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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2006年1月28日

ALで終わる形容詞とICで終わる形容詞の使いわけ:取得原価はhistorical costなのかhistoric costなのか

クラシックギターは英語では、classic guitar ではなく、classical guitar です。そこで「子供の頃、クラシックギターを習っていました」と言いたいなら、When I was a child, I studied classical guitar. となります。実際、わが国で言う、「クラシック音楽」は classical music ですから、ひとまず音楽関係は classical とおぼえておいてもいいぐらいです。この他、classical は、西洋社会での古典(ギリシア、ローマもの)を指すときに使います。(似ている classic は、典型例、特にその中でも上等な部類のものを指して使うので、例えば、Xという名の、いいブルゴーニュワインが出てきたような場合に. Oh, an X!...a classic Burgundy. Excellent choice.という感じで使います。ここでは、classical は使えません)

なぜ、こんな例を挙げたかと言いますと、英語の形容詞には、systematicのようにICで終わるものもあれば、chemicalのようにALで終わるものもありますが、strategicとstrategicalのように(後者が少数派ではあるものの)どちらも可というものに加えて、ICで終わるかALで終わるかで意味が違ってくるものがあるからです。

混同されるので「有名な」ものとしては、ざっと以下のようなものがあります。

 classic vs classical

 comic vs comical

 economic vs economical

 electric vs electrical

 historic vs historical

 magic vs magical

 politic vs political

今回は、このうちの historic と historical というセットにつき、一般的な使いわけを見てから、ビジネス英語の世界ではどちらをよく使うのかという角度から見て行きます。

まず historic と historical は共通する要素があるものの、歴史上の意義がある等の理由で、ひときわ重要性が高いとされるものが historic で表され、その他、時系列上、現時点までに起きたことを一般的に取りあげるときに historical が使われます。つまり、historical プラスαが historic と言えます。ですから、史跡のたぐいに人を案内するときは、

 I'd like to take you to see some interesting historic places.

という言い方になり、historical placesとは言いません。他に、以下のものはいずれもプラスα的要素があるので、いずれも historicalは使えません。

  ⇒ historic structure (歴史的建造物)
 
  ⇒ historic district (歴史的街区。わが国の文化財保護法で言えば「伝統的建造物群保存地区」)

ついでに historicalではなく、historicと組み合わせるべき典型例を見ておきますと、こんな感じです。

   ⇒ the historic date when... (歴史の転換点となった日)

   ⇒ historic cities as Kyoto and Nara (京都や奈良といった歴史のある都市)

   ⇒ a historic document (歴史的な文書、例えば、アメリカの独立宣言)

   ⇒ a historic trial (歴史的な裁判。例えば、東京裁判やニュールンベルグ裁判)

   ⇒ witness a historic occasion (歴史的瞬間に立ち会う)

   ⇒ a historic battlefield (古戦場)

これに対して、単に過去のことを取りあげている歴史小説などは historical novelであり、historic novelではないわけで、ここから、ひとまず、プラスα的要素のないものはすべて historicalで片づけてしまうアプローチで臨むと楽です。もちろん、書き物をしているときであって、辞書を使えるときは確認するに越したことはありませんが、話しているときは、これで用が足りるはずです。特にビジネス英語の分野では、historical で通してまず間違い有りません。

例えば、会社が保有している資産の帳簿上の価格をどう決めるかという問題に関して取得原価つまり買った当時の価格や税金、据え付け費などの諸掛を含めての原価で行くべきか、それとも、現時点でそれを買い換えた場合の再調達価格つまりは時価で行くべきかということが論じられますが、前者、つまり、取得時の原価で行くべしというアプローチ(原価主義会計)は、英語では、historical cost accountingと称し、「取得原価ベースで」と言いたいなら、on a historical cost basis となります。

実はときおり、この原価主義会計を指して、historic cost accounting としているケースがあり、なぜだろうと思っていたのですが、あるとき、The Economist Books の一冊、Pocket Finance での取得原価の見出しが historic costとなっているのを発見し、しかも、説明文の最後に、 In the United States historic cost is known as historical cost.とあったので、謎が解けました。要するにイギリス英語だと historic cost、 アメリカ英語だと historical cost だと言うのです。

しかし、実際には、historicalで通して差し支えありません。まずwww.googlefight.comで、両者を「闘わせて」みると、ヒット数は以下のとおりです。

 historical cost basis 119,000件
 historic cost basis 11,800件

このことから、ネットの世界を通じて確認できる限りでは、historical costの方が国際的と言うか、一般的に見て10倍多く使われていると言えます。

次に検索対象をイギリスの会社に絞り込むため、site:co.uk を足して検索してみますと、ヒット数は、以下のとおりですから、イギリス企業における実務上も、historical costの方が一般的だと言えます。

 historical cost basis 751件
 historic cost basis  165件

要するに「取得原価」と言いたい場合は、historic costではなく、historical costという言い方の方が一般的だということです。

こうした原価以外の場面で、historicalが出てくるビジネス英語を思いつくままに挙げると、ミューチュアルファンド(投資信託)がファンド設定時からの投資利回りを言うときは、historical yield という言葉を使います。また、企業のアニュアルレポートの一角に過去5年間の主要指標(収益、費用、資産、負債、資本、一株益、配当金など)の推移がまとめてありますが、そのセクションは、historical summary と称されています。




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