2006年2月26日
間違いメールのおわびのしかた:鍵はapologize forというパターン
本当はメーリングリスト上のある人への事務連絡だったのに、うっかり、リスト上の人全員にメールを出してしまうといったことはいかにもありそうなことですが、そういった場合、みなさんはどんなお詫びのメールを関係者に出しますか?きょうは、こういった例で受け取った英語のメールをたねに、英文作成上ありがちな間違いを見ておきたいと思います。
何日か前にあきらかにMs. Doe宛と思われる事務連絡を受け取りました。宛名を見るとメーリングリスト宛だったので、ああ、間違って全員に出してしまったんだとわかる、そういうメールです。見ればわかるような間違いで、しかも Ms. Doeにも届くのは明らかだったので放っておきましたが、しばらくして、これまたリスト宛に、つまり、リスト上の受取人全員に宛て、次のような英語の詫び状が来ました。
I want to apologize my mistake to send a message to all of you not to Ms. Doe.
たった一行のセンテンスですが、明らかな間違いが二つ、これはどうかなという感覚的な問題が一つ、計三つの問題点をかかえています。
1)出だしの I want to apologize のところですが、こういった I want toは、I apologize...の直接性をやわらげるために、緩衝剤としてかませるものです。しかし、「お詫び申しあげます」はストレートなほどいいわけですから、普通は、入れるものではありません。一歩譲って、入れるとしても子供じゃあるまいし、I want to は使うべきではありません。入れるなら、I would like to です。要するに、この部分は、I apologize...とすべきものだったということです。まあ、センスの問題なので、間違いだとは決めつけられませんが、違和感が残る、そういう問題です。
2)次に apologize という動詞の使いかたが間違っています。動詞 apologize は、目的語を取る他動詞ではありませんから、I apologize my mistake. という形はありえません。これは自動詞ですから、本来は、I apologize. であり、しかも、通常は、何について謝りたいのかまで言いますから、そこは前置詞 for を入れて理由を述べます。したがって、こう書くべきものです。
I apologize for the mistake of sending out a message to all recipients on the mailing list.(メーリングリスト掲載者全員にメールを送ってしまったという手違いがありましたことをお詫び申しあげます)
これでおわかりのとおり、間違いの内容まで言いたいときは、"the mistake of + 動詞のING形"となるわけで、my mistake to do something というパターンは使いません。察するに、日本語だと、「何々という間違いをしてしまい、お詫び申しあげます」となるので、この連想に流されて、mistake のあとに TO不定詞を入れるという不思議な構文になってしまったのでしょう。
このように間違いの内容を説明したいときは、ひとまず "the mistake of + 動詞のING形"で表しますが、他に、以下のとおり、"the mistake made when" という形で、「何々の際の手違い」を詫びてから、新たにセンテンスを起こして、どういった手違いだったかを説明するやり方もあります。
I apologize for the mistake made when sending out an e-mail message. I accidentally addressed it to all recipients on the mailing list.(メールの送信に際して手違いがありましたことをお詫び申しあげます。うっかり受取人をメーリングリストに載っている方々全員にしてしまいました)
この他、名詞のmistakeに代えて、副詞の mistakenly を使うやり方もよく見ます。実はこちらの方が普通かも知れません。と言うのも、名詞 mistake を使うなら、I apologize for the mistake. 程度に留めるのが一般で、同一センテンス内でどういう mistake かをくだくだ説明するやり方はあまり見ないからです。なお、私自身、こういったケースでは、I apologize for... とやるより、この程度の話のときは、もっと気楽な感じで使える My apologies for... で行きますから、具体的には、こんな感じになります。
My apologies for mistakenly sending a message to the whole mailing list.(リストの方全員に間違ってメールを出してしまったことをお詫び申しあげます)
この程度のことはどの英英辞典でも説明と例文をじっくり見ればわかるはずです。自分はこの程度の英語はさっと書けるという思い込みから、辞典などは見もしないのでしょう。この人は。
3)最後に、入れるべきカンマが落ちています。同一センテンス内で、その一部要素との関係で、コントラストを強調する場合は、対比されるべき部分の前にカンマを打たねばならないからです。例えば、「このプロジェクトは、7週間ではなく、7ヶ月かかるんだ」というふうに、「よく聞け、7週間じゃないんだぞ」という点を強調する際は、The project will take seven months, not seven weeks. となります。ですから、今回の間違いメールで、「誰々さん宛てではなく、全員に宛ててしまいました」という下りは、こうなります。
...to all of you, not to Ms. Doe.
しかし、こういったコントラストのための、not to...というフレーズは、相手にこう考えるべきだ、こうすべしというコンテクストで使われるものですから、自分の行為について言う場合は、自分だったら、新たにセンテンスを起こし、その中で使うことでしょう。そこで最終的にはこうなります。
My apologies for the mistake of sending a message to all recipients on the list. It should have been addressed to Ms. Doe, not to the whole list.(手違いでリスト掲載の方全員にメールをお出ししてしまったことをお詫び申しあげます。ドーさんに宛てて出すべきものを全員宛にしてしまいました)
ところで、このメールの差出人、英語を教えている人です。たった一行の英語のセンテンスでこれほどボロが出るのも悲しいことですが、もっと悲しいのは、詫び状の最後に事情を説明しようと、「うっかり」と言うつもりで、「をinnocently という副詞を使っていた点です。「つい、うっかり全員宛となるボタンをクリックしてしまった」と言いたかったのでしょうが、ともかく原文はこうなっていました。
I intended to send it to Ms. Doe, but I innocently clicked the list@xxx.ac.jp button.
本当は accidentally としたかったのでしょうが、何であれ、この innocently というのは、無邪気な様子を表し、あるいは、盗品を買った疑いをかけられた人が I obtained it innocently. というふうに、道義的ないしは法的責任がからんでいる場面で、そのことを意識しつつ、「全然そんなこととは知らなかった」と言いたい場合に使うもので、ここで使うのは何か変な、そういう副詞です。
文科省は「英語を使える日本人」という構想とのからみで英語を教える教員にTOEIC 730点以上を求めていますが、おそらく、この書き手は、TOEICスコアで言えば、800とか900以上の人でしょう。しかし、そういうものなのです。TOEICは、「これまでの受験者はみなさん、このぐらいだから、あなたはこのあたりじゃないの」と間接的な位置づけを統計により推測しているだけで、英語の能力を直接測定するテストではないからです。
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この記事、いかがでしたか?毎度恐縮ですが、深夜に再計算で出直しとなるので、あらためて、人気ブログランキングへの一票をお願いします。おかげさまで現在なんとか4位を保っています。人気blogランキングへ
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アーカイブから関心のあるものを大変興味深く読ませていただいております。日本国憲法と個人主義のテーマではレスポンスをいただきましてありがとうございました。
今回のテーマですが、“Please accept my apology that S+V.." という使い方を見たり、したりすることがあるのですが、実際のところ、このような表現はどのように受け止められるのでしょうか?レベルの低い疑問かもしれませんが、ご教示いただければ幸いです。
[返信]
学習者向けの辞典でapologyを引くと、to sb/for sthという用法のパターンが載っているわけで、それほど定着しているパターンから外れている、ご提示のものは珍しいと感じられることでしょう。実際、apologyが出てくる場面で、Please accept と来たら、少なくとも私は、Please accept my apologies forと続くんだろうなと予想しますから、単数形のapologyが出てきて、that節が現れたら、変わっているなと感じます。