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日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク
 

2006年9月26日

固有名詞と定冠詞の関係(ビギナー向け)

そもそも定冠詞は、同種のことを表す名詞、例えば、その名詞が taxi なら、the taxi I took yesterday was...(きのう乗ったタクシーは)と、同種のものの中から特定のものを抜き出すためのツールです。つまり名詞が表しているXが話し手/書き手にとり、どういうものかを示すための小道具です。しかし、これは飽くまでも普通名詞の場合の話で、固有名詞の場合は、最初から定冠詞の有無が決まっており、話し手/書き手がどういうつもりで言っているのかに応じて変えるわけに行きません。

ですから、英語で三宅島という固有名詞を使おうという場合、例えば、「避難命令が解除されたら三宅島に戻ろうと思っています」と言いたいとして、

We plan to return to the Miyake Island once the evacuation order is lifted.

とするのは間違いで、

We plan to return to Miyake Island once the evacuation order is lifted.

というふうに冠詞ナシで言うのが正しい言い方です。

そうは言っても、オランダのヘーグみたいに最初から名前の一部に the が入っており、the Hague と言うに決まっているものもあり、固有名詞と定冠詞の関係をややこしくしています。そこで、きょうは、例外的に固有名詞に定冠詞がつくケースをご紹介します。

★ 国名の場合

国名の場合、原則として定冠詞はつけません。例外的に the がつく国は、理屈で説明できるものと、慣行で昔から the 入りで呼ばれているものがあります。

理屈で説明できるもの

以下の国名のように、名称の一部にstate, kingdom, emirate, republic といった普通名詞が含まれており、それがいわば土台となっているものは、the がつきます。
• the United States(おなじことでありながらも、America と言うときは、定冠詞はつきません)
• the United Kingdom
• the United Arab Emirates
• the People's Republic of China(ただ China と言うときは、定冠詞はつきません)

慣行で the がつくもの

• the Netherlands
• the Sudan
• the Philippines
• the Yemen
• the Argentine
• the Cameroons(定冠詞ナシで言うときは、ちょっとスペルが違い、Camerounです)
• the Ukraine
• the Ivory Coast

Roger Berry の Articles (Collins COBUILD English Guides 3)によると、これらは地名がそのまま国名になったケースで占められているそうです。長年、なぜだろうと思ったので、これを知ったときは、実にすっきりしました。なお、同書によると、傾向としては、the を落として使う人が多くなっていると言います。それでも、the Netherlands と the Philippines は「普及度」から考えて、ずっと定冠詞入りで使われるような気がしています。

ちなみに、うろおぼえではありますが、Netherlands は「低い土地」という意味で、Sudanは「黒い土地」。あと、Philippines は、昔、スペインが今のフィリピンを占領した時の Prince Philipから来ています。それと Cameroon は、ポルトガル語でエビを意味するcamaroes から来ているとか。何でもエビがたくさん取れる川に最初 Rio dos Camaroes と名付け、それが国名にまでなったようです。

★ 都市名、道路名、河川その他の水域、それと山の名称

次の名前を見てください、いずれも普通名詞(下線部)をその一部に含んでいますが、一方には定冠詞がつくのに、他方にはつきません。

the Twin Cities vs Salt Lake City
the Ventura Expressway vs Fifth Avenue
the Mississippi River vs Cripple Creek
the Atlantic Ocean vs Walden Pond
the Rocky Mountains vs Lookout Mountain

普通、こういったものは、ケースバイケースだから覚えるしかないと教わるものです。せいぜいが、島と湖と山に関しては、単数形なら冠詞なし(例 Miyake Island, Lake Biwa, Mount Fuji)で、複数形なら定冠詞アリ(例 the Hawaiian Islands, the Great Lakes, the Andes Mountains)という程度の使いわけを教える程度でしょう。しかし、この程度のルールでは、上の Ventura ExpresswayやMississippi Riverあるいは Atlantic Ocean になぜ定冠詞がつくのかを説明できません。

ところが、McGraw Hill から出ているHuckin と Olsen の共著 Technical Writing and Professional Communication for Nonnative Speakers of English (2nd ed) に「謎解き」が載っています。なかなかおもしろい上、説得力があるのでご紹介しましょう。

同書によると、上で紹介した固有名詞どうしのセットの場合、相対的に大きい方に定冠詞がつく傾向があるとしています。なるほど、そう言えばそうです。その理由ですが、同じ川、海、あるいは山でも、規模の大きいほど、多くの人にとって「ああ、あの川ね、あの山ね」と identifiable つまり、それと特定でき、このことから、「例の、あれだよ」という見地から定冠詞をつけるのだと説明をしています。Atlantic Ocean と Walden Pond とを比べた場合、Atlantic Ocean と聞いた人は、「ああ、あの大西洋ね」と一つしかない、あの大西洋を頭に思い浮かべるので、the Atlantic Ocean となり、他面、Walden Pond などというありふれた名前だと、単に Walden Pond と言われても、普通は、ぱっと「あれか」とわかる筋合いではないので、何もつけないのだというのです。

このあたりの理屈は、the Earth, the moon, the sun に定冠詞がつく理屈に似ています。この場合も、earth や moon は、誰にとっても、「月と言ったら、あの月に決まっているでしょう」という意味で identified されていると言え、だからこそ定冠詞 the がつく訳ですが、その理屈がここでも使われているということになります。

ただ覚えておけというのより、よほど気がきいてますし、調べる余裕がないときに、その場でどっちであるかを決めるのに役立ちます。

★ 人名につく定冠詞

人の名前は固有名詞ですから冠詞はつきませんが、例外的に冠詞をつけて使うケースがあります。一つは、定冠詞をつけて使うというもので、これは、

The Clintons are here.(クリントンさんのご一家がお見えです)

というふうに、「何々一家」を形容する場合です。

もう一つは不定冠詞をつけて使うケースです。例えば、自分の友人の一人が安倍晋三さんの親族だという場合なら、

A friend of mine is an Abe. Actually, he's the younger brother of Mr. Shinzo Abe.(友達に安倍一族がいるんだ。実は安倍晋三さんの弟さんなんだけどね)

という格好で使います。(おもしろいことに、こういった場合、「ええーっ、あの安倍晋三さんの…、新しく総理になった、あの人?」と確かめる感じで問い返すときは、"Really!? You mean THE Shinzo Abe, the new prime minister?というふうに、人名なのに the をつけたりします)

いずれにしろ不定冠詞+固有名詞は、その名詞がXだとすれば、「Xの一例」という感じを表すものであり、したがって、商品名やブランド名に関しても同じように使います。たとえば、友達がアルマーニ製品らしきものを着ているような場合、

Oh, is that an Armani?

と、不定冠詞をつけて使います。

実は、この不定冠詞をつけて固有名詞の一側面を切り出して論じるというのはけっこう見かけるもので、例えば、「右派の知識人の中には戦争をも辞さない日本というものを説いている」と言いたい場合は、

Some right-wing intellectuals are arguing for a Japan that can go to war.

となります。昔、耳にしたことのある「ノーと言える日本」も英語で言えば、A Japan that can say NO. となります。


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Comments

こんにちは。国名とtheの関係で困っていることがあります。

本記事にあるようにイギリスはthe United Kingdomやthe UKのようにtheを付けると学習して来ました。
しかし、色々な文章に出会っていくと、正式名称で書く際、United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland
のように前にtheを付けずに書かれていることがあります。外務省のイギリスのページでもtheが書かれていません。
これは、長ったらしくなるので、意図的にとってしまったものなのでしょうか?正式名称にもkingdomという名詞が含まれているのでtheがついても良さそうなものですが。
自分なら、The United Kingdom of Great Britain and Northern Irelandと書きたくなります。


教えてください。


返信


国連憲章ではtheが入っています。

http://www.un.org/en/documents/charter/chapter19.shtml

心配ならポツダム宣言等もご覧になったらいかがでしょう。

こんにちは。
いつも更新を楽しみにしています。

今回はビギナーの私が今ちょうど勉強しているところでして、identifiableという言葉を見たとき何か光が見えた気がしました。
単語を選ぶときの、このような「感覚」らしきものをわかりやすく言語化している辞書か書籍があれば是非ほしいです。

文法書はGrammar in Useと江川泰一郎の英文法解説を使っているのですが、可算、不可算、a、theの説明にin Useは140ほどあるUNITの内、10UNITも使っていますし、英文法解説には、「固有名詞と定冠詞の関係は複雑で、英米人とっても決して簡単なことではない。Long(Sentence,P.297なども"The use of the definite article with proper names is a matter of some complexity."と、その複雑さを認めている」と書いてあります。
ですので、これを使えるようになったらやっとこさビギナー卒業かなぁと思っています。それと、できればこれからもビギナー向けの記事をお願いします!

[返信]

固有名詞と冠詞はたしかに、本文程度にしか整理できないわけで、あとはそのまま覚えるしかない力仕事の世界だと思います。英語感覚を言語化している本としては、大西泰斗とポール・マクベイさんのシリーズをお勧めできます。学者の勝手な理屈ではなく、ごく普通の実際に使う英語がベースですので、安心できますし、何よりも、センスが身につくと思います。ビギナー向けの記事をというご希望にそうよう、頑張りますので、応援のほど、どうぞよろしくお願いします。

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