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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2006年1月 5日

FTAのミニ解説:自由貿易協定とは何か

新聞を読んでいると、自由貿易協定 (FTA = free trade agreement)という言葉をよく目にします。現在、インドを訪問中の麻生外相が日印両国間での FTA 締結を会談でとりあげています。昨年中に調印にこぎつけると見られていたフィリピンとの FTA は、主として看護士、介護士をどの程度、また、どういった条件で日本側が受け入れるかでもめており、最終的な調整が進められています。そして韓国との FTA は交渉がこう着状態に陥っています。このように度合いは違っても着々と FTAの締結は進んでいるのです。そこで、きょうは、このFTAがどういうものかを簡単にまとめてみました。

この FTA は、どういうものかと言えば、締約国間で互いに相手国からの輸入品に対する関税 (tariff) や非関税障壁 (non-tariff barriers)を軽減または撤廃することにより、相手国のモノを買いやすく、また、サービスを受け入れやすく、つまり、一般消費者に喜んでもらうと共に資材を調達したり、相手国で投資しようという企業がビジネスを進めやすくしようというものです。

言葉を変えて言えば、不自由を取り除こうというものとも言えます。例えば、昨年、日本とメキシコとの間で FTA が締結されるまでは、EUからメキシコに輸入される自動車の部品に対してはメキシコとEUとの間で FTA があることから関税がかからないのに、日本からメキシコに輸入される部品に対しては10%以上の高率の関税がかけられ、日本企業は年間4000億円とか5000億円といった損をさせられていました。

本当は、こういった貿易自由化による経済の活性化は WTO(世界貿易機関)という枠組みの中で進められるべきものですが、何しろ、アメリカやオーストラリアといった農産物の輸出国と海外からの農産物を脅威と感じる国々との溝が埋まりません。そこで、いつまでも待っていられないとばかりに二国間協定という形での貿易自由化がどんどん進められ、今では、150件以上の FTA が発効しています。

しかし、こういったFTAブームに対しては、加盟国に適用される関税率中一番低いものを全加盟国に及ぼさなければならないとする最恵国待遇原則 (most favored nation status rule) を柱とする WTOの理念が没却されるではないかという批判があります。

例えば米コロンビア大学のJagdish Bhagwati は、 FTA を締結する当事国がそれぞれの思惑から様々な内容の協定を締結し、それが十重二十重に国際通商の世界を規律することから生じる混乱を "spaghetti bowl" と形容したことで知られていますが、この人たちを中心に、FTAという制度はアメリカが自分たちに都合のいい内容の通商政策を押し付けているだけだとする見方がひろがっており、それなりの説得力を有しています。

Financial Times(2003年7月13日)に載っているBhagwatiらの論評を見ますと、アメリカ国内の圧力団体の利益を念頭に進められている通商政策は、貿易とは直接関係しないロイヤルティーの徴収の問題である無体財産権保護をふりかざしたりし、これを呑まないなら、自由貿易協定なんか締結に応じないよと貧しい国々を脅かすもので、この結果、「分割して統治せよ」よろしく個別撃破されてしまった途上国連合は以後、WTOといった共通の場で、固有の、そして、正当な利益主張の機会を失うことになると指摘しています。

実際、この論評が指摘するとおり、アメリカはメキシコに背伸びを強いるような環境基準や労働基準を呑ませたかと思うと、今度は、IMFが限定的ながらも支持しているような性質の資本移動規制(進出した外国企業が本国に配当金を送金するといったことに対する規制)につき、これを撤廃しないなら、締結しないよと脅かし、最終的にシンガポールやチリを押し切っています。

わが国はこうした流れのなか、ある時期まではWTO中心の多国間主義が重要だみたいなことを言っていたのに、やはり確固たる理念があったわけでもなかったらしく、アメリカやEUが自分たちの流儀でどんどん貿易自由化の枠組みを作っていくのを見て、あわてふためいて二国間主義に宗旨変えし(いちおうWTOの枠組みとの整合性がどうのといった釈明はしています)、シンガポールとのものを皮切りに積極的に FTA の締結を進めています。

しかし、それにしても、かわいそうなのは、交換条件で自分たちの首が差し出されてしまう国内産業の人たちです。他面、お米の生産者を守るために、490%もの関税をかけていいものだろうかとの思いもします。



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おまけ

自由貿易協定の締結を推進する
to pursue free trade agreements

自由貿易協定の締結に向け交渉を始める
to open negotiations for a free trade agreement 
[MEMO: 重々しく言いたいなら、openに代えて、commenceを使います。また、こういった場合、negotiationsが複数形で使われることにご注意。つまり、open a negotiationとは言わないということです]

自由貿易協定の締結に向け交渉をする
to negotiate a free trade agreement

自由貿易協定を締結する
to conclude (or enter into) a free trade agreement

自由貿易協定に調印する
to sign a free trade agreement

XYZ国との自由貿易協定が4月1日に発効した。
The free trade agreement with XYZ came into force on April 1.



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