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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2006年2月 2日

含み損を英語で言うと:ライブドア株の値下がりでフジテレビが300億円以上の含み損

ライブドア株の値下がりで、フジテレビの保有しているライブドア株の評価額 (market value)が取得時に比べて大幅に低下し、300億円以上の含み損を抱えるに至っているというニュースが流れていますので、きょうは、この含み損の英語での言い方を取りあげます。

ライブドア株をフジテレビが取得した当時の価格は1株329円だったそうで、株式が5割以上値下がりした場合には、特別損失を計上する (post extraordinary losses) 必要があり、この結果、現在の株価の水準が続くと、同社の06年3月の (for the year ended March 2006) 業績230億円(予想)が食われてしまい、赤字を計上する (post net losses。もっとインフォーマルに言うなら、 be in the red) ことになりそうだと言います。

ここで言う含み損は、これでおわかりのとおり、取得時の価格に比べて現時点での評価額が下がっていることから生じている損失で、ただ、実際に売らない限りは損失が確定せず、計算上の損失に留まることから「含み」損という表現が使われます。

これを英語で言う場合、普通は、unrealized loss とし、逆の「含み益」なら unrealized gain/profit が一般的だというのが私の理解なのですが、どうかすると、latent loss という英訳を見ることが多く、気になっています。例えば、www.excite.co.jp に「翻訳」というボタンがあるので、「含み損」と入れてから、それをクリックすると、その訳語として示されるのは、latent loss です。また、国際化の時代ですから、今は是正されたと信じますが、わが国の英字新聞がやたらとこの latent loss を使っているのを見かけた時期があり、人ごとながら、格好悪いよなあ、恥ずかしいなあと思っていました。

そもそも latent という形容詞の語義は、present but hidden (実在するけれど隠れている)ということであり、そこから、瑕疵担保責任で言う「隠れた瑕疵」の英訳としてよく latent defects という言い方が使われるぐらいです。表からはわからないのが latent の本質と言えます。と言うことは、帳簿を見れば誰でもわかるような潜在的な損失、つまり、今回のフジテレビの件のように、堂々と論じられるたぐいのものについては、latent は似つかわしくないと言わざるを得ません。

事実、自分の経験では、英米の証券会社のアナリストが作成するレポートでこういった含み損が取りあげられるときは、十中八九、unrealized losses です。唯一の例外として記憶に残っているのが、10年前の話ですが、当時のM証券の大物日本人アナリスト(金融担当)が作成した英文のレポート。おどろいたことに latent lossesの連発。その時思ったのは、米本社なら専任のエディターがチェックするんだろうに、東京支店では翻訳者が英訳し、コンプライアンスがOKを出せば、そのまま出て行くんだろうなということでした。

手元にある証券関係の辞典で見ると、
 The Complete Words of Wall Street (Business One Irwin)
 Wall Street Words (Houghton Mifflin)
 Wall Street Dictionary (Career Press)
 Barron's Dictionary of Finance and Investment Terms
のうちの、どれを見ても、unrealized profit (or gain), unrealized loss しか載っておらず、latentうんぬんは見当たりません。Barron'sが paper profit/lossを載せているのがバリエーションと言えば、バリエーションで、その程度です。

実際にどの程度使われているかを見るべく、latent lossとunrealized lossをwww.googlefight.comでファイトさせてみると、

 unrealized loss  291,000件
 latent loss  523件

ですから、いかにlatent lossがマイナーな英語であるかがわかります。

この比較を複数形でやってみても、結果は次のとおり大差ありません。

 unrealized losses 252,000件
 latent loss  560件

結論として言えるのは、「含み損」という言葉を訳す機会があったら、ともかく、unrealized lossで通すのが一番ということです。特にプロの場合、通訳であれ、翻訳であれ、ともかく、latent loss のごときを使うと、少なくとも、何か妙な英語を使うやつだなと総合点が落ち、最悪の場合は信用を失って次からの依頼が途絶えることでしょう。




kurofuku_a

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Comments

面白い記事です。私は含み益(損)=unrealized gain(loss)しか知りませんでしたが、latent lossというJapanese Englishもあるのですね。
で、私もlatentという言葉をOxfordで調べて見ましたが、existing, but not yet very noticeable, active or well developedとありました。 この説明を見て思いましたが、やはり利用者(投資家、債権者)に含み益(損)の存在をできるだけ気付かせずにおこうという、ついこの間までの日本の会計思想では latent gain(loss)がお似合いではないかと思います。(もちろん皮肉ですよ)。 まがりなりにもdisclosureの思想が出てきてようやく、unrealized gain(loss)になったのではないでしょうか。私が好きな某球団の親会社が保有する球場の簿価が今でも500万円となっている限り、latent gainというJapanese Englishの方がお似合いかもしれませんが(しつこいですが、皮肉です)

[返信]

そもそも latent gain/lossはどちらもGoogleで調べても1,000に満たないのに対して、unrealized gain/lossで行くと、ヒットが各々129万、94万となりますから、konitanblog さんがunrealized の方しかご存じなかったのは自然なことなのだと思います。

なんかunrealizedの方がlatentよりも分かりやすいですね。日本語でも未実現利益とかって言いますから、確かにそれの逆が含み損てことになりますよね。日本語だと未実現損失とは言わないですけど、英語の方が日本語よりもより単純に表現してるな、と思います。言葉って、本当に面白いですね。

[返信]

コメントありがとうございます。

おかしなもので、「未実現損失」を引用符でくくってフレーズ検索をされるとわかりますが、会計方面の人々は平気で「未実現損失」という言葉を使うようです。自分では使うのに抵抗をおぼえる日本語ではあります。

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