。いやなものですね。小生の見るところ、当の社長の意識の問題というよりも、実務担当者の無知からくるいい加減さではないでしょうか。たかがアポストロフィ一つの違いではないか、と。組織のなかで、この手の間違いについて、その是正をしつこく主張すると、嫌われますね。それが、ゆくゆくは組織の弱体化、崩壊に向かいます。

[返信]

たしかにアポストロフィーぐらいという感じもありますが何しろ、あのビル、上にモルガンスタンレーなど名のとおった外資系企業が入っており、教育のある外国人が出入りしているだけに、新聞の折り込みとはちょっとちがったインパクトがあります。マンションの広告などにある変な英語と違い、通り道の思わず見上げてしまう、結構目立つ広告なのです。今度、デジカメで撮ってきます。

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