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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2006年6月29日

OKの研究:TVドラマ「ザ・ホワイトハウス」に学ぶそのニュアンスの多様性

昨年の5月になりますが、「英会話とは何ぞや」というシリーズを書き、その中で、会話というのは「2人の世界」であり、いろいろな合図を互いに出して、会話が続いている限り、その「会話共同体」が存続していることを確かめあうものだとし、また、話し手が目に見えない「二人の世界」の中で「自分の現在位置を確かめる一方、相手にもそれを知らせるための合図」が交わされるといったことを述べました。そして「潜水艦で言えばソナーです。これには、自分が進もうとしている方向を示す道しるべという意味あいもあります。例えば、so, okay. 'cos (=because), and, well, nowなどがこの種の合図として使われます」と続けました。

こういったものの見方、つまり 「会話共同体」の中での道しるべとなる discourse marker というものがあるんだという問題意識からすると、海外 TV ドラマの「ホワイトハウス」(原題は The West Wing。以下、The West Wing と呼びます )は、資料の宝庫です。

特に自分自身、感心しているのは okay の多様さです。オックスフォードやロングマンの学習者向け英英辞典にだって、語義の三つや四つは載っていますし、CDをインストールすれば、okay の発音まで聴けます。ただ、The West Wing の場合、場面別のイントネーションの使いわけまで勉強できる点が決定的に違います。

ところで、この okay 、専門家にも気になる存在と見えて、研究テーマとして取りあげる人たちもいるほどです。例えば、Navigating Joint Projects in Telephone Conversations (Adrian Bangerter, Herbert H. Clark, and Anna R. Katz, Department of Psychology, Stanford University) という論文では、電話でのやりとりを分析した上、こんなことを言っています。

おなじようなあいの手であっても、uh-huh、yeah、それと right が、一つの話のなかで「ほう、なるほどね、そうなんだ」と前へ前へと進めて行く役割があるのに対して、okay は 一つの話を始めようとしたり、一区切りつけようとする際に使われる言葉で、この点、all right と似ている。

これを読んで、「なるほどね、そういやそうだ」と思ったのは、プレゼンなどでの okay の使われ方です。たしかに、一つのポイントに入るときは、Okay, let's move on to the second point, which I have called "Heigtened competition in a global economy." (それでは、第二点、すなわち「グローバル経済の中で激化する競争」という点に移りましょう)というふうに切り出すために使う一方で、Okay, that's everything in Part Two.(さて、以上を持ちまして第二のポイントを終えます)という具合に、「さて、以上をもちまして」というノリで使うものです。(この点、so も、「始めるよ」「じゃ、終わるよ」と合図するために使われるので、似ていると言えば似ています)

それでは、こうした okay は実際の会話の中ではどんなふうに表れてくるのでしょうか。The West Wing の会話を聴いていると okay の役どころは切り出すときと終わるときの okay を含め、以下で見るとおり、実に様々で、考えさせられます。

1) 電話を切り上げる際の、「じゃあ、そういうことで」と言うための Okay

これは Season One の、自転車に乗っていた大統領(マーティン・シーン)が木に突っ込んで怪我をしたので、ホワイトハウス中がこの話題で持ち切りという場面で登場します。首席補佐官の Leo が 副補佐官の Josh のオフィスに入って行くと、ちょうど Josh が電話を切るところです。そして、電話を切るや Josh が Leo に Hey とあいさつします。こんな感じです。

Okay, bye. [hangs up the phone] Hey.

上のスタンフォード大の論文からすれば、"All right, bye." でもいいわけで、okay の典型的用法と言えそうです。

ところで、「じゃあ、また」というニュアンスの「分かれの okay」は、電話だけでなく、立話のときにも登場します。例えば、Season Two での「回顧録」的なシーンで、Josh が 大統領選に立候補しようとしていたバートレットの陣営にSamを引き入れようと働きかける場面があります。ここでは、大法律事務所での仕事を楽しんでいるだけに政治の世界に入る気持ちもなく、うんと言わない Sam に対して、Josh が最後にもう一度、「バートレットがいよいよ本物との感触を得たら、また声をかけさせてよ」と言うや、Sam が「何言っているんだい。バートレットに心酔しているのがありありと顔に出ているじゃないか」と冷やかしますが、ポイントは、最後の okay です。2人とも okay です。


SAM: You've got a pretty bad poker face.(そんなこと、もう顔に書いてあるじゃないか)

JOSH: Okay. [starts walking off] Take it easy.(わかった。じゃあ。元気で)

SAM: Okay.(じゃあな)

2) 自分の説明に対する相手の反応を確かめるための Okay

上のシーンの続きですが、Josh がキューバから小舟で難民(経済難民?)が押し寄せている事件を取りあげ、キューバ人たちがいかに危なっかしい「舟」ないしイカダに乗っているかを Leo に説明する場面で、こんなふうに Okay を使っています。

What the Cubans are on would charitably be described as rafts. Okay?They're making the hop from Havana to Miami in fruit baskets, basically. Let’s just be clear on that.(このキューバ人たちが乗っているのは、 どう、ひいき目に見ても、イカダとしか言いようのないようなものですよ。わかりますよね。ハバナからマイアミまで果物かごに身を託して来ようとしているも同然なんですから。この点はきちんと認識しておく必要があるんじゃないかな)

ここでの okay は、"You get it, don't you?" または、"Are you with me?" 的な意味合いと言えます。日本語での「いいかい?」に近い感じでしょうか。

次いで、この話に広報担当のToby が加わり、難民たちがどうやって航海してくるかより、彼らがアメリカに上陸したときのことの方が問題だと指摘しますが、そのくだりでも、okayが、以下のように「わかる?」「でしょう?」という感じで使われています。

Oh, for Gods sake. Forget about the journey. Okay? The voyage is not our problem.(いやあ、違うんだったら。どんなふうに海を渡って来ようとそれはどうだっていいんだよ。わかるでしょう。そんなことは問題じゃないんだから)

3)「じゃあ、いいかい…用意は」と言うための okay

一般教書演説が出て来るエピソードで、手応えを探る電話アンケートを取るグループが待機しているところで、責任者の Joey がグループの人々に「誰もガムをかんでたりしないわよね」と念を入れてから、今度は、Josh が、「じゃあ、始めて!」と声をかけるシーンがあります。そこでの Josh のセリフは、

Okay...start!(用意はいいかな。じゃ、始めて!)

でした。言い換えれば、"Hey guys, ready?...start" となる場面です。あるいは、もうちょっと改まった感じを出すため、guys という言い方を避けるなら、"Okay, people. Let's start!" と言うことも出来ます。

4) 「それなら結構」と言うための okay

Season One の中ですが、大頭領の娘の Zoey がぶらりと大頭領執務室にぶらりと表れるシーンがあります。個人秘書の Charlie とのやりとりの中で出てきますが、こんな感じです。

ZOEY: Is he in?(いるかしら?)

CHARLIE: I'll tell him you're here.(お見えになっているとお伝えしましょう)

ZOEY: Nah, that’s okay.(いや、いいわ)

ここでの okay は、言い換えれば、"No, that won't be necessary." とすることができます。ちなみに、この Nah は、崩れた No で、大頭領令嬢が悪ぶって、庶民的な言葉遣いをしている様子をよく表しています。こういったきめ細やかな演出のあるのが好きです。アメリカのテレビドラマは。

5) 「そうかい、それならそういうことなんだ。わかったよ」と言うための okay

自分が得た情報の裏を取るべく報道官の C.J. にくいさがる記者の Bruce を C.J. が軽くかわすシーンで、こんなやりとりです。

C.J.: I think someone's havin' a little fun with you, Bruce.(ブルース、誰かあなたをからかってるんじゃないの)

BRUCE: You sure?(本当に?)

C.J.: I was just in the Oval Office ten minutes ago.(たった10分前まで大頭領執務室にいたのよ)

BRUCE: Okay.(そういうことでしたか。わかりました)

この「不承不承の okay」は、The West Wing で、やたらよく出て来るタイプとも言えますが、ともかく、言い換えるとすれば、"All right, point taken." となります。

6)単なる「大丈夫です、ご心配なく」という意味の okay

Season Two の冒頭、大統領暗殺未遂の現場で、広報担当の Toby が、副補佐官の Josh の身を案じて探しているところで、大頭領の個人秘書 Charlie にばったり出会う場面があります。そこでの okay は、暗殺未遂現場ですから、当然、「大丈夫か、怪我はないか」という意味のものです。やりとりは、こうです。

TOBY: Hey, Charlie, are you okay?(チャーリー、大丈夫か)

CHARLIE: Yeah.(はい、大丈夫です)

TOBY: Have you seen Josh?(Josh を探しているんだけど)

7)「よろしいですか」と話を切り出すために言う okay

これは上のスタンフォード大の論文に登場する okay の典型例です。何かの話を切り出す際の常套手段で、all right または、right に置き換えることができます。これが出て来るのは 以下のとおり、Season Two の冒頭、暗殺未遂の現場から病院に運び込まれて来た大頭領に担当医が声をかける場面です。

DR. KELLER: Okay, sir, we're just gonna get you stabilized.(それでは、大頭領、これから応急処置をします)

8)「そりゃ気の毒に…残念なことで」という気持ちを伝える okay

バートレット大頭領は、ちょっとした衒学趣味があり、よく、打ち合わせのためにみんなが集まって来ている場面で、ひどくむずかしい単語の意味を尋ねてはスタッフが答えに窮しているのを見計らって、「それはだね」とやるのが好きです。ところが、この場面では、Sam があっさり答えてしまったので、大頭領はおもしろくありません。Sam が「本当はご自分で答えたかったんですよね」とからかうと、一度は大頭領も「そりゃそうさ。でも、このぐらいのこと負けてられないさ」と受け流します。ところが、Sam  が追い討ちをかけて「そりゃよかった。すっかり大人の対応ですな」などと言うので、むくれて、Shut up. と言ったものですから、Sam が意地悪く、一言余計なことを言います。こんな感じです。

SAM: You're not over it yet, are ya?(まだ根に持っているんでしょう)

Everyone sits down.[関係者全員が席につく]

BARTLET: No.(そうさ)

SAM: Okay. (それはお気の毒なことで)

なかなか微妙な okay だと思われませんか。 The West Wing では、前述した「不承不承の okay」ともども、こういった微妙なokay が多く、楽しませてくれるのですが、ここでの微妙さを考慮に入れつつ、別の言葉で言うとしたら、なだめる感じでの「はいはい、わかりました。もういいでしょう」というニュアンスを伴った、That's too bad.(それはお気の毒なことで)かなと思います。

インフォーマルな言い方でよければ、Tough luck! というやつです。ただ、この言い方は、どうかすると、「まあ、そういうもんさな。我慢するこった」という感じが伴い、You have to deal with it. (つべこべ言いなさんな。そういうことなんだから)的な意味合いにもなりかねないので、面倒です。やはりわれわれ日本人は、スラングのたぐいは、知っておいて損はないけれど、自分からは使わないのが無難だと思います。

★ 最後に

自分で始めておきながら、okay のニュアンスの多様性には驚きます。あまりおもしろいので、後日、The West Wing でまた別種の okay に出会ったら、書き留めて、ここに持ってきます。

ところで、The West Wing は、
http://communicationsoffice.tripod.com/index1.html
に行けば、台本が手に入りますので、これで確かめながら、レンタルDVDで会話を追えば(しかも設定を変えて、英語の字幕が出るようにすれば)、自然な、しかも水準の高い英会話の実際を勉強できます。あと、各エピソードの内容を復習するには、
http://www.westwingepguide.com/
が便利です。

いずれにしろ、この The West Wing は、教育のある大人たちの会話に触れることができる、学習者にうってつけの英会話教材です。実際、新聞などでの論評を読んでも、そろって、使われている言葉の豊かさ、なかんずく、そういった言葉を連ねたときの響きにおいて秀逸だと手放しでほめています。例えば、St. Louis Post Despatch は、The words are music. と評し、また、The Detroit News and Fress Press の評者は、a sublime treat for the ears (この上なく心地よい響きを持っている)と形容しています。うるさ型がそろってほめているわけで、5年連続エミー賞を受賞というのもうなずけます。

内容のない学習用テープを100回聴くより、このシリーズを 10回観る方がためになります。是非お試しください。



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Comments

The West Wing の第一巻を観ました。が、DVDの英語字幕でも相当端折るぐらいセリフが多すぎるのと、米国の国内事情の知識が必要なので難しいですね。10回ぐらい観て勉強します。

[返信]

こんな便利なサイトを見つけました。

http://www.eigotown.com/eigocollege/westwing/westwing.shtml

でも、基本はやはりスクリプトを見てから聴くことでしょうか。

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