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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2006年6月24日

日銀総裁が言う「ど素人」を英語にすると

朝、テレビをつけたら、福井総裁が国会で何やら追及されている様子が映っていました。何だろうと観ていると、どこかの議員が村上ファンドに出資したときの契約内容はどうなっているんだと詰め寄っている場面です。どう答えるんだろうと思っていたら、「ど素人でございまして、恥ずかしいんですけど、(契約書を)本当に読んだ ことはないわけでございます」とモゴモゴ。思わず笑ってしまいました。

しかし、「どあほう」と同じノリの品のない言葉をこういった公の席で使っていいものでしょうか。偽装問題の時の証言で中継された土建屋のオヤジではなく、こともあろうに日銀総裁です。そんな方が公の場でこんな俗語を口にするというのは、私には考えられません。それはともかく、こちらはこちらで職業病というのか、すぐさま「ど素人」を英語で言うとしたら何なんだと考え始めてしまいました。

まず、ここで言っている「素人」、つまりその方面に不案内で、ものがよくわかっていない人は、amateur と言えます。この点、辞書で確認するとおもしろいことに、Collind COBUILD Advanced Learner's English Dictionary では、amateur の意味としては、趣味として何かをやる人、プロスポーツに対して、アマチュアとしてスポーツをやっている人といった意味しか載っておらず、あれっと思いました。というのは、この言葉には、こういったアマスポーツといった感覚で使われるときのアマチュアに加え、inexperienced(経験が不足している)とか unskillful (未熟だ、力量が足らない)というネガティブな意味あいで使われるアマチュアがあるからです。

実際、Longman Dictionary of Contemporary English は、語義の2として、「インフォーマル」だと断った上で、someone you think is not very skilled at something(何かをするのがあまり上手でない人を指して言う)とし、You English are a bunch of amateurs when it comes to romance.(君たちイギリス人と来たら、ことロマンスとなると、どこまでもぎごちないんだよな)という例文を挙げています。Oxford Advanced Learner"s Dictionary もやはり語義の2で、「通常、否定的評価を加える意味合いで」と断った上で、a person who is not skilled (何かに熟達していない人)とし、さらに、ここでも a bunch of amateurs という言い方を使って、This work was done by a bunch of amateurs.(これは素人集団の仕事だ)という例文を挙げています。

ちょっと気をつける必要があるのは、このように同じ amateur でも二つ意味があるのに対応して、形容詞形がそれぞれ違うことです。つまり、普通のノン・プロフェッショナルという意味の amateur を形容詞として使うときは、そのまま amateur であり、したがって、アマ・スポーツは、 amateur sports ですし、アマチュアの写真家は、amateur photographer です。ところが、「いかにも素人っぽい」というネガティブな意味合いで形容詞として使うときは、amateurish になります。したがって、絵画などのタッチがいかにも素人っぽい、幼稚なものであるときは、looks amateurish ですし、素人細工は amateurish work です。

ところで、「素人」が amateur だとして、「ど」素人は何と言うのでしょう。これは、a real amateur とも言えますが、rank を使った、a rank amateur という言い方のほうがぴったり対応する感じです。使い方としては、うしろに when it comes to something(こと何々に関しては)とか、in dealing with something (何々の扱いに関しては)が続きますので、今回の福井総裁のように、「契約に関してはど素人でして」と言いたいなら、以下のように言えます。

I'm a rank amateur when it comes to contracts.

ひとまずこれで完成です。ただ、実際は、英語では、一番言いたいこと、大事なことは最後に持って来るというしきたりがありますから、when it comes to contracts のような副詞句は前に出すのが普通です。それに、調子を調えるために、「そう申しあげても信じてくださらないかも知れないけれど」というほどの意味になる、 believe me を入れたくもなりますから、最終的にはこんな感じでしょうか。

When it comes to contracts, believe me, I'm a rank amateur.

という言い方をすると思います。

なお、この 「絶対的に」とか「完全に」ということを意味する、rank という形容詞はちょっと珍しい形容詞で、普通は、rank odor (ひどい悪臭)のように、もっぱら好ましくない性質を強調するために使われます。こんな感じです。

  rank bad management(劣悪な経営)

  rank bad behavior (とんでもない非行)

  rank disobedience(徹底した反抗、不服従)

  rank disloyalty (不忠儀の最たるもの)

  rank hypocrisy (偽善そのもの)

  rank stupidity (馬鹿げていることこの上ない)

ですから、rank amateur という言い方は、「間違いなくアマチュア」ということになり、その意味で、日本語の「ど素人」にぴったり対応するわけです。

ただ、この言い方は、第三者や自分を冷静かつ客観的に形容する場合に使う感じがあり、「このど素人めが、馬鹿やろう!」と思い切りののしる場合には不向きです。Rank amateur! では迫力不足と感じられます。普通は、Goddamned amateur! とか F•••ing amateur! とわめくのではないでしょうか。そうそう、bloody が大好きなイギリス人なら、Bloody amateur! が欠かせません。



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Comments

「ど素人」はlaymanかなぁと思いながら読み進んでいたので、形容詞rankを使ってrank amateurとするなんて面白かったです。さっそく、LODCEでもrankの欄を読みました。勉強になりました、ありがとうございます。

ちなみに、地元には「プロフェッショナル代行」という名前の代行タクシーがあり、その車を見るたびに「プロフェッショナルじゃないと困るじゃない」と、突っ込んでいます。

[返信]

あのCOBUILDでさえ手薄なところがあるというのも一つの発見でした。「プロフェッショナル代行」、何とか業の英語の直訳をまた日本語に戻したみたいな命名でおもしろいですね。

日向先生の時事・経済解説は本当に論旨が村上ファンドに続き、明快ですっきりしました。
この件も日本のマスコミが騒ぎすぎなのか、内規に触れていない以上取り立てていうべきことではないのか、とも考えました。実際にそういう外国メディアもありましたし。

企業を格付けするにあたり、利益等だけではなくCSRからも判断するものが増えてきていますが、公務員や国、教育機関などもそうあるべきだと思います。
世界中が自分たちだけよければいいということでは成り立たないということ、高いモラルが何事に置いても求められるということのいい例ですね。
(世界中に日本は不備だらけと印象づけてしまったから、いい例だなんて本当は悠長なことは言っていられないのですが。)

でも“キャスターが「1400万円以上の利益」というのは国民の常識なのか?”と声高に言っていたのは違和感を覚えました。「そんなことを言ったって、実はあなたたちの常識だってズレているのでは?」と思う私のやっかみに過ぎませんが。。。

(ワタクシ、カナダ人とLanguage Exchange(英⇔日)をやっています。この「ど素人」の記事、とても面白いので話題として扱ってみたいと思います。果たしてうまくいくか!?)

[返信]

また、お越しくださり、ありがとうございます。「ど素人発言」、きっとカナダの人はびっくりするでしょうね。議会の場で俗語を使った感じを出すためには、I'm a damned amateur. と言ったも同然と説明した方がわかってもらえるような気がします。

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