2006年3月18日
マンツーマン英会話が持つ不思議な響きについて
いろいろな所で「マンツーマン英会話」という言い方を見かけますが、私にとっての man to man は、重苦しい雰囲気のなか、眉間にしわを寄せたオトコが、「おう、ここは男どうしで話をしようぜ」と言ったりするときに登場するセリフで、およそ「英会話」と結びつく感じではありません。もともと険しい感じがあり、場合によっては一触即発というレベルにだって達しうることですから、お気楽な英会話とは水と油です。ましてや、その種の英会話学校は女性客を引きつけようと、おしゃれなパーティーを開いたりしているわけで、ますますチグハグな感じがします。
それじゃあ、一対一で教える英会話は何て言うんだとなったら、one-on-one English conversation lessons (イギリス英語だと one-to-one という言い方になります)といったところでしょう。そこで、きょうは、ネットでの使用頻度をも見ながら、この「マンツーマン英会話」という不思議な言い方を取りあげます。
英語だと本来、man to man がどういう感じなのかを確かめるためには、当然、辞書の説明と用例が一番たよりになりますのでのぞいてみますと、どの辞書でもたいてい取りあげているなか、一番雰囲気を伝えているのは、Collins COBUILD Learner's Dictionary だと思います。
いわく
A man-to-man conversation or meeting takes place between two men, often to discuss a serious personal matter. (マンツーマンでの会話ないし話し合いというものは2人の男どうしでのもので、だいたいは、重大かつ個人的な話である)。そして、例として、a man-to-man talk (男どうしの話し合い)と Me and Ben should sort this out man to man.(この件は、俺とベンとで、男どうし話し合うべき筋合いのことだ)を載せています。
このように、「僕」ではなく、「俺」の世界で、きわめてマッチョ臭い言い方なのです。この man to man という言い方は。マッチョと言えば、この手の感覚は世界共通と見えて、スペイン語でもたしか、同じ意味で、de hombre a hombre という言い方があるはずです。いずれにしろ、言外に「女子供の出る幕じゃない、引っ込んでろ」という感じが伝わってくる言い方であり、また、父と息子、または、上司と部下のように、本来は対等でない者どうしが、そういった上下関係を超えて、それぞれが一人の男として、腹を割って話しあうというニュアンスを強調した言い方でもあります。ですから、辞書の用例においても、Cambridge International Dictionary of English は、
Can we talk man to man about this, rather than as father to son?(このこと、 父親から息子にとというのはやめといて、男どうし、腹を割って話さないか)という例を挙げていますし、The Newbury House Dictionary of American English は、
man-to-man talk with his boss(自分の上司との、腹を割った、率直な話し合い)という用例を掲げています。
このマッチョな man to man が およそそういった世界と縁遠いEnglish conversation と結びつく感覚、私にはわかりません。
冒頭でも触れたように、「一対一での」(between only two people) という点を強調するフレーズは、one on oneで、イギリス英語ならone to one です。たまたま買った本のタイトルが Teaching English One to One(英語の個人教授をする人のためのガイドブックです)になっているぐらいですから、それがごく普通の言い方と言えます。例えば、いわゆる個人面接は、one-on-one interview ですし、辞書の用例でも、Oxford Advanced Learner's English は、
He teaches one to one.(彼は個人レッスンをやっている=彼はマンツーマンで教えている)を挙げ、Longman Dictionary of Contemporary English は、
Virtually all instruction is in small group or one-on-one.(実際上、レッスンはすべて少人数制かプライベートレッスンになります)を挙げています。
ビジネス英語の世界でも、きょうは誰々とサシで話をしてくるといった場面では、a one-on-one meeting with somebody といった言い方をよく使いますし、誰々と人を入れずにじっくり話をしてきたと報告するようなときは、I had a one on one with somebody. と言います。
したがって、マンツーマン英会話なるものを本来の英語に即して言うとするなら、ワン・オン・ワン英会話ということになるのでしょうが、既に「マンツーマン」という言い方自体、日本語に「一対一」を意味するものとして定着しているので、今さらどうしようもありませんし、何と言っても、ワン・オン・ワン英会話では、これから英語を勉強しようという人々に何のことかわかってもらえないという致命的な問題があります。
それはともかく、最後に、レッスンがらみ、あるいは英語がらみでの man to man と one on one につき、実際の使用頻度をネットで調べると、以下のとおりです。
マンツーマンでやるのは lessons だろうということで、以下の組み合わせを www.googlefight.com で「対決」させてみました。(横の数字はヒット件数です)
man-to-man lessons 161
one-on-one lessons 63,400
one on one 派の圧勝です。
マンツーマンでの教授もありだろうと考え、instructions を組み合わせてみました。
man to man instructions 8
one on one instructions 902
すごいですよね。この 8 対 902 という大差。
最後に、English と組み合わせてみました。
man to man English 130
one on one English 614
ここでも、one on one が多数派であるものの、結構、man to man もあるので、気になり、普通に、Google 調べると、何と、ヒットしているサイトのほとんどが日本がらみのものじゃないですか。そして、何と、韓国のサイトがちらほら。まさにマンツーマン英会話の正体見たりです。
以上を要するに、日本語で言う「マンツーマン」を英語にするときは、たいていの場合は、one on one か one to one にすべしということです。しかし考えてみると、不思議な話です。看板からして偽りありと言っていいぐらいなのに、その看板にひかれて、大勢の人が高い料金を払って授業を受けに行くのですから。
追記: 文法関係のサイトを探しているうちに、偶然、「マンツーマン英会話」を売りにしているGABAが教師を勧誘する際は、自分たちは、one to one Englishをやっていると自己紹介していることを知りました。日本人向けの看板が「マンツーマン」で、英語のわかる人に対しては「ワンツーワン」と、使い分けていることになります。
http://www.gaba1to1english.com/
・
・
・

人気ブログランキングに参加しております。恐縮ですが、下のリンクをクリックして一票投じていただけませんでしょうか。毎日、再計算されますので、以前に来訪されている方も、もう一度クリックお願いします。人気blogランキングへ
- [英語]
- Comments (0)
- Trackbacks (0)
Trackbacks
Trackback URL:
