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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2006年4月15日

CompanyとCorporationの違い

和英辞典で「会社」を引けば使いわけの説明もないまま company と corporation が出てきます。しかも、firm という同義語も出てきます。逆に英和辞典から引いてもやはり違いがわかりません。そこで、きょうは、company と corporation の共通点や相違点、それに、日本語での会社関係の言回し、例えば、「企業城下町」を訳すとすれば、どちらを使うのかといった点を見ていきます。

なお、商法上、会社とは営利社団法人を言うといった定義規定があるので、「会社」がこの種の事業組織を指す正式の言い方と言えそうですが、ここでは、この点にこだわらずに行きます。

★ Company と Corporation の共通点

どちらも営利事業の主体を指す言葉です。また、どちらも可算名詞であり、「日本の会社は」というふうにすべての会社に通じる一般的な話をするときは、Japanese companies are... Japanese corporations are...と、冠詞ナシの複数形を使い、会社の代表例ということで、つまり「とある会社」といった感じで個別に取りあげるときは不定冠詞を使うという点も同じです。

なお営利事業の主体という点では、同義語の firm, concern, enterprise も似ています。ざっと見ておきますと、firm は accounting firm(会計事務所)、law firm(法律事務所)に見られるとおり、プロ集団の組織を指すことが多いものの、securities firm(証券会社)、manufacturing firm(メーカー)や publishing firm (出版社)といった言い方があるとおり、普通の会社を指すときにも使います。時おり、firm は小規模な会社を指すといった解説を見かけますが、そんなことはありません。また、concern は主として会計方面で使われる going concern(継続企業=企業は存続期間が定まっていない半永久的な存在だという概念)があるぐらいで、どちらかと言うと古めかしい言い方です。これに対して enterprise は、具体的な企業を指すというより、free enterprise (私企業の自由)等の抽象的概念を語るときに顔を出す感じがあります。

★ Company と Corporation の相違点

両者が違うのは含まれる共同事業のタイプです。Company の場合は、組織的に進められている事業である限り、個人事業や組合(パートナーシップ)といったものまでもカバーしており、法人格があるか否かを問わず、複数の人が関与している組織立ったビジネス全般が入ります。企業を指すこと、法人格の有無を問わないことの二点がポイントです。

例えば、わが国での(株式会社ではない、つまり法人ではない)「何とか商会」などは、Nantoka & Co. と言えるということです。ところが、この会社が法人格を取得し、法人としての本質の一つである、有限責任、つまり会社が破綻しても、出資者は自分の出資額以上の責任は追及されないという理屈が適用される域に達すると、そのことを示す limited liability の limited を取って Nantoka Co. Ltd.になります。

これに対して corporation は、通常、法人格のある団体を指します。つまり役所への届出や登記など所定の手続を経て、自分の名義で財産を所有し、契約を締結し、さらに相手を訴えたり、訴えられたりするために必要な訴訟能力も備えた存在です。ここでのポイントは、法人格があるということであり、実際、corporationは、営利企業 (business corporation) ばかりを指すというものでもなく、自治体や学区のようなものも法人格があるということで、corporation とされます。

そもそも corporation という言葉自体、"corp" というラテン語での「体」という言葉を含んでいるぐらいで、「法的な体を持っているもの」と言い換えることができます。ここでは、常に"corp" がキーワードとして出てきます。ですから、法人企業を設立し、または、非法人組織を法人化する場合、動詞としては incorporate 、名詞としては incorporationという言葉を使います。これも元の意味からすれば、form "into" a corporation ということです。

また、社名の一部としてよく見る、XYZ Inc. での Inc. は、Incorporated を省略したものですが、これも、incorporate という手続が済んでいるということで、corporation が結果の面から言っているとすれば、プロセスの面から言っているだけの違いです。(ビギナーの方で、corporationとincorporationを混同している方がいますが、このあたりの理屈をいっぺん押さえておけば、間違えることもないでしょう)

なお、社名におけるInc. とCo. Ltd.の違いについて以前記事を書いたところ、一時間で1,000前後の驚異的なアクセス数を記録して、びっくりしたことがあります。興味のある方はこちらをどうぞ。

このように法人格があることに加え、規模においても、通常、corporation は company の場合より大きい会社を指すものです。したがって、以下の用例で出て来る corporation の形容詞形である corporate は、小さな会社の場合には使いにくい感じがあります。

⇒  corporate bond 社債、事業債(会社が巨額の借金を小口化して集めるための道具である債券のこと)
⇒  corporate card 法人カード
⇒  corporate executive 会社重役、会社役員
⇒  corporate finance 企業金融(企業の資金調達、あるいは調達と運用の両方)
⇒  corporate governance 企業統治(会社としての社会的責任を果たすため、内部管理を徹底し、透明性を確保し、説明責任を果たしていかねばならないということ)
⇒  corporate identity  「あのロゴ、あの色使いは何々会社」というイメージを消費者に定着させることで、CI(シーアイ)と呼ばれています。
⇒  corporate ladder 出世階段
⇒  corporate officer 執行役員
⇒  corporate jet 会社の専用ジェット

一方、company が小規模な会社についてだけ使われるのかと言うと、そういうこともなく、以下の用例に見られるとおり、大企業が関わっている場合にだって使われます。日本語に引きずられて、ただの会社=company、大企業=corporationといった図式で考えないほうがいいとも言えそうです。

⇒  company car 社用車
⇒  company founder 会社の創業者
⇒  company function 会社の行事
⇒  company housing 社宅 [会社が住宅費の一部を補助する形式の場合は、company-subsidized housing という言い方をします]
⇒  company law 会社法
⇒  company logo 会社のロゴ
⇒  company secretary 総務担当重役、秘書役(会社の社判を管理し、議事録等会社としての正式文書を管理する責任者)
⇒  company seal 社判
⇒  company song 社歌
⇒  company town 企業城下町
⇒  company trip 社員旅行
⇒  company union 企業別組合、ときには、御用組合

なお、「うちの会社では」といったことを言うときは、in our company か in our firm が普通で、in our corporation という言い方はまずしません。

★ アメリカとイギリスでの取扱の違い

アメリカで会社を設立する場合は、会社名に、 Corporation, Company, Incorporated, Limited のいずれか、または、その省略形である Corp. , Co., Inc., Ltd. のいずれかを入れることが求められています。しかも、アメリカの場合、州ごとに自分たちの会社法を持っていますが、ほとんどの州がモデル会社法案(全米の法律の標準化を進めている専門家たちが考えたもので、 Revised Model Business Corporation Act (RMBCA) として知られています)と呼ばれるものをベースにしているので、実質上、こうしたルールはどこでも同じです。

こういった言葉のどれかが社名に入っている事業組織は、法人であるがゆえに、有限責任だから気をつけなさいと取引の相手の注意を喚起しているわけです。何であれ、アメリカでも、company は会社の名称として通用していますから、corporationはアメリカ式で、company はイギリス式の言い方だという解説は間違っています。

一方、イギリスの場合、法人企業はすべて、社名の一部にLimited またはその省略形の Ltd.を入れることが義務づけられており、また、上場企業、つまり自社の株式が証券取引所での売買に供されている大企業は、public limited company と称することが義務づけられているので、社名には plc という言葉が入っています。このように、上場企業か否かを問わず、Limited が入っていることが要求されるので、アメリカ籍のXYZ Inc. (読むときは、incorporatedですから、XYZ Incorporated と発音します。インクではありません)がイギリスに支社を設立するときは、そのままでは登記できず、Limitedの入った社名を使うことを強いられます。

★ まとめ

以上を要するに、company も corporationも、会社ないし企業を意味しますが、company の方がcorporation より守備範囲が広いという違いがあります。つまりcompanyの場合、個人事業 (sole proprietorship) や組合 (partnership) といった法人格のない事業組織までカバーするのに対して、corporation はもっぱら法人企業を指し、しかも、どちらかと言うと、規模の大きい会社を指すということです。




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Comments

詳細で分かりやすい記事をありがとうございます。
corporationとcompanyのちがいを検討された際に参考になさった文献などありましたらお教えいただけると幸いです。

[返信]

残念ながら、現場で得た知識を自分なりにまとめただけのことで、特別、参考にした文献はありません。

大変役に立ちました。
ありがとうございます。

[返信]

どういたしまして。

非常に役立つ記事です。
あまり気にしたことがありませんでした。

[返信]

ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。

いつも詳しい解説を楽しみにしています。
5月から施行される「会社法」の訳で悩んでいます。会社法には組合が含まれませんからcompany lawだと定義が広すぎますし、corporate codeは企業コードの訳でも使われるので避けたほうがいいような気もします。英語ではどのように表現されるのが適切なのでしょうか?

[返信]

こんにちは。新会社法の訳としては、以下のサイトでもわかるとおり、プロたちもみんな company law と言っていますので、それで通じるかと思います。

http://www.kpmg.or.jp/resources/newsletter/jp/uk/200508_1/01.html

http://www.sidley.com/db30/cgi-bin/pubs/JapanUpdate021405.pdf

http://www.iflr.com/?Page=10&PUBID=33&ISS=16213&SID=512766&SM=&SearchStr=japan

なお、「会社法には組合が含まれませんからcompany lawだと定義が広すぎますし」というくだり、ちょっと気になります。ご存じでしょうが、そもそも組合は、わが国の場合、原則を定めている、つまり一般法である民法上の事業形態であり、それを特別法である商法ないし会社法で特に法人格を認め、いわば組合タイプの法人を認めているという枠組みになっています。

修正ありがとうございました。

素晴らしい記事でした。大変参考になりました。ただ、「興味のある方はこちらをどうぞ。」の URL が切れております。修正して頂けたら幸いです。

[返信]

気がつきませんで、失礼しました。修正しました。

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