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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2006年5月 7日

(1)スペリングにひそむワナ:痛い複数形の失敗(英語の落とし穴の11)

あとでご紹介するとおり、アメリカの副大統領にまでなるような人でも「ポテト」 を potatoe と書くと思い込んでいたりして、大恥をかくぐらいですから、スペリングはむずかしいと言えます。しかも、名詞を複数形にするときのスペリングのルールは一段とむずかしく、普通に英語を使っている人でも書く段になると心配になって辞書で確かめたりするものです。

しかし、いくら何でも基本的な部分はみなさん、頭にはいっているわけで、したがって、教育のある社会人がknifes, foots といった、英語としてはあり得ない複数形を使うことはまずありません。ビギナーの方々もこのあたりは、しっかり固めておかないと、要らぬ恥をかくことになります。そこで、今回は、まさにイロハにあたるようなルールのおさらいをしておきます。

★ 複数形は語尾が s になるというルールに伴うつづりの変化

基本は、名詞が複数であることを示すために "s" を語尾につけるということですが、面倒なのは、それに伴って以下のように単語のスペリングを変える必要がありうることです。なぜ、このように変わるのかと言うと、s を付けて読むに当たっての発音のしやすさが優先されて、それに合わせて読みやすいつづりが用いられるためです。

ルールの1:  最後が f で終わる knife のようなものを複数にするときは、knifes ではなく、語尾を、 ves にして、knives とする。(英語を話す人は、f と s をくっつけて発音できないので、こういった工夫をこらしているのです)ですから、原則として、こうなります。

calf → calves(子牛)NOT calfs
leaf → leaves(葉)NOT leafs
loaf → loaves(パン一斤のこと)NOT loafs
life → lives(生活)NOT lifes
shelf → shelves(棚) NOT shelfs
thief → thieves(泥棒)NOT thiefs
wife → wives(妻)NOT wifes
wolf → wolves(妻)NOT wifes

このように、常にf が ves に変化するグループに対して、The Cambridge Grammar of the English Language (Cambridge University Press, 2002) は、二つの例外グループがあると言っています。

ひとつは、belief, chief, cliff, muff, oaf, photograph, proof, safe, tough, waif のように、常に、f を維持し、複数形が fs の形になるものです。beliefs, chiefs, cliffs...ということです。

もうひとつのグループは、dwarf, half, handkerchief, hoof, roof, scarf, wharf のように、dwarfs と f +s で行ってもいいし、dwarves とves 形で行ってもいいという、いわば中間派です。ただ、このあたりは微妙で、Oxford Advanced Learner's Dictionary で roof を見ると、複数形は roofs しかないような書き方をしていますが、Macmillan English Dictionary は roofs or rooves と二つありうることを示しています。

ルールの2: 最後が y で終わる名詞は、原則として語尾を ies にし、例外的に、
 •••ay
 •••ey
 •••iy
 •••oy
 •••uy
というふうに、最後の y の前が母音 であるときは単に s を付ける。

そこで、以下の y で終わる名詞は原則からすれば、ies にするわけですから、

lady → ladies(ご婦人)NOT ladys
lily → lilies(ゆり)NOT lilys

となります。

しかし、以下のものは、y で終わってはいても、語尾が "母音 + y " なのdで、例外的にこうなります。

aireway → airways(空路)
alloy → alloys(合金)
ashtray → ashtrays(灰皿)
attorney → attorneys(弁護士)
buoy → buoys(ブイ、航路標識)
soliloquy → soliloquys(舞台劇での独白)
valley → valleys(谷、渓谷)

ルールの3:最後が o で終わる名詞の場合、原則的に s を付け、例外的に、potato のように直前に子音があるときは es を付けるが(つまり potatoes)、この例外には例外があり、memoのようなものは memos となる。

まず原則は s を付けるだけです。

ratio → ratios (比率)
studio → studios(スタジオ)

例外的に、potato のように、o の前に子音(ここではt)が来ているときは、esを使って、potatoes となります。例えば、

embargo → embargoes(禁輸措置)
echo → echoes(エコー、こだま)
cargo → cargoes(貨物)
hero → heroes(英雄)
tomato → tomatoes(トマト)
veto → vetoes(拒否権)

ところが、例外の例外として、以下のものは、o の前に子音が来ているにもかかわらず、最後が o の場合の原則に戻って、s を付けるだけです。例えば、

bamboo → bamboos(竹)
memo → memos(社内メモなどのメモ)
zero → zeros(数字のゼロ)

ところがところが、嫌なことに、上で挙げた、zero や cargo などは、辞典で確かめるとわかるとおり、zero/zeroes, cargo/cargoes のいずれも認められており、どちらが間違いというものではありません。このように、「どちらも可」というタイプをいくつか挙げると、以下のものがあります。

manifesto → manifesto/manifestoes(マニフェスト)
motto → mottos/mottoes(モットー)
tornado → tornados/tornadoes(トルネード、竜巻)
volcano → volcanos/volcanoes(火山)

このあたりのルールがいかにややこしく、混乱を生じさせるかは、先代ブッシュ大統領当時の副大統領、Dan Quayle の大失敗によく表れています。彼がニュージャージー州トレントンにある小学校を訪れたときの話です。スペリングをおぼえるゲームに参加した副大統領、課題の「ポテト」を6年生のWilliam Figueroa 君がちゃんと黒板に "potato" と書いたのに、なんと、Quayle 君は、「うーん、近いね。もう一字だな」などと言ったものですから、いい子のWilliam は逆らいもせず、e を足して、potatoe と書きます。そこで、Quayle 君、「そう、正解。よくできたね」と拍手し、一緒にいたトレントン市長をはじめ、いいおとなたちも拍手。

これは、potato を複数にするときは potatoes にするというルールが頭にあったため、potatoes の単数形は "potatoe" と「逆算」したがための間違いです。

この一件は、テレビでも放映されたとあって、多くの人にもの笑いの種にされてしまいました。実際、ネットで "Dan Quale" potatoe で検索すると、Dan Quayle and the "potatoe" incident だとか、Dan Quayle and the "potatoe" kid といった格好で、無数のサイトであげつらわれています。たしかにクェール氏自身、インターネットは自分が考えたといった大ボラを吹いたりと、この手のヘマが多く、何かにつけマスコミにやられるということもありますが、それにしても、スペリングの失敗はこわいと思い知らされます。

ルールの4:例えば bush(やぶ)のような •••sh タイプ、church(教会)のような •••ch タイプ、boss(上司)のような???ss タイプ、box(箱)のような ••• x タイプ、あるいは、bus(バス)のような ???s タイプの名詞は、最後が ••• esとなる。つまり最後が「シュッ」「ックス』的な詰まった音で終わる単語は次のように最後の s の前に母音を補充してやります。

bush → bushes
church → churches
boss → bosses
box → boxes
bus → buses

★ 複数形の場合、母音の部分が変化する名詞

前項では、複数形ということで語尾をs にするに当たって、その s を含む部分がいわば「局所的」に変わるといった話を取りあげましたが、s を付けるにあたって、先行する本体部分のつづりががらりと変わってしまう単語もあります。

例えば、医師に「歩くと両足とも痛みます」と訴えるべく foot を使うとして、foot に s をつけて、
  * Both of my foots hurt when I walk.
とするわけにはいきません。正しくは、
  Both of my feet hurt when I walk.
というふうに、foot の複数形であるfeet を使う必要があるわけです。

このように、複数になると真ん中の母音部分が変化するものとしては、上記のfootに加え、以下の名詞があります。

man → men(人間)
tooth → teeth(歯)
woman → women(女性)

★ さいごに

英語のスペリングは本当に例外だらけです。有名なスペリングのルール自体、穴だらけであることがこれを物語っています。例えば、英語圏の小学生は、必ずと言っていいぐらい、スペリングの基本として、"i before e except after c" というルールを教わります。なるほど、friend は i before e ですし、receive は、except after c という例外の適用例です。

しかし、子供のボキャブラリーには通用するルールであっても、おとなになって使う単語が増えて来ると、このルールはあてはまらなくなってきます。すなわち、except after c だから、本当は、ei となるはずなのに、science、efficient など、ie と書く例はいくらでもあります。

このように、不規則なスペリングのすべてをうまくカバーしてくれるルールはないわけで、ひたすら辞書で確認するか、暗記しておくかの二つに一つです。英語を母国語とする人たちだって間違えるのですから、われわれが当て推量でやるのはもっと危険なことに決まっています。




Dancer Dancer


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Comments

日向先生、
書き直してくださった説明文のおかげでスッキリしました。ありがとうございました。
しかしこんなにルールや例外があると、少し気を抜くと間違えてしまいそうですね。
うっかり書き間違えることのないよう、頭に叩き込もうと思います。

余談ですが、今日先生の本が3冊届きました。
どれも大変わかりやすく充実していて、ますます勉強が捗りそうです。これからも応援しています。

[返信]

大昔に自分が教わったルールを復習しながら書いたものの、新しい文法書が意外にも、いろいろあってしょうがないんだよというアプローチだったのが印象に残っていた件です。その時点で書き改めればよかったのに、さぼっていたせいで、ご迷惑をおかけしました。

それにしても一度に三冊も買ってくださり、ありがとうございます。

日向先生こんにちは。
【ルールの1】について質問させてください。

> •••ief
>というのもこの仲間であり、ves にすることなく、ただ s を足すに留まります。

とありますが、この説明文の上に

>thief → thieves(泥棒)NOT thiefs
>chief → chiefs(首長、酋長、最高位の人)NOT chieves

と、どちらも【•••ief】で終わっているのに、語尾がそれぞれ違う単語があり、少々混乱しています。どちらかが特別なのでしょうか?


[返信]

混乱させてごめんなさい。その後の勉強で、単純な類型化がけっこう危ないことにも気づきましたので、書き直してみました。いかがでしょう。

人のことを言いながら、ルール3のところで自分でもpotatoの綴りを間違えてますね。

[返信]

ご指摘ありがとうございます。直しておきました。助かりました。

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