2006年8月 1日
(1)何々人、何々国民の言い表し方:She's an American. と言えるのにShe's an English.とはいえない不思議(英語の落とし穴の15)
アメリカ人の女性を指して、
She's an American.と言うのだから、イギリス人女性を指して、
× She's an English.と言えそうなものですが、イギリスの人を指す言い方としての English は、形容詞形のみで、個々の国民を指す名詞形がありません(The English are...という形で使う方のEnglishという名詞は常に国民全体を指し、動詞も複数形となります)。そこで、
She's English.とは言えても、
× She's an English.というふうに単数形の名詞として(したがって不定冠詞を付けて)使うようなことができません。わからないものです。
同じことが、Britishについても言えます。つまり British という形容詞形はあっても、個々のイギリス人を指す名詞形としての British は存在しないのです(ここでも The British are...という形で使う名詞 British は、常に国民全体を指し、複数形の動詞で受けます)。ですから、BE動詞+形容詞ということで、
She's British.とは言えても、 BE動詞+名詞のつもりで、
× She's a British.と言ったら間違いになります。個々のイギリス人を指す単数名詞としての British というものが存在を認められていない以上、名詞に付けるためのツールである不定冠詞なぞ付けても意味がないのです。
このように、ある国の人を指す「何々人」に相当する言葉、その国に関係するものを表す形容詞、さらにはその国で使われる言語を指す言葉には、何かと予想を裏切る要素があります。例えば、アメリカの例で言えば、
He's an American.での American という名詞と
American foodでのAmerican という形容詞はまるで同じ形です。ところが、スェーデンの場合は、形容詞形と名詞形がちがっており、「彼はスェーデン人だ」と言いたいなら
He's Swedish.と言う一方、名詞を使った言い方のときは、
He's a Swede.になります。つまり、それが名詞であることを示す不定冠詞を付けて、
× He's a Swedish.といった言い方はすることはできないというか、もともとSwedishという個々のスェーデン人を指す名詞はないのです。
こうして見て来ると一つ言えるのは、the British, the English, the Swedishのように、形容詞出身の名詞で、•••SHという音で終わるものは、集合名詞として国民全体を総称できても、個々の国民を指す名詞としては、使えないということです。この点、同じように形容詞出身の名詞ながら、•••ANの音で終わる American, Brazilian, Mexicanは、an Americanというふうに個々の国民を意味する名詞として使えるわけで対照的です。
ややこしい話はまだあります。I'm American. とも言えるし、I'm an American とも言えるのだから、
I'm Japanese.という形で形容詞形を使っても、
I'm a Japanese.というふうに、名詞形を使ってもかまわないと言えそうです。ところが、専門家の中には、ABC of Common Grammatical Errors の編者 Nigel Turton のように、 Japanese につき、日本人全体を指すときに the Japanese という形でのみ使う言葉であり、不定冠詞を付けた単数形の a Japanese という形は普通使わないとする人もいるので迷います。実際、私自身は、語幹+ESE タイプの場合は、a Japanese, a Vietnamese とは言わず、代わりに、a Japanese gentleman, a Vietnamese lady と言うものだと教わりました。したがって、この立場からは、
△ I'm a Japanese.
は、基本的には間違いだということになります。詳しいことは、次回、日本国民の言い方を取りあげる項に譲ります。
きょうは、こうしたややこしい国名がらみの言葉 (nationality words) を整理してみようと思います。整理の方法としては、ちょっと技巧的になってしまいますが、一種のモデル文を使ってみます。
例えば、パリから帰って来るフライトで外国人と知り合いになったおかげで、その人が何々人であることや、その人の母国の料理や言葉のちょっと知ることになり、何々人はつきあいやすい、いい感じの人々だという印象を受けたという状況を想定してください。こういった状況を話題として取りあげるなら、こんな感じのモデル文を作れます。
On the flight back from Paris, I met someone from X1. Yes, an X2. I learned a few things about X3 food and their language, X4. The X5 are easy to get on with. (パリから帰って来るフライトで、X国の人と知り合いましてね。そう、X国人…X国の料理や言葉、つまり何々語のことを少々教わりました。X国の人々ってのは、興味が尽きませんよ)
ここでは、これを一つのモデルに、国名 [X1]を変えながら、(1)その国の個々の人を指すときの言い方 [X2]、(2)その国のものごとを指すときの形容詞 [X3]、(3)その国の言葉を指す言い方 [X4]、そして(4)その国の人々全体を指す言い方 [X5] を見ていきます。
★ 英語圏の国々
[アメリカ]
On the flight back from Paris, I met someone from the U.S. Yes, an American. I learned a few things about American food and their language, English. Americans are an interesting people.
⇒ 言語としての英語を指す Englishは、大文字のEで始めます。また、ここでの使い方のように言語を指すときは、冠詞はつけません。the English と言ったら間違いです。
⇒ その国の人々全体を指す American は、The Americans というふうに、定冠詞 the をつけることも可能です。Mexicans/the Mexicans, Brazilians/the Brazilians も同じで、どちらでもかまいません。この点、以下で見るとおり、末尾が •••sh, •••ss, •••ese, •••ch というふうに、最後が「シュ」や「チ」といった音で終わるときは、必ず the を入れます。Americans でもいいし、the Americans でもいいのだから、the を付ける付けないは自由なのだと覚えていると失敗します。
the British
the English
the Irish
the Spanish
the Swiss
the Japanese
the Chinese
the French
the Dutch
[イギリス]
On the flight back from Paris, I met someone from the U.K. Yes, a British gentleman. I learned a few things about British food and their language, English. The British are an interesting people.
⇒ 個々のイギリス人を指す言い方としては、a British man/woman 以外に、an Englishman/Englishwoman という言い方もありますが、何であれ、名詞形を使った、He is a British. や She is an English. はありえません。これは結構重要なポイントなので、しっかり頭に入れておく必要があります。
⇒ 細かいことを言えば、本来は、イギリス全体を指す言葉が British で、イギリスを構成する4つの地域のうちのイングランド地方を指す言葉が English ではあります。しかし、British と English は共にイギリス全体を指す言葉として使われ、例えば、Is there such thing as "Englishness."? (一体、「イギリス人らしさ」というべきものはあるのだろうか)という言い方では、明らかにイギリス全体を指しています。◆ そうは言っても、I'm English. と言う人に出会ったとした場合、その人は、十中八九イギリスの南東部出身の人です。スコットランドの人なら、I'm Scottish. と言い、ウェールズの人なら、I'm Welsh.と言うのが普通だからです。みなイギリス国籍であり、イギリスのパスポートを使うのに、なぜか強いこだわりが見受けられます。その反動なのでしょうが、「統一色」の強い、I'm British.という言い方は、特殊なコンテクストを感じさせます。 ◆ われわれはイギリスという言葉でひとくくりにしてしまいますが、イギリスは正式にはイングランド、スコットランド、ウェールズ、そして北アイルランドの四つの地域から成っており[注]、民族意識がからむので神経を使わねばならない場面があるということです。私の見るところ、イングランドの人々が the English are みたいなことを言うときは、当然のこととして、イギリス全体を念頭に入れている感じがあります。しかし、実は、こういった場合は、スコットランドやウェールズなどは実は眼中になく、「イギリスと言ったらイングランドに決まっているでしょ」という気持ちがあるような気がしてなりません。なお、こういう意識は発音など様々な場面で反映されるわけで、 favoriteさんのブログなどを読んでいると随所にイギリス人気質に触れている場面があり、そうそう、イギリス人ってそんな感じだよなと共感をおぼえます。
[注記: イギリスの正式な国名は、U.K. という略称に表れているとおり、the United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland であり、このうちの Great Britain が Scotland, England, Wales の三つの地域で構成されています。これにアイルランド共和国が大部分を占める対岸の島の北の端にある北アイルランドを足したものが「連合王国」ということです]
⇒ The British という言い方はイギリス国民を総称して言うときに使うもので、複数のイギリス人のグループを指すときにはつかえません。ですから、「ゆうべのパーティーで一緒だったイギリス人たちは欧州議会の議員だったよ」と言いたい場合、
The British people I met at the party last night were delegates to the EU parliament.
であり、
The British I met at the party last night were delegates to the EU parliament.
ではありません。この誤用例だと、「ゆうべのパーティーであったイギリス国民は」という響きになってしまいます。
⇒ イギリス人を指す言葉としての Brit(s) は特殊です。もともと、a British man/woman ないし the British に取って代わられており、あまり使われない単語 Briton の省略形ですが、どういうものか雑誌や新聞がイギリス人を取りあげるときの呼称としてやたらよく使われます。このようにもっぱら書き言葉の世界におけるイギリス人の通称という感じがあります。話し言葉としては、よその国の人々、特にアメリカ人がちょっとからかった感じで使うインフォーマルな響きのある表現です。そのためか、通信社のUPIのハンドブックでは、引用する発言に最初から入っているとき以外は使うなと言っています。いずれにしろ、われわれノンネイティブとしては使わない方が無難です。特にビジネス英語の世界では。
⇒ スコットランドの話になってしまいますが、われわれには Scotch terrier, Scotch egg だとか Scotch whisky (ご存じでした?スコットランドのウィスキーだけwhiskyで、あとはwhiskeyです)を通じて、形容詞としては Scotch のほうがなじみがあるのに、本人たちは、Scotchmenなどと呼ばれるのを好みません。形容詞としては Scottish universities というふうに使う Scottish が普通で、名詞は、Her husband is a Scot.というふうに使う Scotです(ただ、Her husband is Scots.というふうに使う形容詞としての Scots もあり、名詞には、a Scotsman's kilt に見られる Scotsman というのもあります)。
[カナダ]
On the flight back from Paris, I met someone from Canada. Yes, a Canadian. I learned a few things about Canadian food and their language, English. Canadians are an interesting people.
⇒ Americans 同様、カナダ国民全体を指して、「カナダ人は何々で知られる」といったことを言いたい場合、Canadians are known for... 、The Canadians are known for...のいずれも可能で、theを付けるか付けないかは任意です。
[オーストラリア]
On the flight back from Paris, I met someone from Australia. Yes, an Australian. I learned a few things about Australian food and their language, English. Australians are an interesting people.
⇒ ここでも Australian are... , The Australians are....のいずれも可能です。
⇒ 国民のことを指す Australian と形容詞 Australian に代えて、Aussie という言葉もよく聞きます。発音は、O'Zee 、O'See の両方とも聞きますが、自分の経験では前者が多い感じです。次の Kiwi もそうですが、まさか自分たちのことを指して言うことはないんだろうなと思っていたところ、ある日、Of course, I'm an Aussie. というのを耳にし、びっくりした覚えがあります。ただ、これはインフォーマルな言い方なので、正式の書類などでは使えません。
[ニュージーランド]
On the flight back from Paris, I met someone from New Zealand. Yes, a New Zealander. I learned a few things about New Zealand food and their language, English. New Zealanders are an interesting people.
⇒ Australiaの場合、国民が Australianで、形容詞も Australian ですが、New Zealand の場合は、国民が New Zealander だから、形容詞も New Zealander かと思いきや、 正解は New Zealand と、国名と同じ形に戻ります。しっかり覚えておかないと、いざというときにあわてさせられる、変化のパターンではないでしょうか。
⇒ New Zealand の人々を指す言葉としては、New Zealander 以外に、Kiwis という言葉があります。やはり Aussie 同様、インフォーマルな言い方ですが、Collins COBUILD は、This use could cause offence.、要するに、相手がカチンと来たり、腹を立てることがありうるので、うかつに使うなとしています。しかし、けっこう気楽に使われているという話も聞くので、個人的な興味としては、自分たちの方から Hi, we're Kiwis.などと言うのだろうか、外国人が自分たちのことを Kiwis と呼ぶことにどの程度の抵抗があるのだろうか気になります。New Zealand 在住の 「みなみ」さん、もしこれをご覧になったら、是非教えてください。
[つづく]
アジア、中近東、ヨーロッパ、中南米、アフリカなどは次回にまわします。
・
・
・
![]()
人気ブログランキングに参加しておりますので、よろしかったら、一票投じてくださいませんか?このリンクをクリックすると人気blogランキングに一票入ります
- [英語の落とし穴(ビギナー向け)]
- Comments (1)
- Trackbacks (0)
Trackbacks
Trackback URL:

Kiwiは、ニュージーランド人としてのアイデンティティを込めて、自分たちのことを指すのに使われています(卑下ではなく)。ただ、ほかの国の人から「You are a Kiwi」といわれたときにどう思うか、そのあたりはちょっと複雑かもしれません。
私が所有しているThe New Zealand Dictionary (New House Publishers)では、kiwiの説明の7番目に出てきます(説明は14番目まである。1番目は当然ながら、鳥のkiwi)。
その説明によると、「Often with initial capital, a New Zealander」となっています。例文として「He was a typical 'kiwi'. 」が挙げられています。
あと、Kiwi-born, Kiwi-fashion, Kiwi-styleといった使い方もします。
こちらは移民の国なので、英国からの人も多いですが、やはりおっしゃるとおり、4つの地域は明確に区別されています。出身を言うときはそれぞれの地域を教えてくれます。
毎年11月にオークランドでは、Highlander のお祭りが盛大に開催され、色とりどりの民族衣装を着た人たちがダンスやバグパイプの演奏、丸太かつぎ競争などを楽しみます。3月のSt. Patrick's dayには、あちこちで緑色のものをつけた人を見かけます。
[返信]
みなみさん、詳細な Kiwi レポート、ありがとうございます。イギリスからの人々が出身地を引きずっているのは意外で、ためになりました。なお、言われる当人たちの気持ちを知る機会があったら遠慮なくここに書き込んでください。