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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2006年7月31日

カンマから書き手の「つもり」を読み取る

カンマ、特に挿入する補足的語句(したがって削除しても全体の意味は変わらない従たる語句)をくくり出す一対のカンマには書き手の感覚が込められているものです。したがって、これから説明することがわかっていると、どういうつもりでカンマを打ったのかがわかりますし、逆に、知らないと、せっかくの書き手の気遣いないし意気込みを見落とすことになります。しかし、勉強中の人はどうしてもインプットの局面でこうしたカンマの知識を吸収しますから、アウトプットに際して具体化する問題つまり書き手の気持ち次第でどの語句をカンマでくくるかが変わって来るという問題にまで頭がまわりません。

きょうは、そういった書き手の気持ちをあらわすカンマをとりあげます。自分自身、カンマが使いやすくなりますし、リーディングに際しても、そのカンマを通じて相手が伝えようとしているニュアンスを的確につかむことができ、楽になります。

この種のカンマとして頭にあるのは、二つです。一つは、ORとセットで使うカンマで、もう一つは、非制限用法の説明文を入れるときのカンマで、いずれも文頭や文末にかかる関係で片方のカンマが「見えない」場合をのぞき、原則として二つワンセットで使います。

★ 選択肢をあらわすカンマ

まず二つの例文を見てください。

(a) Avocado, or aligator pear, is a great source of monounsaturated fat (a type of fat that is supposed to help raise levels of HDL, or "good"cholesterol). アリゲーター・ペアとも呼ばれるアボガドは、(HDLないし「善玉」コレステロールを増やすのに役立つとされる)不飽和脂肪酸をたくさん含んでいます。

(b) Several marks or symbols are used. いくつかの標章または記号が使われています。

文例 (a) は、アボガドの説明ですが、ここで アボガドの別名である alligator pear をくくり出している二対ワンセットのカンマは、書き手、「ちなみに alligator pearって別名もありましたっけ」という程度の気持ちで補足情報を入れたことを示しています。したがって、この部分は、or alligator pear の部分を削除して、Avocado is a great source of... と書いても何ら問題はありません。

これに対して、例文 (b) での or symbols はカンマでくくられていないことから、書き手は、symbols をmarksの言い換えでなく、同格の選択肢として扱っていることがわかります。ここで同格というのは、You can use either X or Y but not both.と同じで、XとYとは同格の選択肢であることから相互排他的であり、一方を選んだら他方はもう選べなくなるということです。

したがって、書き手自身、symbols を単なる marks の言い換えと扱うのであれば、書き方としては、

Several marks, or symbols, are used.

となります。この場合は、

  marks (ちなみに symbols と呼ぶこともありますね)…

という感じで扱われているということです。

しかし、何でも書き手の自由と言うものでもなく、例えば、文例 (a) の最後の所の、

  HDL, or "good" cholesetrol, ...

は HDLと good cholesterol が二者択一的なものでなく、同じものを指しているからこそカンマが使われているわけで、

  HDL or "good" cholesterol

というふうにカンマなしで or を入れるのはおかしいという理屈になります。

このあたりは、カンマの使い方として意外に見落とされている点で、詳しく知りたい方は、Barron's のA Pocket Guide To Correct Punctuation (3rd ed) をご覧ください。この本、133ページの薄い本ですが、理屈でパンクチュエーションを説明してくれる、他で得難い好著です。

要するに or とセットで組み込まれる語句をどう位置づけるかは書き手の胸三寸であり、それがカンマのセットで表されているのです。

★ 主従関係をあらわすカンマのセット

ここでも二つの例文を見てください。

(c) The new cellphone, which is about the size of a credit card, is available in three colors

(d) The new cellphone, which is available in three colors, is about the size of a credit card.

いずれも「新型携帯電話はクレジットカードの大きさ」ということと「新型携帯にはボディーカラーが三つ用意してある」という二つの情報を伝えようとするものですが、(c) が色の話を前面に出し、大きさの話は一歩背景にしりぞいた格好になっているのに対して、(d) では逆に大きさの話が前面に出ています。

文法用語で言えば、二つある情報のいずれを主節の内容とするかで(逆に言えば、どちらを従属節−−頭にwhich, when, ifなどの従属的接続詞が付いているので単体だと中途半端な感じがするセンテンス−−の内容とするかで)、書き手がどちらにウェイトを置いているが明らかにされているということです。

このように、二つの話をする場合に、どちらかを一歩後退させたいときに使うのが非制限用法の説明文をくくり出すカンマのセットです。

ここで注意を要するのは、飽くまで非制限用法の説明文についてだけ使えるテクニックだという点です。例えば、別の月に発売される他のモデルとの対比で「8月に発売されるモデルは2色だ」といった話をする場合、「8月に発売される」という説明文はどのモデルかを特定するため不可欠の情報であり、したがって、これは制限用法の説明文ということになりますから、ここでカンマを打つわけにいきません。

NOT The model, which will be released in August, comes in two colors.

BUT The model which will be released in August comes in two colors.

ということです。which will be released in August はどのモデルの話かをはっきりさせる制限用法の説明文だよといことを示すためにカンマを打たない、いや、打ってはいけないという理屈です。

ただ、そこでの話が専らそのモデルの話に終始しており、コンテクストから、「8月に出る」という説明文がただの補足情報でしかないことが、つまり、どのモデルかを特定するための情報ではないことがわかっている場合は、削除しても問題ありませんから、非制限用法の説明文ということで逆にカンマを必ず入れます。

カンマの基本的用法が今ひとつわかっておらず、自信のない方は、 「カンマの使い方:ひとまず用の足りる三つのパターン」をご覧ください。




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