2006年1月16日
It, this, thatの使い分け
英会話で人に違和感を与えるものの一つに、一つの話を始めて、それを受け継ぐときに出てくる、it, this, thatの使い間違いがあります。使い間違いと言うと言い過ぎかも知れませんが、そこでの流れから考えて、座りの悪いものがあるわけで、相手におやっと思わせ、その意味で本来すっと流れるべきコミュニケーションが損なわれてしまいます。
この it, this, that は、いずれも自分が今しがた発言したことを受けて、次の話をするときに使いますが、基本は it であり、何か格別強調する理由があるときにthisまたはthatを使いますから、場違いなthisやthatが入ると、聞いている方は何か落ち着かない気持ちになってしまうものです。そこで、きょうは、これの基本的な使いわけをご説明いたします。
★ 辞典の説明
英英辞典、例えば、手元にある Macmillan English Dictionary for Advanced Learners of American Englishで it, this, that の項を引くと、今しがた言ったことを受けて使うといった説明があり、それぞれにつき、こんな例文を載せています。(ここでは前言中の特定の事物を指す it ではなく、前言の内容を指す it だけを取り扱います)
IT...
If you could call her for me, I would appreciate it.
THAT...
It was a secret--that's why they never talked about it.
THIS...
Sometimes there's flooding, and this is why no one wants to live here.
★ 実際の使いわけ
例えば、友達と健康法の話をしているとします。そこで「まあ、試してみたらどう?何か合わなかったら、二度と手を出さなければいいんだし」という場合、普通、こういう言い方をすることでしょう。
Just give it a try. If you don't feel right, just don't do it again.
この場合、最後のjust don't do it again.の部分をjust don't do this/that againと言ったりするのは、(そう言う人が絶対いないとは言いませんが、)普通ではありません。格別強調する理由がないので、thisやthatだと変なのです。
逆に「輸入品は高いと思っている人がいるようけれど、それは違うんだよ」と言いたい場合は、普通、こう言います。
Some people seem to think imported goods are expensive, but that's not true.
ここで、but it's not trueと言う人は少数派です。と言うのも、何かをマークし、際立たせた上で、「それは違うよ」と突き放した感じで、訂正したり、批判したりする場合は、itではなく、thatを使うのが普通だからです。
それでは、thisはどういう場面で使うかと言えば、やはり前からの流れを受けるものの、何かをマークし、際立たせた上で、さらに話を膨らませる場合に使います。例えば、「自分たちの会社が2002年にX社を買収したが、これが転換点となり、先方の特許技術とこちらの販売網が理想的な相乗効果を生み、グループ全体の業績があがった」と言いたい場合は、こうなります。
In 2002, we acquired X Inc. This was a turning point. The combination of their proprietary technology and our distribution channels has produced unforeseen synergistic benefits, boosting group performance.
ここで This was...と this を使っているからこそ、何か身を乗り出して「いやあ、聞いてくださいよ」と相手を引き込む感じが出ているわけで、it や that を使ったら台無しです。It was a turning point. と言うと、何か弱々しい、コミットを避ける感じがします。他面、That was a turning point. という言い方だと、普通、上での That's not true. に表れているとおり、thatが突き放した、客観的な論評のときに使われることから、ここでは、何か場違いになってしまいます。
例えば、倒産したアメリカのエネルギー企業、Enronのケースで言えば、財務の責任者が特別目的会社を使って私腹を肥やしたのが命取りだったわけですが、こういった特別目的会社の設立を指して、That proved to be their downfall. (結局、それが彼らの命取りとなった)というふうに、that を使って言うのが典型例ですから、このような、言わばネガティブな使い方をする that を自分たちの業績が順調に伸びている背景の説明に持ち込むのはいかにも場違いなのです。
以上を要するに、自分の話を続けるに当たって、次のステップへの導入部で、it, this, that という三つの選択肢に直面した場合、ニュートラルなのが it、距離を置いて客観的に語るときが that、身を乗り出す感じで、主観的に、しかも、プラス材料を並べて行くようなケースでthisを使うということです。
この稿、後日、もう少し補充しようと思いますが、とりあえずこれだけおさえておくだけでも十分役立つことでしょう。
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